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睡眠博士のぐっすり眠りなサイエンス

 » 睡眠不足のリスク

睡眠不足が健康を損ねてしまうことは、今や誰もがご存じだと思います。しかし具体的には、どんな問題が起こりうるのでしょうか? 今回は、健康への影響だけではない、睡眠不足のリスクについてお話してみたいと思います。

解説者プロフィール
ぐっすり睡眠博士こと 金子 勝明
東洋羽毛工業株式会社 営業企画課所属
睡眠健康指導士、睡眠環境・寝具指導士の資格を持ち、商品開発、営業企画、睡眠の研究など幅広く手掛けるなんでも系社員!睡眠講座の要請を受け、講師として全国各地を飛び回り、自身睡眠不足になりながらも、日夜睡眠の大切さを訴える。

睡眠は、前半と後半で役割が変化する

最初に、睡眠中の私たちの体の中では、どんなことが起きているかをお話ししましょう。

睡眠は、前半と後半で役割が変化する日が暮れて暗くなってくると、脳内でメラトニンが分泌され、体に眠りの準備をさせます。そして入眠直後の3時間ほどの間に現れる深い眠り(ノンレム睡眠)の時には、成長ホルモンが分泌され、子供であれば文字通り成長に必要な骨や筋肉、内臓機能の発達を促します。大人も、成長ホルモンによって肌の調子が整ったり、疲労を回復したりします。

体の覚醒準備をするコルチゾールという物質が分泌睡眠の後半には、体の覚醒準備をするコルチゾールという物質が分泌されます。この物質は目覚める直前に多く分泌され、ストレスに対する準備もさせることから、十分な睡眠がとれているとストレスにも強くなると考えられます。

夜間にまとまった眠りが確保できると、眠りの前半と後半で作用の異なるホルモンが分泌され、健康を保つための多様な働きをしてくれるのです。

寝不足による注意力の低下は飲酒運転レベル!?

人には、生体リズムによる眠気のピークが1日に2回あります。深夜2時前後と午後2時前後です。スウェーデンでガス作業従事者を対象に、作業ミスの発生数を調査したところ、眠気のピークと重なるように、この2つの時間帯にミスが増える傾向が分かったのです。寝不足による注意力の低下は飲酒運転レベル!?また疲労が原因の交通事故も、深夜帯では午前2時頃、日中では午後2時頃に、発生件数が多くなっています。

一方、15時間起き続けた状態は「酒気帯び運転」と同等の注意力になり、18時間起き続けた状態では「酒酔い運転」ほどの状態にまで、注意力が低下すると言われています。

生体リズムによる眠気と、睡眠不足による注意力の低下や疲労が重なってしまったら、重大事故を引き起こしかねません。日々、適切な睡眠をとるだけでなく、勤務中などに疲労や眠気を感じた時の対処法を知っておくことも大切です。このコーナーでは、前回「仮眠や昼寝を効率よく取るコツ」についてお話ししていますので、ぜひ参考にしてみてください。

睡眠時間は長すぎてもリスクが高まる

睡眠不足は、生活習慣病などの危険を高めることも分かっています。まずは肥満です。32歳~59歳の約18,000人を対象にした調査では、睡眠時間が短くなればなるほど、肥満傾向が高いという結果が出ました。睡眠時間が減ると空腹ホルモンのグレリンが増加し、食欲が増してしまいます。睡眠不足はダイエットの大敵でもあるわけです。睡眠不足によって免疫系の機能が低下ほかには、睡眠不足によって免疫系の機能が低下すると、体内に侵入してきたウィルスや、がん細胞などを撃退する力が弱まり、病気になりやすくなると言われています。

睡眠はとりすぎても、疾患リスクが高まるケースがあります。冠動脈性心疾患や糖尿病は、7~8時間睡眠の場合がもっとも発症危険率が低くなり、それよりも睡眠時間が多い・少ない、どちらの場合も発症危険率が上がるのです。さらに長時間の睡眠は、死亡リスクも高くなる傾向にあり、「長時間睡眠者は健康状態が悪く、体活動度も低下しており、健康状態の悪化や体活動度の低下した者が長時間睡眠になり、その結果死亡リスクが上がる*」と考えられています。

*東北大学大学院「睡眠時間と全死因・死因別死亡リスク:大崎国保コホート研究」より

睡眠不足は精神面から経済面にまで影響

成長期の子供の場合、反抗的な言動や成績の低下につながる忘れてはいけないのが、メンタルへの影響です。寝不足によって、イライラしたり、活動意欲が低下したりした経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。成長期の子供の場合、反抗的な言動や成績の低下につながることもあります。また睡眠とうつ病は密接な関係があり、徹夜が原因でうつ病を発症したケースもあるそうです。

前述したように、睡眠不足は注意力の低下を招くことがあります。仕事中であれば、作業の遅れや判断ミスを起こす可能性は否定できません。

睡眠不足は精神面から経済面にまで影響日本大学医学部の内山真教授が、ある企業の社員3,000人を対象に調査を行いました。その結果、睡眠に問題がある場合の作業効率の低下がもたらす一人当たりの年間損失額が、男性25万5,600円、女性13万7,000円にも上ったのです。睡眠不足がこれほどの経済損失を生むとは驚きです。

身体面、精神面、そして経済面まで。睡眠が影響を及ぼす範囲はさまざまです。睡眠不足の改善は、自分で自覚することから始まります。まずはご自身の睡眠時間や日中の眠気をチェックして、睡眠が足りているか確認してみてください。