睡眠とは?

健康の三大要素と呼ばれているのは「食事」「運動」「睡眠」です。このうち食事と運動については改善を意識されることが多いもの。

しかし睡眠に関しては、深く考えたことがないという方も多いかもしれません。そもそも、睡眠はどうして必要なのでしょうか?睡眠の役割は、大きく分けて3つあります。

1つは「休息」。脳と身体を休める役目です。とくに脳は眠っている間しか休むことができないため、睡眠不足が続けば命にすら関わってきます。
2つめは「修復・回復」。ケガはもちろん、お肌、髪の毛、目や鼻の粘膜、内臓、そして脳。身体が受けたダメージは、じつは睡眠中に修復されています。
3つめは栄養や記憶を受けとめる「受け皿」としての役割です。日中に摂取した食べ物の栄養素、読んだ本の記憶、筋トレの成果など、良いものを自分の身体や頭に吸収・定着させるのも、じつは睡眠の役目なのです。

睡眠に関しては、多くの人が次のような悩みを抱えています。

「つい夜更かしをしてしまう」
「寝て起きても疲れがとれない」
「布団に入ってもなかなか寝付けない」
「年齢が上がるとともに眠りが浅くなってきた」
 ……など。

あなたにも心当たりがありませんか?
よく眠れていないのは、大人だけではありません。現代の日本では、子どもたちの多くが慢性的な睡眠不足を抱えています。夜遅くまで続くスケジュールや、明るすぎる街の様子は、大人のみならず子どもたちの睡眠にも深刻な影響を与えているのです。 大人の睡眠を改善していくことは、愛する子どもの心身にも大きく関わる課題です。

より良い眠りを得るためには、睡眠のメカニズムを意識していきましょう。
睡眠には【ノンレム睡眠(脳の深い眠り)】【レム睡眠(身体の深い眠り)】の2種類があり、人それぞれ違いがありますが約90分~120分のサイクルで交互に入れ替わっています。よく【ノンレム睡眠】が深い眠りで【レム睡眠】が浅い眠りと言われていますが、若干ニュアンスが違っています。一日の睡眠には、種類の違う2つの睡眠(ノンレム睡眠・レム睡眠)があります。深い眠り浅い眠りは【ノンレム睡眠】の中に共存しレベル1~4の段階があり、浅い眠りがレベル1で一番深い眠りがレベル4となります。

眠りにつくと、まずノンレム睡眠が現れます。時間が経つにつれ徐々に眠り深くなり、約60~70分でより深いレベル4の睡眠に到達します。そこからまた徐々に眠りが浅くなっていき、レム睡眠に。そしてほとんど覚醒状態に近いところまで浮上するのが、就寝してから約90分~120分後です。

ノンレム睡眠からレム睡眠までの1つの周期……この睡眠周期の繰り返しで睡眠は成り立っています。睡眠時間をご自分の睡眠周期(90分~120分)の4~5倍などに設定するとスッキリ目覚めやすいのは、このため。90分~120分ごとに訪れる浅い眠りを利用しているのですね。

ノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返すのは、どちらにも大事な役割があるためです。最新の脳科学では、【ノンレム睡眠】は主に脳を回復し、【レム睡眠】は脳身体を回復すると言われています。

眠りの「質」が悪いと、それぞれの役割を果たす能力が落ちてしまいます。そして眠りの「時間」が足りないと、役割の途中で目覚めることになってしまいます。つまり睡眠は「質と量」のどちらも確保することが大切です。

眠るという行為は身近すぎて、つい後回しにされてしまいがち。でも健康を考えるなら、「野菜をたくさん食べよう」「運動不足を解消しよう」というのと同じくらい、「質の良い睡眠をたくさんとろう」と意識することが不可欠なのです。

赤ちゃんの睡眠

生まれたばかりの赤ちゃんは、睡眠のリズムや仕組みが大人とは少し異なります。
赤ちゃんの睡眠をすこやかに保つために、周囲の大人はどんなことに気をつければ良いのでしょうか?
よく眠る赤ちゃんは脳も身体もすくすく成長します。赤ちゃんの眠りの質を向上させることは、子育てにおいて非常に大切なポイントの1つです。昔から「寝る子は育つ」と言いますが、睡眠の役割を考えればこれは事実なのですね。

とくに心がけたいのは、赤ちゃんは自分で睡眠の管理ができませんので、大人が赤ちゃんの睡眠を管理してあげることです。その中で一番大切なことは、「昼夜のメリハリを意識してあげる」こと。というのも、生まれたばかりの赤ちゃんの身体の中では、じつはまだ体内時計がうまく働いていないのです。体内時計とは、生きるのに必要な身体のリズムを調節する機能のこと。大人の身体にはおよそ25時間で一周する体内時計が備わっていて、このおかげで日中は活発に動き、夜はリラックスして休息する……というリズムが自然と実行できています。

ところが、生まれたばかりの赤ちゃんはこの体内時計の働きがまだ未熟です。個人差はありますが、一般的に体内時計が機能し始めるのは生後1ヶ月くらいから。3~4ヶ月くらいの時期から徐々に昼夜の区別がつき始め、睡眠のリズムが整うのは生後6ヶ月頃からと言われています。つまり生まれてから半年くらいは体内時計そのものの働きが不安定なため、自力で昼夜を区別して眠ることができません。また、その後も室内で過ごすことが多い赤ちゃんは、身体や脳が昼夜のメリハリをつけられるように大人が意識してあげる必要があるのです。

赤ちゃんに昼夜のメリハリをつけるためには、具体的にどうしていったら良いのでしょうか?

意識したいポイントは、「赤ちゃんの身体が勘違いしないようにする」ことです。たとえば、夜遅くに入浴させるのは避けた方が良いでしょう。眠る準備を始めた身体が再び目覚めてしまいます。入浴は夕方くらいまでに済ませて、夜7:00頃には寝かしつけることができれば理想的です。
また、お昼寝の際に部屋を暗くしてしまうのもあまりおすすめできません。赤ちゃんの身体が「今は夜なのかな?」と勘違いしてしまい、睡眠のリズムが狂いがちです。また夜泣きのときに部屋を明るくしすぎるのも、同じ理由からおすすめできません。お昼寝のときは自然な明るさで、逆に夜はできるだけ暗い環境で、赤ちゃんを寝かせてあげましょう。

ところで、赤ちゃんは一日のほとんどを眠りながら過ごしますよね。じつは赤ちゃんの眠りのうち多くの時間が【レム睡眠】にあてられていることをご存じでしょうか? 睡眠には脳が深く眠るためのノンレム睡眠と、身体が深く眠るためのレム睡眠があり、赤ちゃんの眠りの多くは「身体が深く眠る」ためのレム睡眠なのです。これは新生児の脳、とくに大脳がまだ発育途上にあることと関係しています。 大脳の発達はレム睡眠をとることで促されます。すやすやと眠っている赤ちゃんの頭の中では、驚くほどのスピードで大脳が成長しているのです。この大脳の成長が完成期を迎えると、徐々に「脳が深く眠る」ためのノンレム睡眠が増え始め、日中働いた脳を深く休ませることが可能になります。人の身体とは、本当によくできていますね。

【子供の望ましい睡眠時間】
3~11か月 14~15時間
1~3歳 12~14時間
3~5歳 11~13時間
小学生 10~11時間

※2005米国睡眠研学会の会報に掲載。
※睡眠とメンタルヘルス ―睡眠科学への理解を深める― (監修:上里一郎 |編:白川修一郎)

子どもの睡眠

体内時計が完成し生活リズムが整い始める成長期にも、睡眠はとても大切です。成長期の子どもにとっては「睡眠の適切な量と質を保つこと」が不可欠です。

子どもにとって睡眠が不可欠な理由は2つあります。どちらもとてもシンプルな理由で、1つは身体の成長のため、もう1つは脳の成長のためです。

身体の成長、つまり骨や筋肉の成長を促進する「成長ホルモン」は、大人も子どもも睡眠中に分泌されます。身体がほぼ出来上がっている大人と異なり、子どもの身体はこれから大きく変化していく途上にあります。とくに骨量がぐんぐん増えつつあるこの時期に成長ホルモンをたくさん分泌させてあげると、骨や筋肉が強く免疫力の高い肉体を形成する助けとなります。
成長ホルモンがとくにたくさん分泌されるのは、眠りについてから2~3時間後に訪れる「ノンレム睡眠レベル4」という、一日のうちで最も深い眠りの時間帯です。このタイミングで質の良い睡眠をとることができると、より多くの成長ホルモンが分泌され骨や筋肉の形成に役立ちます。

もう一つ、睡眠には脳の成長を促すという大切な役割があります。脳の中でもとくに「海馬」と呼ばれる部分は、記憶力ややる気に直結する非常に重要な部分ですが、この海馬の発達には成長期の睡眠が大きく関わってきます。成長期に質の良い睡眠を充分とることが、海馬の成長を促します。逆に睡眠不足やよく眠れない環境の中で成長期を過ごすと、生涯に渡り記憶力ややる気を減少させてしまう可能性があるのです。

睡眠不足の子どもたちが社会問題になっています。睡眠時間が足りない子どもには、どのような問題が現れてくるのでしょうか?

一つは、精神的な不安定感です。調査によると、睡眠不足の子どもはそうでない子どもに比べて「キレやすい」「無気力になりやすい」「学力が低下しやすい」という傾向が見られます。これは幼児~高校生まで幅広い年齢の子どもに共通して見られる傾向で、睡眠時間の確保は子どもの年齢に関わらず重要な課題であると言えます。
また富山大学の神川康子教授の調査によると、寝起きが悪い子どもほど「忘れ物が多い」「生活態度や言葉遣いで叱られる傾向が高い」という結果も明らかになっています。これは、睡眠不足による海馬への悪影響が表面化したものと言えそうです。

もう一つ、睡眠不足の子どもの多くが夜更かしして朝遅く起きる「遅寝遅起き」のリズムで生活しています。ここで問題になるのが「朝ごはんを食べられないこと」です。朝ごはんは、一日の活動を支える大切なエネルギー源です。ただでさえ寝不足でぐったりしているところに加え朝ごはんを抜いてしまうと、ますますエネルギー不足で元気が出ません。また、朝ごはんを摂ることで脳内にある体内時計(メイン時計)と各臓器(胃や肝臓など)皮膚、血管にある周期の異なる末梢時計(サブ時計)を一致させ生体リズムを整えます。このようにバラバラな周期で働いている体の各組織に対して、1日のスタート地点を決めて「よ~いドン」とスタートするような働きもありますので、勉強にも運動にも身が入らずボーッとしてしまうのは、ある意味当然とも言えます。

では、子どもの睡眠を守るためにはどうしたら良いのでしょうか?
具体的なポイントとしては「早起き→早寝のリズムをつくる」「親も一緒に早起き早寝にチャレンジする」「朝と夜の過ごし方に一工夫する」の3つです。

まず、夜更かしが習慣になっている子どもにいきなり早寝させようとしても、なかなか寝付けないことも多いでしょう。その場合は思いきって「早起き」をスタートにしてみてください。一度頑張って「えいっ」と早起きすることで、その夜は早めの時間に自然と眠くなります。そうして、早寝早起きならぬ「早起き早寝」のリズムを習慣化していきましょう。

このチャレンジは、親や周囲の大人の家族も一緒に行うことが基本です。子どもがいくら早寝しようとしても、大人が遅くまで起きて楽しそうにしていると、やはりなかなかうまくいきません。家族みんなで早起き早寝のリズムを習慣化すると、一緒にゆっくり朝ごはんを食べることもでき、明るいコミュニケーションを増やすことに繋がります。

さらに、朝と夜の過ごし方にそれぞれ一工夫してみましょう。朝はカーテンを開けて朝日を浴びスッキリと目を覚まし、きちんと朝ごはんを食べることで体内時計も覚醒させましょう。夜はできるだけ明るい光を浴びないように、テレビ・ゲーム・スマートフォンなどは早めの時間に切り上げます。
こうした工夫で、子どものみならず家族全員の睡眠を質・量ともに向上していくことができます。

受験生の睡眠

寸暇を惜しんで勉強する、受験生。一生懸命取り組むあまり眠ることをおろそかにしてしまいがちですが、じつはきちんと眠る習慣をつけた方が受験勉強はうまくいきます。
というのも、学習した内容を脳に定着させるためには眠る必要があるからです。勉強や読書で得た知識は、短い時間だけ覚えていられる「短期記憶」としていったん脳に保留されます。これはホワイトボードに文字が書かれている状態と似ているかもしれません。短期記憶は、放っておくと一日も経たないうちに脳から消去されてしまいますが、眠ることでこれを選別・整理し、必要なものだけピックアップして「長期記憶」に変えることができるのです。まるで、ホワイトボードに書かれた無数の図形や文字から必要なものをピックアップしてパソコンできれいに打ち直し、ハードディスクにきちんと分類・保管するようなイメージですね。
記憶の選別・整理・分類・保管といった作業は、睡眠中に行われます。勉強に熱中するあまり睡眠時間を削ってしまうと、せっかくの知識が学んだそばから消えていってしまうのです。一日頑張って勉強したら、夜はしっかりと眠りましょう。睡眠は受験勉強における「タスク(必要な課題)」の一つです。

睡眠不足が受験勉強に及ぼす悪影響は、記憶の効率が落ちることだけではありません。睡眠不足は集中力を散漫にし、さらに精神状態を不安定にさせてしまいます。

ペンシルベニア大学とワシントン大学で行われた実験があります。この実験では1日平均7~8時間睡眠をとっている男女を「二日間徹夜をするグループ」と「4・6・8時間睡眠をそれぞれ2週間続けるグループ」とに分け、同じ単純作業を行ってもらいました。それぞれの注意力を比較したところ、驚くべき結果が明らかに!……8時間睡眠を続けたグループは普段どおりの高いパフォーマンスを上げましたが、6時間以下の睡眠を続けたグループは、なんと二日間徹夜したグループと同程度にまで注意力が低下していたのです。

つまり、睡眠不足が2週間も続くと、蓄積された脳の疲労は二日間の徹夜と同じくらいになるということです。さらに恐ろしいのは、自分ではそれに気づかないこと。二日間も徹夜をしたら強烈な眠気や倦怠感を感じますが、6時間睡眠を続けていても「問題ない」と感じる人も多いでしょう。でも本当は、自分では気づかないうちに集中力ややる気がガクンと落ちているのです。

また日本国内の研究によれば、睡眠不足の子どもはそうでない子どもに比べ「イライラしやすい」「やる気が出にくい」などの傾向があることが判明しています。精神状態が不安定だと思うように勉強が進まずスケジュールが乱れがちになり、さらに焦りが募るでしょう。受験勉強に集中し、自分の持つ本来の能力を発揮するためには、睡眠時間の確保が必要です。

不足すれば勉強を妨げ、味方につければパフォーマンスを高めてくれる「睡眠」。受験勉強の効率を上げるためには、次の3つのポイントを押さえておきましょう。

(1)規則正しい生活をする……休日に寝溜めをしたり、試験前日に夜更かししたりすることで、体内時計が狂ってしまい睡眠のリズムが崩れます。質の良い睡眠を保つためには「毎日同じ時間に起床する」「一日三食きちんと食べる」といった規則正しい生活が大切です。

(2)集中とリラックスのメリハリをつける……肉体と精神の活動と休息をコントロールしている自律神経。自律神経のバランスが崩れると、朝だるくてなかなか起きられなかったり、夜に目が冴えて寝付けない、といったことが起こります。「朝はすっきりした頭で勉強に集中する」「日中は少し身体を動かす」「夜は寝る前に15分でもいいのでぼんやりする時間をつくる」といった工夫で、集中する時間とリラックスする時間のメリハリをつけてみてください。自律神経のバランスが整い、質の良い睡眠を得 られます。

(3)睡眠時間を削らない……前述のとおり、睡眠時間を無理に削ることはかえって勉強の妨げになります。「寝る間が惜しい」という考えから「きちんと寝れば効率が上がる」という考えに切り替えて、知識の定着と脳疲労の回復のためにしっかり眠るようにしましょう。

このポイントを試験直前にしようとしても直ぐにはできませんので、受験勉強を始める時に睡眠を中心とした計画を立てて、受験のプレッシャー―がかかってもしっかりと睡眠がとれるルーティンを習慣づけることが希望校合格への鍵になってきます。

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