今回は空手で鍛える、正しく美しい姿勢づくりです。すぐに実践でき、繰り返し稽古することで、体幹が鍛えられシェイプアップできるだけでなく、護身術にも役立つ内容です。空手は反復練習が大切ですので、ぜひ意識しなくても正しい姿勢を保てるようになるまで続けてみてください。押忍!
※ 周囲に障害物がなく、足元が安定した場所で行ってください。
空手は、中国武術である「唐手」が沖縄に伝わったものがもととなっていて、船越義珍先生がこれを「空手」として全国に広めていきました。日本発祥の空手は日本だけにとどまらず、現在は日本の素晴らしい伝統や文化が詰まった武道として世界各国でも愛され稽古され続けています。
空手は、型と組手と基本の3つを稽古し、人格形成に努めることを最大の目的としています。型は四方八方にいる相手を想定して技を出しますが、その順番はもう決まっていて、変わることはありません。なので、例えばフィギュアスケートのように新たなルーティーンを生み出すようなことはしません。私も5歳で空手を始めて、その時に習った型を20年以上稽古していますが、いつも新たな学びがあります。他の武道にはない、空手の最大の魅力が「型」であり、空手の深さがそこにあると私は思っています。
必ずみんなが白帯から始まる空手。そこから黄色や紫帯などの色帯を経て黒帯になっていきますが「生涯空手」という言葉があるように、年を重ねて稽古をするからこそ学べることがある。空手の本当のスタートは黒帯になってから。これから20年先の自分が何を学んでいるのかを考えるのも楽しいです。
2020年は、空手をご覧いただくいい機会になると思います。
ひとりで演武する型は、すごく迫力があってスピード感もあって、でも一瞬パッと止まる、“極る(きまる)”瞬間があります。その「静と動」を楽しんでほしいですね。型を知らなくても、その選手からにじみ出るバックグラウンド、これまでどう空手と向き合ってきたのか、そういったことも感じてほしいと思います。
組手は、1対1で相手と向き合うものなので、対戦相手との距離の取り方とか、どんな風に相手の間合いに入り込んで技を出しているのかが見どころです。空手の面白いところは、身長や体重、手足の長さに差があっても、背が高いから強い、小さいから弱いというわけでもないところです。組手試合は目が慣れていないと技が速すぎて、何がポイントで何がポイントじゃないかを見極めるのはすごく難しいと思いますが、見れば見るほど目が慣れてくるので、たくさん見てほしいですね。
空手は身体の基礎をつくれます。どんなスポーツをする前でも、まずは空手から始める、もしくは同時に始めることをおすすめしたいです。身体の左右をバランスよくどちらも使い、姿勢を整えながら身体の軸を見つけることができると、どんな身体の動かし方をしても、力まずに最大限の力を出せるようになります。
人は何か新しいことに取り組もうとする時、頑張ろうとして呼吸が浅くなり、無意識に力んで筋肉が固まってしまいますよね。こういう時、空手で、しっかり呼吸を利用しながら稽古していれば身体の力を抜くことを覚えられるんです。
また、空手には無酸素と有酸素、両方の運動があります。ずっと走り続けているわけでもなく、ずっと筋トレをしているわけでもなく。両方ともバランスよく含まれるので、型をひとつ行うだけでも、両方の効果が得られます。
空手はパワー勝負のイメージが強く、初心者の方は息を止めて力んで動いてしまうことが多いんです。でも先ほどお話したように、空手はいかに力まずに動けるかが重要。お腹は常に力を入れて凹ませているような状態をキープしますが、それ以外の肩や腕はリラックスしています。これが一番大切ですね。まずは姿勢を正し、呼吸を止めずに、ゆっくり動いてみてください。
ご紹介している「直突き」では、相手のみぞおちを突くようにと説明していますが、相手を想定して目標を明確に意識すると、毎回同じ動きができるようになっていきます。
空手は左右の手足の動きが違ったりするので、見た目よりも結構頭を使います。稽古中は日頃の悩みを考える余裕もなくなるほど集中できます。それと体幹を使わないとバランスが取れないので、シンプルな動きでも全身運動になって、ポカポカする感覚を覚えると思います。単純な技を繰り返して、その繰り返しの中で、今回は呼吸、次は足の裏、ラストは引き手、と意識する部分を変えていく。それだけでも体幹が鍛えられて、気持ちもスッキリできると思います。
空手の型は「受け」という、構えることから始まります。ですから続けることで、何をするにも何に対しても、常に準備をしている状態をつくれるようになります。これは私生活の中でも大事なことですよね。
出産後にとくに感じるようになりましたが、空手は“女性磨き”にもすごくいいものだなって。ひとつの技を出すにも姿勢を正して行うので、女性らしいボディラインをつくりますし、女性らしい芯の強さ、それは人にやさしくできる余裕をもつことだと思っていますが、そういったことも身につけられるんじゃないかなと思います。
27年間続けてきた私が考える空手の一番の魅力は、常に謙虚な気持ちでいられることです。謙虚というのは、何かを知ったつもりにならないでいるということ。「空手が分かったぞ!」と思っても、実はまだまだ先があって深い。人はいくつになっても成長する伸びしろがあって、それを学べるのが空手だと思います。空手がこんなに深いのに、他のこともそんなに簡単に分かるわけがない。結婚や子育て、人間関係、どんなシチュエーションでも、まだまだ学ぶことがあるなと謙虚でいたいですね。
1.姿勢づくりと呼吸法
(横隔膜のストレッチ、礼)
横隔膜のストレッチ
空手で大事なのは姿勢です。
姿勢を正すためのお腹のストレッチを行いましょう。
仰向けで行いますが、まずはやり方を説明します。
肋骨に手を置き体の中心まで手を動かしみぞおちを見つけ、そこから指2本分外に開きます。
4本の指で肋骨の下を持ち上げるように横隔膜を押さえ、息を5秒かけて吐きます。
吸う時は手を離し胸に息を吸い込みます。
これを仰向けの状態で行います。
では仰向けになって、ひざを立てます。
まずは5秒かけて息を吐きます。しっかり4本の指で横隔膜を押さえましょう。
手を離して、5秒かけて胸に息を吸い込みます。
これを3回繰り返しましょう。
★ポイントは、しっかり胸に空気を吸い込んで、お腹から息を吐くことです。胸で息を吸う意識を持ちましょう。
礼
次に大事なのが、礼の姿勢です。
空手は礼で始まり、礼で終わります。
礼をすることで相手に敬意を見せるとともに、自身の姿勢も整えられます。
基本姿勢
まずは基本姿勢です。
空手の型や組手を始める前は「自然体」といい、リラックスした状態でいることが重要ですが、より姿勢を意識するために、胸は骨盤よりも少し前に出た状態でキープし、重心は親指のつけねに置きましょう。
礼
基本姿勢から息を胸に吸い込み、さらにお腹の前を伸ばします。
「礼」と言ったら、股関節から上体を折り曲げ、息を吐きながら礼をし、3秒キープしたら、胸に息を吸い込み戻ります。
もう一度繰り返しましょう。
2.基本の技
(直突き、内受け、前蹴り)
直突き
空手の技「突き」の中から基本の「直突き」を行っていきましょう。
まずは引き手の稽古をしてから「直突き」を行います。
引き手の稽古
胸が骨盤より前に出た基本姿勢をキープし、しっかりお腹には力を入れておきます。
両腕を下した状態で手の平を外側にひねり、胸を開いて、肩甲骨を寄せ、そのまま両手をみぞおちの前まで上げます。
みぞおちの前に上げた両手を小指から握っていき、親指でふたをします。
手の甲は床に向いたまま、ゆっくり手を引きます。
肘から体をしっかりなぞるように、手首が腰に来るまで引きます。腰まで届かない人は、できる範囲で結構です。
手をみぞおちの前に戻し、10回繰り返します。
★ひじが横に開かないように、腕がしっかり体の横を通るように。
★重心はしっかり親指のつけねに乗せます。
★骨盤が前後に倒れないように意識しましょう。
同じ動作を、今度はかかとを上げて行いましょう。
手を引くときにかかとを上げて、出すときに下ろします。
10回繰り返します。
護身術POINT
腕のスピードを上げられる人は、引きの速さを上げてみましょう。
引き手を速くできるようになると護身術にも役立ちます。
例えば、誰かに手をつかまれた時に素早く逃げられます。
また、後ろにいる相手に対して素早く強くひじ打ちができるようになります。
直突きの稽古
足を腰幅に開いて立ちます。
肩甲骨は寄せたまま、片手をみぞおちの前に出して手首を返して手の甲を上に向けておきます。
反対側の手は、引き手の位置に構えたところからスタートします。腰に構えた手を前に出しながら手首だけを返して手の甲を上に向けます。
同時に、前に出ている手は、まっすぐ引きながら手の甲を床に向けます。
10回繰り返します。
次は、スピードを上げて行いましょう。
スピードを上げる時は、相手のみぞおちを突くように意識しましょう。
内受け
空手の型は、すべて「受け」から始まります。
「内受け」は、相手の攻撃に対して内側から外側に手首で弾いて受ける技です。
内受けの稽古
足を腰幅に開いて立ちます。
先ほど行った、直突きでとった引き手を反対の腰の位置に構えたところからスタートします。
腰に構えた手は肘を支点にして拳を肩の高さまで持って行きます。
同時に、前に出ている手は直突きの時と同じようにまっすぐ引きます。
左右違った動きをしていますが、しっかり同時にきまるように心がけましょう。
まずは正確に。ゆっくり交互に10回繰り返します。
続けて、スピードを上げて交互に10回繰り返します。
護身術POINT
ここの引き手と受け技が護身術に役立ちます。
例えば誰かに腕をつかまれる前に相手の手をはじけます。
またつかまれてしまっても、両手のクロスによって相手の手を剥がすイメージを持ってもいいでしょう。
★しっかり構えをとることで、相手の攻撃に負けない受けを出せて、肩周りも大きく動かせます。
前蹴り
空手の「蹴り」で大切なのは、ひざをコンパクトに抱え込み、ひざから足を上げていくことです。
まずは抱え込みの稽古をしてから「前蹴り」を行います。
抱え込みの稽古
胸が骨盤より前に出た基本姿勢をキープし、重心は親指のつけねに置きます。
片足を後ろで持ちます。
足首をつかんだまま、ひざを前に出して抱え込みます。
しっかりひざを上げたら、戻します。
お腹でバランスをとりながら足のストレッチをしているイメージでゆっくり動かしましょう。
10回繰り返します。
反対の足も10回繰り返します。
護身術POINT
ひざを伸ばしたまま足を上げると、相手との間合いを見つけにくく、また蹴りのスピードとパワーが出せないため、足をすくわれてしまいます。しっかり足をたたんでひざを抱え込み、相手の方向を見つけて、足を出す。戻す時もしっかり足をたたみ込むようにして戻します。
ひざから上げることで、蹴る方向を変えたり、蹴り方を変えたりすることも可能になります。
前蹴りの稽古
ひざの抱え込みと引き足の稽古ができたので、基本の前蹴りを行いましょう。
まっすぐひざを上げます。
上げたひざを伸ばし、足の指のつけねを相手に向けます。
戻して、下ろします。
交互に10回繰り返します。
スピードを上げて交互に10回繰り返しましょう。
★上半身は上に持ち上げたまま、蹴る時に上体が縮まないように。
★蹴った時の、足のスナップを意識しましょう。
最後に、
今回のメニューは、呼吸と合わせて姿勢を意識し、空手の技を反復することで体幹を鍛え、シェイプアップも期待できます。また、女性らしい身体のラインは、私生活の中でどれだけ姿勢を意識し続けることができるかが鍵です。意識が無意識になるまで、ぜひ美の稽古を楽しんでみてください。
押忍!
- 中町 美希レベッカさん プロフィール
- 父、兄の影響を受け、5歳から空手を始める。慶應義塾大学では、伝統ある日本最古の体育会空手部へ入部。空手の伝統や文化を学び、様々なトレーニングでのメンタルと体力の追い込まれ方も経験。卒業後はブライダル会社に入社。2012年には第一子を出産。その一ヶ月後に出場した内閣総理大臣杯・全国空手道選手権大会では念願の初優勝を達成。そこから続けて三連覇を成し遂げる。その後、ストレッチの師匠である兼子ただし氏との出会いが、「空手」と「姿勢」を繋ぎ、「適正姿勢指導士」の資格取得でさらに空手への理解を深め、2014年には船越義珍杯で空手世界一に輝く。翌年、日本ストレッチトレーナー学院をトップで卒業。2016年、横浜にて「美希RebeccaストレッチSTUDIO」をオープンし、パーソナルストレッチトレーナー・姿勢インストラクター・空手家として女性の美と健康をサポートしている。現在は日本空手協会「邦空館」渋谷道場にて空手の稽古に励みながら、二児の母をとしてもチャレンジを続けている。
HP: https://rebecca-studio.com/index.php
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また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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