午後の打ち合わせや授業は、ぼーっとして集中できない…そんな経験はありませんか? 実はお昼過ぎの時間帯は、誰でも眠気が起きやすいのです。そこで今回のお話は「仮眠(昼寝)」のススメです。しかし、あくまでも脳のリフレッシュが目的ですので、夜の睡眠をしっかりとることが大前提です。
解説者プロフィール
ぐっすり睡眠博士こと 金子 勝明
東洋羽毛工業株式会社 営業企画課所属
睡眠健康指導士、睡眠環境・寝具指導士の資格を持ち、商品開発、営業企画、睡眠の研究など幅広く手掛けるなんでも系社員!睡眠講座の要請を受け、講師として全国各地を飛び回り、自身睡眠不足になりながらも、日夜睡眠の大切さを訴える。
私たちには、睡眠と覚醒を1日周期で繰り返す概日リズムに加えて、半日周期で働く半概日リズムも備わっています。この2つのサイクルから、夜中の2時~4時頃と14時~16時頃の1日2回、睡眠の波が現れるのです。昼食後についウトウトしてしまうのは、この生体リズムによるもの。とはいえ仕事中であれば、思わぬミスやトラブルの原因になりかねませんから、午後の眠気のケアは重要です。そこで注目したいのが「仮眠(昼寝)」です。
NASAの研究によると、会話や読み書き、計算などの基礎となる「ワーキングメモリー」という認知機能が、仮眠によって向上することがわかっています。
一方、企画の立案といったクリエイティブな作業は、午前中に行うと良いと聞いたことはありませんか? これは起床から2時間ほど経過した頃が、もっとも脳が冴えているからです。昼寝をすることで、その状態を午後にも再現することができると言います。昼寝は、眠気の解消だけでなく、午後のパフォーマンスの向上にも有効な手段なのです。
仮眠や昼寝といっても、やみくもに寝てはいけません。ポイントは、熟睡しない程度の長さ、かつ夜の眠りに影響しない時間帯です。基本は「15時までに15分」と覚えておいてください。深いノンレム睡眠に入ると目覚めがスッキリせず、かえってパフォーマンスが落ちてしまいます。また仮眠が長すぎると、夜の寝つきが悪くなってしまうので気をつけましょう。
仮眠をする際は、横になると深く眠ってしまうことがあるので、座った姿勢で休むのがおすすめ。ネクタイやベルトなどは緩め、アイマスクで光を遮るのもコツです。
デスクワークの方は、机にうつぶせになったり、椅子の背もたれに寄りかかったりして休んでみてください。最近は、うつぶせ用枕などいろいろな仮眠グッズが発売されているので、活用するのもいいでしょう。自席で眠るのに抵抗がある方は、公園のベンチや昼寝ができるカフェなどを利用してみてはいかがでしょうか。
15分も時間が取れない、すぐに眠れそうにない、人目が気になる…といった方は、1分ほど目を閉じてリラックスしてみましょう。15分の仮眠ほどではありませんが、脳のリフレッシュが期待できます。これなら電車の中や、あるいはトイレの個室などでも、実践できそうではありませんか? ですが可能なら3分間、視覚情報をシャットアウトして、全身の力を抜いて、深く呼吸してみてください。睡眠中と同様に脳にアルファ波が現れたリラックス状態に近づくそうです。
脳は熱を発しやすい器官で、日中の忙しい時には100ワットの白熱電球と同じくらいの熱を出すと言われています。休まず使い続けたら、オーバーヒートしてしまうことは、容易に想像がつきますね。睡眠は脳の疲れを回復するためのものです。多忙な時ほど、仮眠で脳をクールダウンしましょう。
眠気覚ましにコーヒーや紅茶を飲むなら、タイミングは“仮眠前”がおすすめです。カフェインの効果が表れるのは、吸収後30分ほど経ってからなので、仮眠の少し前に飲むとカフェインの覚醒作用と目覚めが重なり効果的です。
ここでひとつ注意です。カフェインの効果は4~5時間続くので、10時頃に摂取すると、昼過ぎまで作用が続いて仮眠しにくい状態になってしまうことがあります。疲れや睡眠不足を感じている日は、コーヒーを飲むのは朝だけにして、昼寝に備えるのもコツです。
一方、目覚めた後は、軽いストレッチやツボ押し、歯磨きなどをすると、交感神経が刺激され活動モードに切り替えやすくなります。
ぐっすり.com「美活お役立ち動画」のコーナーでは、簡単なストレッチやツボ押しなどをご紹介していますので、ぜひ参考になさってみてください。
仮眠は、習慣化することで次第に楽に眠れるようになると言います。毎日の生活サイクルに取り入れて、午後の活動もシャキッと頑張りましょう。
【手軽にできるストレッチやツボ押しを動画でチェック!】
・女性必見!お悩み解消333ツボマッサージ
・デスクで一息!仕事の合間の疲れすっきり術!
・腰痛対策に!どこでも簡単、ツボ押し&ストレッチ
[参考文献]
・岩田 誠『上手な脳の使い方』岩波書店、2016
・守田優子『睡眠大辞典』ベースボール・マガジン社、2016
・西多昌規『寝不足でも結果を出す全技法』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016/『パワーナップの大効果!脳と体の疲れをとる仮眠術』青春出版社、2014
・林田健一『朝、スッキリ目覚め「いい眠りだったな」とつい言ってしまう本』主婦の友社、2014
・坪田 聡『脳も体も冴えわたる 1分間仮眠法』すばる舎、2012/『病気にならない睡眠コーチング』青春出版社、2008
・高田明和『4時間快眠法』かんき出版、2010
・ブルーニ・コンビ『仕事も勉強もはかどる15分昼寝術』藤田真利子訳、草思社、2004
- 第 1 回 「よく眠れる食べ物と寝つきにくくなる食べ物」
- 第 2 回 「寝つきの悪さの原因と対策」
- 第 3 回 「睡眠不足が脳と体の成長に与える影響について」
- 第 4 回 「睡眠とうつ病の関係性とその対策について」
- 第 5 回 「睡眠で分かるカラダ不調のサイン」
- 第 6 回 「短期的な睡眠不足を乗り切る裏ワザ」
- 第 7 回 「欧米と日本の睡眠習慣の違い」
- 第 8 回 「シーズン別 カラダの疲れをとる睡眠のひと工夫」
- 第 9 回 「寝つきと寝起きのひと工夫」
- 第 10 回 「いびきが起きる原因と解消法」
- 第 11 回 「寝坊の原因と解消法」
- 第 12 回 「赤ちゃんやお子さんのより良い睡眠のために」
- 第 13 回 「ショートスリーパーとロングスリーパーのメカニズム」
- 第 14 回 「目覚めに体がイタイのはこんな理由かも?」
- 第 15 回 「良い目覚めと悪い目覚めの違い」
- 第 16 回 「仮眠や昼寝を効率よく取るコツ」
- 第 17 回 「睡眠不足のリスク」
- 第 18 回 「睡眠障害とは?」
- 第 19 回 「健康習慣をおさらいしよう!」