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ぐっすり
眠りなサイエンス

睡眠博士ねねNene

vol. 16睡眠障害とは?

今回はずばり、「睡眠障害」をフィーチャーする特別編をお送りします。 「睡眠障害=不眠」と思われがちですが、他にも昼夜を問わず寝てしまう「過眠」や、睡眠中に思わぬ行動をとってしまう障害など、実にさまざま。そこで代表的なものを取り上げて解説します。

睡眠障害の診断基準が大きく変化

これまで日本では、睡眠障害を「不眠症」「過眠症」「概日リズム障害」「睡眠時随伴症」の4種類に大別していました。しかし日本睡眠学会は2018年から、新たな診断基準に準じることを推奨しています。その基準とは、アメリカ睡眠医学会が2014年に発表した睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)で、下記の6つに分けられています。

この基準では、従来「不眠症」と呼ばれていた病名は「不眠障害」に改められました。また、不眠障害のほかは、名前の最後に「群」とついている通り、いずれも複数の症状が含まれています。下の段で、それぞれの症状や原因について解説していきましょう。

❚ 不眠障害
❚ 睡眠関連呼吸障害群
❚ 中枢性過眠症候群
❚ 概日リズム睡眠・覚醒障害群
❚ 睡眠時随伴症群
❚ 睡眠関連運動障害群


不眠障害

睡眠障害は88種類。不眠だけでも4種類不眠障害のおもな症状は、入眠困難中途覚醒早朝覚醒などで、症状が3か月以上持続する慢性不眠障害と、3か月未満の短期不眠障害に分類されます。原因には素因と憎悪因子の2つがあります。素因とは、性格やストレスに対する弱さ、加齢、性差といった、その人がもともと持っている素質。憎悪因子とは、これまでも不眠の原因として考えられてきた、下記の5項目が挙げられます。

  • 高血圧、アレルギー性疾患、心臓疾患、泌尿器疾患など睡眠を障害する身体的障害
  • 日常の活動や生活スケジュールの変動
  • 心理的な問題やストレスあるいは不安
  • うつ病や不安障害、アルコールや薬物の乱用、認知症などの精神的障害
  • さまざまな薬物

  • また、不眠がストレスとなりさらに眠れなくなることで、不眠障害が長引き、慢性不眠障害に至るケースもあります。慢性化する前の3か月以内に適切な治療を受けることが、症状改善の重要なポイントです。眠りに変化を感じたら、ためらわずに医師に相談しましょう。



    睡眠関連呼吸障害群

    睡眠関連呼吸障害群には10以上の障害が含まれますが、ここでは代表的なものを紹介しましょう。

  • 閉塞性睡眠時無呼吸障害群
  • 一般的には睡眠時無呼吸症候群の呼び名で知られています。睡眠中に気道の上部が閉じることで呼吸が停止し、血液中の酸素濃度の低下が反復して起こり、睡眠が妨害される障害です。そのため、日中の過度の眠気や不眠が引き起こされるとともに、大きないびきをかくことも特徴です。おもな原因は、舌根の落ち込みなどによって、空気の通り道である気道が塞がってしまうことが挙げられます。

  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群
  • 上記の閉塞性睡眠時無呼吸障害群が物理的要因で呼吸が止まるのに対して、呼吸を司る呼吸中枢が睡眠中に働かなくなることで、無呼吸になってしまうのが中枢性睡眠時無呼吸症候群。こちらも呼吸の停止により、血液中の酸素濃度の低下が繰り返し引き起こされます。
    軽度なものを含めると高齢者の約25%に症状がみられるという報告もあり、最近の知見ではアルツハイマー型認知症、血管性認知症の発症リスクが高くなることが報告されています。



    中枢性過眠症候群

    過眠症の中から3つを取り上げましょう。中でもナルコレプシーは、夜間に十分睡眠を取っているにもかかわらず、日中強い眠気に襲われます。我慢できないほどの眠気は、重大事故の原因にもなることから、当てはまる症状がある方は、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

  • ナルコレプシー
  • 4つの特徴的な症状があります。まずは、日中の過度の眠気や、ほぼ毎日、日中に居眠りを繰り返す睡眠発作。2つ目は、強い感情の変化に伴って突然全身の力が抜けてしまう情動脱力発作。3つ目は睡眠麻痺、いわゆる金縛りです。そして4つ目は入眠時幻覚。眠りに入ってすぐに、霊が身近に立っているような実在感を感じるなど、生々しい幻覚を見ることが知られています。

  • 突発性過眠症
  • ナルコレプシーより眠気は弱いものの、一旦眠り込むと長い時間(多くは1時間以上)目覚めないという特徴があります。

  • 睡眠不足症候群
  • 睡眠不足が続くと生じるとされています。正常な判断ができず仕事中にミスをしたり、居眠りをしたり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。



    概日リズム睡眠・覚醒障害群

    このコーナーで度々話題に上っている「体内時計」。私たちの体に備わっている生体リズムで、睡眠と覚醒のリズムの調整、自律神経を整える、血圧や体温の調整、ホルモンの分泌周期の調節など、さまざまな役割を担っています。この生体リズムと生活リズムをうまく合わせられずに起こるのが、概日リズム睡眠・覚醒障害群です。

  • 交代勤務障害
  • 名前の通り、交代勤務による不規則な生活リズムよって就寝時刻が乱れ、不眠や過剰な眠気が起きます。

  • 時差障害
  • 時差がある海外への渡航によって現地時間と体内時計に差異が生じ、不眠や過剰な眠気が起きます。

  • 睡眠・覚醒相後退障害睡眠・覚醒相前進障害
  • 睡眠・覚醒相後退障害が、生活が夜型になり睡眠が遅い時間帯にずれるのに対して、生活が朝型になり睡眠が早い時間帯にずれるのが睡眠・覚醒相前進障害

  • 非24時間睡眠・覚醒リズム障害
  • 一定の時刻に入眠し起床することが困難で、寝つく時刻が毎日30~60分ずつ遅れていく障害。


    このほかに、認知症の高齢者などにみられる、睡眠と覚醒が1日の中で不規則に出現する不規則睡眠・覚醒リズム障害、内科疾患や薬剤・作用物質に起因する特定不能な概日睡眠・覚醒障害もあります。
    どれも、本来は起きていなければならない時間帯に起きられず、睡眠にあてるべき時間帯に目が覚めてしまうことから、体調不良に加えて社会生活に支障をきたすことがあります。



    睡眠時随伴症群

    睡眠中に異常な行動や現象が起き、ノンレム睡眠レム睡眠、どちらにも生じます。代表例を紹介しましょう。

  • ノンレム睡眠関連睡眠時随伴症
  • 一般に夢遊病と呼ばれる睡眠時遊行症や、眠りながら泣き叫ぶ睡眠時驚愕症は、どちらもおもに子どもが発症する障害。成長とともに解消されていくケースが多い点も特徴です。

  • レム睡眠関連睡眠時随伴症
  • レム睡眠行動障害は、50歳以上の中高年に多くみられます。悪夢や不安な夢を見て、眠っているにもかかわらず暴力的な行動をとることが知られています。



    睡眠関連運動障害群

    睡眠中に、単純かつ同じ動きが生じることで眠りを妨げてしまう障害です。下記の2つが代表的ですが、繰り返す歯ぎしりやこむら返りも、ここに分類されます。

  • むずむず脚症候群
  • おもに足の深部に、むずむずする、虫が這うような感じがする、ひりひりするなど、なんとも言えない不快感が現れるのが特徴。夕方以降に生じることから、寝付けなくなり不眠を訴えるケースが多くみられます。

  • 周期性四肢運動障害
  • 眠っている最中に足がぴくっと動いて目覚めた経験はありませんか? 周期性四肢運動障害は、このような運動が手足に周期的に起き、中途覚醒や起床時の爽快感が失われてしまう障害です。


    睡眠障害は残念ながら原因がはっきりと解明されていないものも多く、それだけ睡眠は複雑な未知の領域と言えそうです。不眠まではいかなくても眠りに満足できていない方は、まずは生活リズムを整えて、なるべく決まった時刻に起きることから始めてみましょう。