工場見学ツアー
羽毛職人翼Tsubasa
vol. 1「羽毛の精製」ってなんだろう?
今回から3回にわたって、工場の見どころやスゴ技をご案内したいと思います。羽毛ふとんの製造工程は、大きく「精製」「縫製」「仕上げ」の三段階に分けられます。まずは羽毛の品質を大きく左右する「精製」に注目してみましょう。
精製の白河工場、リフォームの相模原工場
東洋羽毛には、福島県白河と神奈川県相模原の2か所に工場があります。基本的には、どちらの工場も同じ作業が行われているのですが、それぞれの工場にしかない工程もあります。白河工場の「精製」と、相模原工場の「リフレッシュ」(リフォーム)です。
精製とは、羽毛原料(原料の羽毛)を洗浄して羽毛本来の保温性を引き出す、羽毛ふとん作りにおいて非常に重要な工程です。しかし、国内で精製を行っている寝具メーカーは数えるほどしかなく、中でも東洋羽毛は、10段階にもわたって微細な不純物まで取り除いています。精製は単に羽毛を洗う作業ではありません。輸送時に縮まってしまったダウンを解し、不純物を除去しやすい状態にし、衛生的で保温性を発揮できるようにすることが、一番の目的です。
羽毛原料が高品質だから、精製で保温性が際立つ!
精製の流れを簡単に追ってみましょう。5段階にも及ぶ前処理によって、小石や鉄粉、破損した不良羽毛といった不純物が取り除かれ、ようやく洗浄に入ります。洗浄後も、さらに乾燥・殺菌や除塵を行うことで、東洋羽毛のおふとんに相応しい、ふんわりとした暖かな羽毛に仕上がります。しかしポイントは、羽毛原料自体が高品質であって初めて、その力が引き出され、精製が意味を持つということです。
10段階で徹底的に不純物を排除!
①開梱:輸入した羽毛原料をほぐし、不純物を除去
②分離:羽毛原料をダウンとフェザー、不純物に分離
③粗大除塵:不純物の除去
④細目除塵:不純物の除去
⑤サイクロン:風力と磁力で不純物を除去
⑥洗浄:独自開発した洗剤でじっくり洗浄(羽毛へのデオホワイル加工実施)
※デオホワイル加工:清潔さと消臭機能を持たせた加工
⑦乾燥殺菌:熱風を当てて乾燥・殺菌
⑧冷却除塵:ゆっくり乾燥時の熱を取りながら不純物を除去
⑨サイクロン:風力と磁力で不純物を除去
⑩調整:風力で吹き上げて羽毛を開かせる
「羽毛ふとんのできるまで」では、より詳しく精製工程をご紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。
巨大分離機は、驚きの素材でできている!
精製工程の見どころは、何と言っても「機械」です!特に注目してほしいポイントをご紹介しましょう。
見どころ1 大きさが桁違い!
前述した10段階工程の②に登場する分離機。ドイツのL.H.LORCH社と共同開発した特注品で、その大きさは、なんと4×9×8m!家一軒分はあろうかというド迫力のスケールです。
見学にいらした際は、ぜひ前に立って一緒に写真を撮ってみてください。その大きさを実感できますよ!
見どころ2 機械なのに木製!?
分離機は全体が茶色いのですが、実はこの部分は「木」でできています。木製の機械なんて、いつの時代の代物かとお思いでしょう。ですがこれは、羽毛が飛ぶことで発生する静電気を抑えるための、“選ばれし素材”なんです。
他にも、③④の除塵、⑧の冷却、⑩の調整の機械にも木材が使われています。
洗浄に必要な水は、25mプール1.5杯分!?
大量の羽毛を洗うには、大量の水が必要です。そこで白河工場では、きれいな地下水を使用して羽毛を洗浄します。洗浄作業で使用する1日の水量は、およそ25mプールの1.5杯分!
羽毛が壊れないように細心の注意を払いながら、羽毛に付着した油や汚れを落としていきます。一見すると十分にきれいな羽毛も、独自開発した洗剤で洗うと、無色透明だった水が茶色く濁るほどに。白河工場では、自社の排水処理場で処理します。白河工場は阿武隈川の上流に位置するため、かなり厳しく浄水しています。洗浄作業はきれいな水があってこそ。環境への配慮も欠かせません。
羽毛は非常にデリケートな素材ですから、精製工程はどれも繊細な作業が求められます。機械は巨大でダイナミックでも、その中で行われている作業は、やさしく丁寧で細やか。高品質の羽毛を作り上げる「精製」は、おふとんの「質」にこだわり続ける東洋羽毛にとって、無くてはならない工程なのです。