なぜジメジメとしたこの季節になるとダニが増えるのでしょうか?
ダニが最も好きな温度は20~30℃で、ダニの種類にもよりますが、35℃くらいまでが繁殖しやすい温度です。それ以上になると繁殖率が落ちてきます。
ダニが最も好む湿度は60%以上。だから梅雨でジメジメし、また室内を閉め切ることが多くなるこの時期はダニが繁殖しやすくなるのです。
住宅に最も多いのはチリダニで、フケがえさとなります。そのため寝具の枕もと周辺に最もダニが集まることが多いのです。
ダニは背光性で、暗いところが好きです。ですからじゅうたんや布団の表面より、中のほうにひそんでいます。
以上の4つの条件がそろった場所には、間違いなくダニがいると思ったほうがよさそうです。家の中で最もダニが多い場所は布団やじゅうたんなどの布製品の中です。
一番効果的な方法は湿度調整です。
室内のすべてのダニは湿度50%以下になると脱水を起こして死んでしまいます。
ですから湿度を調節しやすい冬場(11~3月)にいつもそのくらいの湿度に保てば、ダニは繁殖できません。
住宅に最も多いチリダニは、卵から幼虫になるのに1カ月かかります。そして成虫になると卵を産みます。繁殖条件の揃う梅雨から夏にかけてはどうしてもダニの数は増えてしまいますが、冬はみなさん暖房を使うので、空気が乾燥してダニは死んでしまいます。 だからもともと数が少なくなった冬場にしっかりとダニ対策をしておけば、梅雨から夏の繁殖条件が整う時期であっても、もともとの数が少ないからそれほどダニは増えない、というわけです。
冬は暖房やホットカーペット、床暖房などを上手に使えばダニは増えません。最も繁殖する6~8月は除湿機で室内の湿気をとったり、エアコンのドライをうまく使って湿度が高くならないようにしましょう。
できれば専門メーカーの作った湿度計をひとつ用意しておくいいですね。というのも、温度と違って湿度は皮膚感覚ではわかりづらいからです。また湿度計はインテリア要素の強いものには30~40%も誤差があるものも。ぜひ正確なものを用意しましょう。
家の中でもっともチリダニが繁殖しやすいのはベッドや布団の頭の周辺です。繁殖条件のえさともぐれる場所があるからです。
畳やフローリングの上に直接布団を敷くと、寝ているときにたくさんかいた汗を布団が全部吸ってしまいます。それをそのままにしておくと、あっという間にダニが繁殖します。畳やフローリングに布団を敷くときは、布団の下にすのこなどを敷き通気性をよくしましょう。とはいえ、敷きっぱなしは禁物です。ベッドの場合は汗を吸い取ってくれるベッドパッドのようなものを必ず敷くようにします。
起きてすぐに布団をたたんだり、ベッドメイキングをしてさらに上にバッドカバーをするのはもってのほか。湿気がこもり、ダニの格好の繁殖場所になります。朝起きたら、掛け布団は足元のほうに寄せ、枕元周辺の湿気を飛ばすようにします。
ダニは卵からかえるのに約1週間かかります。そしてすぐにフンをします。だから最低、1週間に1回マクラカバーやシーツを洗濯すれば、理論的にはフンはゼロになります。ダニ自体は洗濯機で洗っても死なないのですが、水で流れ落ちますし、フンは水溶性で水に溶けます。
洗濯すればダニは除去できますが、しょっちゅう洗濯できない場合は、枕の周辺を重点的に掃除機をかけましょう。ベッドの場合はベッドエッジにダニが一番多いので、そこを重点的に。
寝具の種類でいうと、中に一番ダニが多いのが綿布団で、最もダニが少ないのが羽毛布団と羊毛布団です。ダニの数を調べたところ、羽毛布団にはほとんどダニはいませんでした。羽毛布団は昔は羽根の洗いが不十分だったのでダニもいたかもしれませんが、
現在は技術も進歩ししっかり洗ってあるのでそんなことはありません。
また羊毛は羽毛のように何本にも分かれておらず、1本ずつ生えている単純な構造なので、洗うとダニも落ちやすいという特性があります。側生地も羽毛布団、羊毛布団ともに目が細かく、ダニが外から入りにくい素材です。
25~28℃くらいまでが繁殖に最も適した温度で、45℃以上になると死滅します。
65%以上で繁殖します。60%以下だとカビは繁殖しません。
カビは脂分を栄養にしています。手あかなどは大好きです。壁紙にカビが生えるのは、手あかと壁紙に使った糊が原因です。
カビの菌糸や胞子が生きていくには、酸素が不可欠です。空気中には目に見えないカビの胞子が浮遊しています。
カビの発生源は土壌で、空気中に浮遊しています。それが窓などから室内に侵入し、壁などにくっつきます。そこで繁殖に最適な温度があれば菌糸を伸ばして繁殖していきます。カビの胞子は目には見えないほど小さく、それが菌糸を伸ばして繁殖していきます。黒カビや赤カビのように、目にみえるときには、すごい数になっていると思ったほうがいいでしょう。
壁などにカビが生えたときは、空気中にもかなりの数のカビがいると考えられます。カビの胞子はアレルギーの原因になるので、ぜんそくやアトピー体質の人は注意が必要です。
これからの季節で気をつけたいのは、湿気をためないということです。それには換気をして結露が出ないようにすることが大事です。蒸し暑い日や雨で窓が開けられない日などはエアコンの冷房かドライをかけておくといいでしょう。温度設定は27℃くらいで大丈夫です。
除湿機を置くのもOK。ただし除湿機は人が部屋にいるときに使用してもあまり意味がありません。使うなら誰もいないときに。
窓を開けて風を通すときは、窓を全開にする必要はなく、2か所開けて風の通り道を作るようにします。
フィルターにはほこりとともにカビも付着しています。掃除をしないで使用すると、カビを部屋じゅうにばらまくことになります。
栄養分となる手あかがついたままの洋服をたんすやクローゼットにしまうと、カビが生えるだけでなく、他の衣類にもカビが広がるおそれが。布団も同様に、汚れや湿気を含んだまま押入れにしまうとカビの原因になることがあります。
- 【プロフィール】 吉川 翠/都市居住環境研究所代表・農学博士
-
オハイオ州立大学大学院昆虫学部修了。 東京都立衛生研究所主任研究員、厚生省生活衛生局住宅指針検討専門部会委員、各種学会賞8回受賞。主な著書に『住まいQ&A寝室・寝具のダニ・カビ汚染』(共著 井上書院)『効果抜群!ダニ・カビ退治法』(共著 主婦と生活社)『体によい家・わるい家‐住まいの中の毒・ダニ・カビ』(共著 講談社)など。またテレビ朝日「最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学」など、メディアにも多数出演。
(取材:2012.6)