子供のころお母さんに背中をさすってもらったら、安心してぐっすり眠れた経験はありませんか?「手当て」という言葉があるように、人は触れられることで癒しを得ることができます。そこで、リラックスしながら体の不調もケアするマッサージを佐藤明子先生に教えていただきました。夫婦や親子のコミュニケーションにもおすすめです。
あん摩、マッサージ、指圧。みなさんは、この違いをご存じですか? 大まかに説明すると、あん摩は「もむ」、指圧は「押す」、マッサージは「なでる」を中心とした施術です。またあん摩・指圧は服の上から施術をするのに対し、マッサージはオイルなどを使い、直接皮膚に触れて施術をします。
中でもあん摩は、中国から日本に伝えられたもので、筋肉や骨、関節を動かして大気を体に引き入れようとする呼吸運動法と、皮膚や筋を押えたり、手足を素早く動かしたりする要素の2つで構成されています。今回ご紹介してる、ストレッチにより筋肉を伸ばしながら筋肉を押す施術は、あん摩の手技のひとつなんです。その他、もむ、なでるといった動きも合わせたマッサージをいろいろご紹介していますので、ぜひ試してみてください。
家族や親しい人と触れ合うと、脳の下垂体からオキシトシンが分泌されます。「抱擁ホルモン」とも呼ばれる物質で、分泌されると信頼や安心感を生んだり、絆を深めたりすることがわかっています。つまり人は、触れられることで無意識のうちにストレスが解消されるのです。
さらにオキシトシンには、睡眠パターンを管理し、気持ちを落ちつかせる役割もあります。
一方、身体面では、皮膚や皮下組織に対する外からの適度な刺激により、血管が拡張されて皮膚の代謝が上がったり、皮膚温が上昇して局所循環がよくなったりします。すると筋肉の緊張も緩和されてくるのです。
マッサージを行う際は、まずは相手と呼吸を合わせて、やさしく行ってみてください。また受け手側は、体を締め付けない服装で息を止めないこと。入浴などで体を温めておくのもおすすめです。
マッサージは、良かれと思って行っても、受け手が違和感や痛みを覚えてはいけません。強すぎる刺激は、かえって微細血管の損傷や皮膚炎症といった、いわゆる「もみ返し」の原因となります。相手が気持ちいいかを確かめながら行いましょう。コミュニケーションが大切です!
もみ返しを防ぐコツは、「ゆっくり押して、ゆっくり放す」。徐々に圧をかけながら、相手に力加減を確認します。また放す時も、押したときと同じスピードでゆっくりと。ゆったりとした施術は、受け手も自分が丁寧に扱われていると感じ、より安心に繋がりますよ。
家事に忙しい奥さんをいたわってあげたり、残業で疲れた旦那さんを癒してあげたり、さらに受験勉強中のお子さんを励ましたりと、マッサージを通して家族の絆を深めてほしいと思います。
<マッサージを行う前の注意事項>
急性腰痛(ぎっくり腰)や足にしびれが出ている腰痛、高齢者の圧迫骨折の疑いがある腰痛の場合は、マッサージをしてはいけません。早急に病院で医師にご相談ください。
明確に足のみに効かせるストレッチとマッサージの合わせ技で、もも、ふくらはぎ、足先の疲れやむくみを改善していきます。
- ※(施)はマッサージの施術者、(受)はマッサージを受ける人を表します。
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- 1(受)を仰向けに寝かせ、右足を曲げ外側に倒す。足の内側に手の平を使って深く・広く圧をかける。ただし、足の内側はデリケートなところなので、強く押しすぎないように注意。
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- 2曲げた足を内側に倒す。足の外側に深く圧をかけながら、腰から太ももの横の筋肉(大腿筋膜張筋)をストレッチしていく。
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- 3膝を立てる。手の平で足を両側面から挟みこむように掴んでねじることで、ふくらはぎの筋肉をゆるめる。この時、膝の裏を引っ張ることで膝裏と太もものストレッチになる。
※ストレッチをすることで、疲れて硬くなった体が伸ばされて、ほぐれていくのがわかります。
- 3膝を立てる。手の平で足を両側面から挟みこむように掴んでねじることで、ふくらはぎの筋肉をゆるめる。この時、膝の裏を引っ張ることで膝裏と太もものストレッチになる。
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- 4足首から下を全体的に握ったり、かかとを手の平のつけ根で挟んで錐(きり)もみのようにもむ。
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- 5足指のつけ根の最も足幅が広いところを、両手で錐もみのようにもんだり、さらに両手で掴むようにもんだり、ぶるぶる震わせる。
①~⑤を左も同様に行う。
- 5足指のつけ根の最も足幅が広いところを、両手で錐もみのようにもんだり、さらに両手で掴むようにもんだり、ぶるぶる震わせる。
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- 6足先を掴み足の指を反らせる。
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- 7反対に足の甲を伸ばすように足首を倒す。
※足は第二の心臓とも言われ、心臓から最も遠い足首から下をもむことで、血液循環がよくなります。また足首を伸ばすことで、向こうずねの外側(前脛骨筋)のストレッチに。
- 7反対に足の甲を伸ばすように足首を倒す。
首の筋肉は繊細で複雑です。強くもみ過ぎると筋肉がゆるまず、筋肉の繊維が傷ついてかえって痛くなる「もみ返し」が起こってしまいます。手の平で筋肉を面で捉え、筋繊維を傷付けないように行います。
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- 1(受)に座ってもらい、少しうつむかせ顔を左に向ける。後ろから(受)の顔を左向きに固定し、右肩を後ろに引き、首から肩につながる筋肉(僧帽筋上部繊維)を伸ばす。続けてその部分をさすることで筋肉をゆるめる。
反対も同様に行う。※筋肉が伸ばされているのでこれだけで肩の筋肉の緊張が解消されます。(施)の肘から下の腕部分で僧帽筋を肩に向けて押すようにさするとより効きます。
- 1(受)に座ってもらい、少しうつむかせ顔を左に向ける。後ろから(受)の顔を左向きに固定し、右肩を後ろに引き、首から肩につながる筋肉(僧帽筋上部繊維)を伸ばす。続けてその部分をさすることで筋肉をゆるめる。
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- 2後ろから(受)の額を抑えて前に倒れないようにして、頭と首の際(後頭骨下縁)全体をまんべんなく頭頂部に向かって突き上げるように親指か手の平の根元で押す。
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- 3 (受)を少しうつむかせ、チョップの要領で小指の先の部分を当てながら肩全体を軽くリズミカルに叩く。
腰が重だるいとか、背中が張って辛いという時でなくても、背中をさすってもらうと気持ちがいいものです。背面をゆっくりさすったり、押したりすることで背中の張りだけでなく、心の張りも溶けてリラックスできます。
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- 1 (受)の胸の下に枕やクッションをはさみ、うつ伏せに寝かせる。手の平で肩甲骨の上から腰まで背中全体の筋肉を強く撫でる。
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- 2背骨の両脇をゆっくり手の平の根元で押す。
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- 3 (受)の頭側に移動し、首の根元から肩口に掛けてゆっくりさする。続いて、首の根元から肩口にかけて、ゆっくり掴みながら押す。
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- 4頭と首の際(後頭骨下縁)に4本の指の腹を当て、頭頂部に向かってもむ。首の骨(頸椎)の近くから、耳の際に向かって順にもむ。
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- 5手の平を合わせて肩甲骨の間に置き、小指側で押す。
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- 6 (受)の横に移動し、肩甲骨の下の出っ張りに片手を置き、もう一方の手を肩甲骨と反対側の腰骨に当て、背中から腰にかけての筋肉を斜めに伸ばす。
反対側も行う。
- 6 (受)の横に移動し、肩甲骨の下の出っ張りに片手を置き、もう一方の手を肩甲骨と反対側の腰骨に当て、背中から腰にかけての筋肉を斜めに伸ばす。
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- 技手や手首の力が弱い女性は、肘の先で押すと楽に押せる。
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- 技(受)の背中の張りが強く、手で押されるだけでも痛い場合は、肘から下の柔らかい部分を転がすようにして押す。力が入り過ぎず、心地よく押せる。
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- 7お尻のやわらかい部分を手の平の根元でこねるようにもむ。
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- 8大腿骨の外側の付け根を親指で両側から押し込む。
パートナーにストレッチしてもらうことによって自分が普段動かしていない筋肉をまんべんなく動かし、可動域を広げて疲れにくい体を作ります。また、ストレッチにより伸びた筋肉をさすったり押したりすると、普通にマッサージするより、軽い力で筋肉を伸ばしほぐすことができます。
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- 1(受)の胸の下に枕やクッションをはさみ、うつ伏せに寝かせ、足を交差させる。上になっている足を(施)の足でホールドして腰の筋肉を伸ばし、腰の上部からお尻に掛けて押す。
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- 2上になっていた足を蛙のように外側に曲げる。伸ばされたお尻の筋肉を肘で押す。
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- 3 足を戻し、(受)の膝の下に(施)の膝をかませて、腰の上部からお尻に掛けて押す。
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- 4 そのまま太ももの裏を手の平で押す。
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- 5次にふくらはぎを両手でねじるようにもむ。
①~⑤を反対側も同様に行う。※ふくらはぎの筋肉が張っていると腰痛も起こりやすくなります。ねじるようにもむことでむくみの解消にもなり、筋肉のポンプ作用で血液やリンパ液が心臓に戻りやすくなります。
- 5次にふくらはぎを両手でねじるようにもむ。
- 1 (受)に仰向けになってもらい、片足をお腹につくほど深く曲げる。
(施)は手の平を(受)の足裏に添えて膝方向に押しつつ、膝をお腹に向かって下に押す。
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- 2膝を左右に数回まわす。
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- 3(受)の足を交差させる。上半身が起きないように肩を抑えながら、腰を押して体をねじる。
①~③を反対側も同様に行う。※足を交差させることで、脇腹からお尻、足にかけての筋肉が伸ばされます。
- 3(受)の足を交差させる。上半身が起きないように肩を抑えながら、腰を押して体をねじる。
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- 技このとき膝を曲げれば、お尻の筋肉はさらに伸ばされます。
※下半身の大きな筋肉を伸ばすことによって、血行がよくなり、腰の緊張もほぐれます。
- 技このとき膝を曲げれば、お尻の筋肉はさらに伸ばされます。
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- 4 (受)の両膝を揃えて曲げ、横に倒す。
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- 5上半身が起きないように肩を抑えながら、腰を押して体をねじる。
④~⑤を反対側も同様に行う。※お尻から腰にかけてストレッチがかかり、倒す足の方向を変えると伸ばされる筋肉が変わります。
- 5上半身が起きないように肩を抑えながら、腰を押して体をねじる。
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- 技さらに大きく腰をねじると、背中にある広背筋という大きな筋肉も伸ばすことができます。
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- 6(受)の膝を曲げ、足裏を(施)のお腹に当てる。体重をかけて押しながら深く曲げ、腰の筋肉を伸ばす。
※足を閉じて押すとお尻から腰の筋肉が伸ばされます。
※足を開いて押すと伸ばされる筋肉が変わり、大きく足を開くと、内ももの筋肉も伸ばすことができます。
- 6(受)の膝を曲げ、足裏を(施)のお腹に当てる。体重をかけて押しながら深く曲げ、腰の筋肉を伸ばす。
- 佐藤 明子さん プロフィール
- 鍼灸・あん摩マッサージ指圧師(厚生労働省認定)、リンパ浮腫療法士(日本リンパ・日本脈管・日本血管外科・日本静脈の4学会認定)。心愛治療院院長。宮城学院女子大学 日本文学科卒業後、後藤学園 神奈川衛生学園専門学校東洋医療総合学科卒業。2004年、乳がん、子宮がん、大腸がん、甲状腺がんなどのがん術後のむくみ(リンパ浮腫)とがん治療後の体のこりや張りの専門治療院を青山に開業。がん治療後の肩こり腰痛治療とリンパ浮腫治療・ケアの啓蒙のための講習活動なども行っている。
「心愛治療院」ホームページ:http://sinnai.net/
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ご紹介しているエクササイズにつきましては、効果を保証するものではありません。
また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理せず行ってください。
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