今回はエクササイズ・ローラーを使った筋膜リリースです。ローラーをお持ちでない方は、バスタオルを硬くねじったもので代用OKです。前半は、上半身をほぐして肩こりや猫背を改善し、後半は下半身をほぐして老廃物を流し、お尻から足までスッキリさせていきましょう。ぜひ2日に1回程度のペースで、続けてみてください。
※ 周囲に障害物がなく、足元が安定した場所で行ってください。
体には筋肉や骨、臓器など色々な部位がありますが、筋膜はその一つひとつを包んでいる薄い膜で、各部位を正しい位置に留める役割があるとされています。中でも筋肉を包む筋膜は筋筋膜と呼ばれ、同じ姿勢を続けていたり、逆に特定の筋肉だけを酷使する運動をしたりすると、筋肉が硬くなって筋筋膜もクシャクシャとシワが寄った状態になってしまいます。筋膜は全身につながっているので、一か所でも縮むと他の部分も引っ張られて、体の歪みや痛みが出ることになります。
今までは筋肉の状態が悪いと痛みが出ると考えられていました。ですが筋膜の方が痛みを感じるセンサーが敏感だと言われていて、筋膜を緩めるだけでも痛みが改善されることがあり、筋膜リリースが注目されるようになりました。ストレッチをしているのに、痛みやこりが取れないといった方は、筋膜に縮みがある可能性が高いです。
筋膜リリースの概念は諸説あるのですが、もとはアメリカで始まった筋膜をはがす手技で、それが日本にも伝わり理学療法士や整体師といった方たちに広まったようです。そうした中、自分で筋膜リリースが行えるローラー型のツールが出てきたのだと思います。ローラーは、硬め・柔らかめ、突起のある・なしなど、いろいろな商品がありますが、最初は柔らかめのものがいいと思います。バスタオルを硬くねじって、棒状にして代用していただく方法もあります。
ご紹介しているエクササイズは、体が温まっている時やリラックスしている時に行うと効果的なので、入浴後がおすすめです。一方でローラー自体が、固まった筋肉を温めるためのツールでもあります。朝や運動前に行うと、体の可動域が広がって活動量が多くなり、脂肪燃焼や運動効果を高める効果が期待できます。反対に運動後に行うと疲労物質を流して回復を早めてくれます。またエクササイズによって血行を促進すると、老廃物が流されてセルライトのケアにもつながります。排出を促すためにも、エクササイズの後はぜひ水分を補給してください。
ケガをしているところや皮膚に炎症などがある部分は、ローラーの使用を避けてください。そうでない場合も、痛みが強いとかえって筋肉が固まってしまいます。ローラーに全体重を乗せるのではなく、手足で体を支えて圧を調節することが大切です。その際は、ひじは肩の真下に置くなど、支えている部位に過度に負荷がかからない体勢を取ることもポイントです。痛みで呼吸が止まってしまうようなら、それは刺激が強すぎると思って。イタ気持ちいいという感覚を大切に、ゆっくり深呼吸をしながら続けられる圧を目安にしましょう。
慣れてくるとついゴリゴリとやってしまいがちですが、圧が強すぎるのはおすすめできません。反対にコロコロと軽すぎるのも、圧が足りず筋膜にアプローチできていない場合があるので、ほどよい加減を探ってみてください。また体の左右でこりに差がある時は、硬い方は少し回数を増やすなど、ご自身の状態に合わせて調整していただいて構いません。
私自身、ローラーを初めて使った時は「痛いー!」と思いました(笑)。ですが続けていくうちに、体の軽さが違ってきて。やった日とやらなかった日では、翌朝の体の軽さが違うんです。今では、その日の疲れをその日のうちに取るという感じで、1日の終わりに毎日続けています。
エクササイズ・ローラーを使った筋膜リリースは、いわゆる運動とは違い、体を整えるコンディショニングに当たりますが、体の可動域が広がって体が動くようになり、血行の促進や体の痛みの軽減が期待できます。それと呼吸が深まって体の緊張が取れて、交感神経が副交感神経に切り替わっていく状態をつくれるので、ストレスの軽減や心地よい眠りにもつながると思います。心のケアの面でも、コンディショニングは大事だと感じています。
★ローラーを転がす回数は、どの部位も8回から10回程度を目安に行っていきましょう。
上半身ほぐし
まずは上半身です。肩甲骨、脇の下、胸周りをほぐしていきます。
この3か所をほぐすことで、肩こりや、猫背、巻き肩を改善していきます。また呼吸を深める効果も期待できます。
1.肩甲骨周り
肩甲骨周りをほぐしていきます。
ローラーを横向きに置いて仰向けになり、肩甲骨の下辺りにローラーをセットします。
両ひざを立てて、両手は頭の後ろに添えます。
お尻を少し浮かして、ローラーを上下に転がしていきます。
肩甲骨周辺から背中全体にかけて、イタ気持ちいい範囲を目安にゆっくりと圧をかけていきます。
深い呼吸を繰り返しましょう。
ローラーを肩甲骨の下で止めたら、お尻を下ろします。
そこから上体を反らせたり丸めたりしましょう。
息を吸って背中を反らし、吐いて丸めます。
肩甲骨周りの筋肉をほぐし、胸をしっかりと開くことで呼吸が深まり、リラックス効果や疲労回復効果も期待できます。
2.脇の下周り
脇の下から背中にかけてほぐしていきます。
横向きの姿勢になり、脇の下にローラーをセットして、両ひざは軽く曲げます。
そこからローラーが脇全体に当たるように、体を前後に動かしていきます。
圧をかけながら丁寧に動いていきしょう。
硬くなっている部分や張っている部分を探るように動いていきます。
特に硬くなっている部分で動きを止めて、今度はローラーを上下に転がしていきます。
さらに動きを止めて、腕の付け根から腕をゆっくり上下に動かしていきましょう。手の平は上向きで指先の力を抜いて、呼吸を止めずに行います。
痛いところや張っているところにポジションを変えて、同じように腕を動かしていきます。
反対も同様に行います。
3.胸周り
胸の上の部分をほぐしていきます。
ローラーを少し斜めに置いたら、胸の上の辺りに当たるようにうつぶせの姿勢になります。
ローラーを当てている側の手足は伸ばし、反対の手足は曲げて体を支えます。
そこからローラーを上下に転がしていきます。
特に張っている部分で動きを止めて、ひじを曲げたり伸ばしたりしてみましょう。
頭が下がらないように首を長くした状態で行いましょう。深呼吸を続けて、圧をかけながら丁寧に動いていきます。
反対も同様に行います。
下半身ほぐし
続けて下半身です。お尻やももの外側、ふくらはぎを中心にほぐしていきます。
下半身の血行を促進してむくみを改善し、老廃物を流して、お尻から足をスッキリさせていきましょう。
1.お尻
お尻全体をほぐしていきます。
ローラーの上に座って両手を後ろにつきます。
両ひざを立てたら、片側のお尻に体重をかけていきます。
お尻の筋肉は大きいので、少しずつローラーが当たる面を変えながら、体を上下に動かしてローラーを転がしていきましょう。
特に張っている部分で動きを止めて、ゆっくり圧をかけながら深呼吸を続けます。
2.ももの外側
ももの外側をほぐしていきます。
横向きの姿勢になり、ひじは肩の下につきます。
ローラーを腰骨の下辺りに当てて、下の足は伸ばし、上の足は前にもってきて体を支えます。
そこからローラーを上下に転がしていきます。
続けて体を前後に動かして、ローラーが当たる位置を変えてほぐしていきましょう。
ローラーのポジションを太ももの横の真ん中辺りに移動して、同様にローラーを上下に転がします。
さらに体を前後にも動かしていきましょう。
ひじは常に肩の真下に来るように。
さらにひざの近くにポジションを下げて、同様に行います。
ひざの横は痛い方が多いので、無理せず行ってください。
深呼吸を続けて、やさしく圧をかけていきましょう。
3.ももの前側
ももの前側をほぐしていきます。
片側のももの付け根にローラーを当てて、うつぶせの姿勢になります。ローラーを当てている側の足は伸ばし、反対の足は曲げて横に置きます。両ひじは肩の下につきます。つま先を立てて、ローラーを上下に転がしていきます。
動きを止めて、今度は体を左右に動かして、張っている部分や硬いところがないか探っていきましょう。
ローラーのポジションを太ももの真ん中辺りに変えて、同様に行います。
ももの前側も面積が広くいろいろな筋肉があるので、ローラーが当たるポジションを変えながら行っていきます。
さらにポジションをひざの上に変えて、同様に行います。
頭が下がったり首がすくんだりしないように首を伸ばして、背中から後頭部までのラインまで長く伸ばします。
深呼吸を続けます。
4.ももの内側
ももの内側をほぐしていきます。
うつぶせの姿勢で、片足を曲げて横に置き、内ももの付け根にローラーをタテに当てます。反対の足は伸ばします。両ひじは肩の下につきます。
そこから体を左右に動かして圧をかけ、ローラーを横に転がしていきましょう。
続けて上下にも動いていきます。
内ももの真ん中辺りにローラーのポジションを変えて、同様に行います。
さらにひざの近くにポジションを変えて、同様に行います。
圧の掛け方をコントロールして、イタ気持ちいい範囲で行っていきましょう。
5.ふくらはぎ
ふくらはぎをほぐしていきます。
長座になり、片ひざを立てたら、反対のふくらはぎのひざに近い部分をローラーに乗せます。
お尻を少し浮かして、ローラーを前後に転がします。
お尻を下ろしたら、今度は足を横に転がし、ふくらはぎ全体をほぐしていきます。
ふくらはぎの中央辺りにローラーのポジションを変えて、同様に行います。
さらにアキレス腱の少し上、足首の辺りにポジションを変えて、同様に行います。
ここで足首を回すのもおすすめです。
一連の動きを反対も同様に行います。
- 田中 いずみさん プロフィール
ACSM(アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士)、NASM-PES(パフォーマンスエンハンスメントスペシャリスト)、(社)日本母子健康運動協会認定 産後運動指導者、Radicalfitnessジャパンマスタートレーナー。
エアロビクス、格闘技、トレーニングやコンディショニングなどフィットネス全般の指導に従事し、機能的な身体づくり、楽しく効果的な指導を得意とする。また、インストラクターの育成、エクササイズ開発、フィットネスクラブやイベント等で幅広く活躍。また、パーソナルトレーナーとしても活動している。過去にはNHK-BS2「ドゥ!エアロビック」にもレギュラー出演した。
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また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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