今回は、以前ご紹介したゆかたの着付けから一歩進んで、着物の着付けに挑戦してみましょう。帯結びは粋でおしゃれな「銀座結び」をご紹介。一人で着られる簡単な方法ですので、カフェや美術館など、着物を着て気軽にお出かけしてみてくださいね。
前回は浴衣の着付けをご紹介しましたが、浴衣と着物の大きな違いは、下に長襦袢を着るか着ないかということです。浴衣は肌着の上に一枚でさらっと着ているのに対して、着物は重ね着をするので長襦袢の段階からシワのないように着付けるのがきれいな着姿のポイントです。
着物は、長い目で見ると自分のサイズにぴったりのお誂えの着物がおすすめですが、今は一万円以下でお仕立て上りの着物もたくさん販売されています。ワンピースを選ぶような感覚で楽しめるようになりました。素材は紬や麻などのざっくりとした風合いの着物の方が滑りにくいので、初心者さんは着やすいと感じるようです。
着物には裏地をつける袷(あわせ)と裏地のない単衣(ひとえ)があります。10 月から5 月までは冬物の袷、6月と9月は単衣、真夏の7月8月は薄物を着ます。
このように基本的な衣替えのルールはありますが、最近は夏の暑さが本当に厳しいですし、沖縄と北海道でも気候は違いますよね。ですから、結婚式などの正式な場面では、基本に則って着る方が失礼がないですが、普段のお出かけではその時に快適な着物でいいと思います。洋服と同じで、夏は暑苦しく見えないように、冬は寒々しく見えないようにするといいですね。
柄を選ぶ時のコツは“季節の先取り”です。着物にはよく季節の草花が描かれますが、その草花のベストシーズンの一ヶ月くらい前から着て、散るころには次のモチーフを着るようにすると、季節感があり粋で素敵です。春夏秋冬の草花が描かれている着物や幾何学模様、無地などは季節に関係なく着ることができるので、迷った時はこれらの柄がおすすめです。
着物と帯の組み合わせは、カジュアルな着物の場合は、基本的には自由に選んでOKです!とはいえ悩んでしまう方には、同系色、反対色、または無彩色の帯を合わせるのをおすすめします。
・同系色:着物に使われている色と近い色を帯に持ってくる
・反対色:着物に使われている色と反対の色を帯に持ってくる
・無彩色:色合わせに悩んだら、黒、白、グレーなど無彩色を帯に持ってくる
今回ご紹介している「銀座結び」は、小紋や紬といったカジュアルなオシャレ着の着物に向いています。お太鼓結びよりも粋な雰囲気になるので、同じ着物と帯でもガラッと印象が変わります。お持ちの浴衣がご自身のサイズで誂えた本格的なものでしたら、夏物の名古屋帯を「銀座結び」に結んでも素敵です。
一方、カジュアルな着物には、浴衣の回にご紹介した半幅帯の「花文庫」や「リボン返し」といった変化結びも結んでいただけます。
気をつけることを挙げるとするとやはり、着物の所作でしょうか。テーブルのお醤油を取る時はたもとに手を添えるとか、階段では裾を踏まないように上前部分を右手で少し持ち上げるとか、少し知っているだけで着物姿がきれいに見えるだけでなく、着物の汚れも防ぐことができます。
着物のお手入れ方法は、ポリエステルなどであればネットに入れて洗濯機で洗えます。正絹の場合は、何度も着たものはシーズン終わりにクリーニングに出しますが、通常は2~3時間、着物ハンガーにかけて湿気を飛ばしたら、そのまま畳んでしまって大丈夫です。なので意外と毎回クリーニングに出すわけではないので楽と言えば楽ですね(笑)。
もし外出先でシミをつけてしまった場合、叩いたりこすったりすると余計に広がったり汚れが取れにくくなったりするそうなので、むしろ触らずに。なるべく早く帰って、すぐに専門のクリーニング店に出しましょう。
着物を着ると、夫や周りの方から褒められたり、レストランでもいいお席に通していただけたり、一層丁寧に接客をしていただけることが多いです。着物で割引があったり、初めてお会いした方にも名前をすぐに覚えていただけたりと、メリットはたくさんあります。着物は自分が着て楽しいというだけでなく、周りの方もちょっとハッピーにするパワーがあると思っています。
あと「着やせ効果」も着物のメリットです。着物は女性が気になる二の腕や下半身、お腹周りをすっぽり隠し、縦のラインを強調することもあり、着やせ効果が抜群です。「銀座結び」もヒップが上がって見えるので体型カバーにぴったり。また「年齢に関係なく美しくいられる」ところも魅力です。むしろ年齢を重ねるほどに粋に着こなせるようになると感じているので、私自身これからが楽しみです。
長襦袢の着方
必要な道具
長襦袢 (長襦袢にはあらかじめ半衿を付けて衿芯も通しておいてください。)
腰紐
伊達締め
先に肌着と裾除けを着けて、タオルで体形補正をしておきます。足袋も履いておきましょう。
※体形補正の方法はこちらの動画をご覧ください。
今年こそ挑戦したい浴衣の着付け!
長襦袢を着ていきましょう。
長襦袢を羽織り、片手で衿先を合わせて持ち、もう片方の手で背中の中心線を持ちます。両手を前後に動かしながら、背中心を後ろに引いて、うなじにこぶし1つ分の空間を空けます。
そのまま衿を前に引っ張りすぎないように、右手に持っている衿、次に左手に持っている衿の順で胸を包み込むように置きます。
衿を合わせたら手を持ち替えて、衿のV字がのどの窪みにくるようにします。
次に腰紐を胸のすぐ下に当てて、後ろに回し、交差してしっかり締めます。紐は前で蝶々結びして、余った紐の先は、腰紐に挟み込みます。
★腰紐の締め具合は、紐下で指2本が入るくらいにします。
背中の紐の下に指を入れ、しごきながら脇の方にシワを寄せます。背中心から下方向にも布地を引き、背中がフラットな状態になるように緩みを取ります。
左右の脇の身八つ口は開いている部分を閉じ、脇のシワを寄せ、タックを取ってたたみます。長襦袢からシワをきれいに取ることで、着崩れしにくくなります。
次に伊達締めをします。伊達締めを当て、後ろに回して交差したら、前に回します。二度からげたら、反対にねじって紐の先を挟み込みます。
これで長襦袢の出来上がりです。
着物の着方
必要な道具
着物
コーリンベルト
腰紐
伊達締め
帯板
着物を着ていきます。
長襦袢の衿を崩さないように着物を肩にかけます。長襦袢の袖を持って着物に手を通します。
衿の伊達締めの少し下あたりをつかんで、後ろまでギャザーを寄せながら持ちます。一度しっかり持ち上げて、着物の丈を床すれすれの長さにします。
出来上がりの状態を確認するために、上前を右の腰骨に合わせます。この時、布が余るようなら下前側を引きます。腰にぴったりと布が添うようにするのがポイントです。
左脇を締めて一度上前を開きます。次に下前を入れ、幅の広い着物は、脇から折り返します。
下前の先はしっかり15cmくらい上げておきます。
再度、上前を右の腰骨に合わせます。
上前の先は5cmくらい上げます。
次に右手で腰紐を持ち、上前を抑えて腰紐を前から当て、後ろに回し、交差してしっかり締めます。紐は前で蝶々結びをして、余った紐の先は腰紐に絡めておきます。
両方の身八つ口から手を入れて、おはしよりの布地をきれいに下ろします。そのまま後ろにも手を回して、後ろのおはしよりも整えます。
★この時、おはしよりのラインは水平か、少し右上がりになります。
左右の共衿の縫い目を合わせて持ち、もう一方の手で背中心を持ちます。前後に動かして衿をなじませます。
左右の衿を持ち、出来上がりの衿幅を決めます。広衿の着物は下に下がるにつれて幅が広がるようにします。
耳下で着物の衿と長襦袢の衿を揃え、半衿は1cmほど出します。
出来上がりのイメージが決まったら、コーリンベルトを左の身八つ口から入れ、下前の衿を肋骨の下あたりで留めます。
★この時、下前の布がもたつくので内側に折り上げ胸の下に収納しておきます。
コーリンベルトを背中側から右に回し、上前の衿に留め、おはしよりを整えます。
背中のシワを伸ばします。背中の縫い目を引き、縦シワは脇に寄せます。
身八つ口から肌や肌着が見えないように穴をふさぎ、脇に寄せたシワをきれいに折り込みます。反対側も同じようにタックを寄せます。
長襦袢の時と同じように伊達締めをします。
帯板をつけて、出来上がりです。
帯の結び方:名古屋帯で銀座結び
必要な道具
名古屋帯
帯揚げ
帯締め
腰紐
タオルハンカチ
クリップ2個
(洗濯ばさみでも可)
輪ゴム
最初に、タオルハンカチ、帯揚げ、腰紐、輪ゴムを使って帯枕をつくります。
帯揚げの中心にタオルハンカチを重ね、下のラインに沿って腰紐を置きます。帯揚げの上下を内側に折ります。
紐をくるむように、下から巻いていきます。
中心を輪ゴムで留めたら、ハンカチ枕の完成です。
帯を結んでいきましょう。
帯板を左脇にずらします。
手先を肩から20㎝取ります。帯板の上のラインを目安にするといいでしょう。
体の中心で、手先を伊達締めにクリップで留めます。
帯を2周巻き、しっかり締めます。
肩にかけておいた手先を下ろし、タレを左脇から上に折り上げます。
タレを手先の上に重ねます。
タレを上にひと結びして、しっかり締めます。
タレを根元から開きます。
開いたタレに、手先の輪を下にして乗せます。手先の下を2ヶ所、クリップで胴帯に固定します。
タレの裏側に、先ほどつくっておいた帯枕を当てて持ち上げ、帯の上のラインに重ねます。
帯揚げを後ろに回し、胴帯の上で仮結びしておきます。邪魔にならないように短く結びましょう。
次に、タレの足の付け根くらいの位置に帯締めを当てて、帯をつかみます。
垂れている帯を内側に折り上げてふくらみをつくります。下に残すタレの長さは15㎝程度にします。
そのまま帯締めを後ろに回し、胴帯の上で仮結びします。
胴帯に固定していた手先のクリップを外し、手先を持ち上げて、帯のふくらみをつくります。
銀座結びの底の形も整えます。
帯を背中に回す前に、タレを一度上に持ち上げます。
帯の上下をつかみ、帯板と一緒に右に回します。一旦、帯板が前中心に来るまで回して止めます。
帯板が前中心に来たら、今度は帯だけを後ろに回します。帯が背中に回ったら、タレを下ろします。
次に、帯揚げを慎重に解き、中の腰紐を帯結びが背中につくようにしっかり結び直します。蝶々結びをして帯の中にしまいます。
帯揚げは、端を内側に折り、脇からきれいに整えて、左を上に重ねてひと結びし、立てます。
上の帯揚げを下から回して、左に出します。
帯揚げの残りは、着物と帯の間に入れます。
次に、帯締めを結び直します。左手の帯締めを上に重ねてひと結びし、しっかり締めます。
上の帯締めで輪をつくり、もう片方の帯締めの上で緩まないように押さえます。
下の帯締めを真上に持ち上げ、そのまま輪に通します。
両手で一気に引っ張ると緩むので、片方ずつ左右に引きながら締めます。
ふさを上から下に挟み込んで出来上がりです。
- 小川千裕さん プロフィール
- 5月29日 (ゴ .フ .ク 呉服の日 )生まれ。母と伯母が和裁士のため、幼少期から着物に囲まれて育つ。20歳の時にウェディングコーディネーターとしてグアムで働き始め、フィリピンのセブ島、イギリスと数年を海外で過ごす。そうした海外生活の中で、改めて日本の文化や着物の普遍的な美しさに心惹かれ、着付けの道を志す。帰国後、日本文化や着物・所作に精通する師匠のもとで一級着付け講師、着物コンサルタントの資格を取得。現在はきものカルチャー研究所の月島校として、初心者から着物のプロの育成まで幅広く着付けの指導にあたっている。企業の着物関連記事の監修、講師として出演、モデル、ムービー出演など、講師や着付師といった枠にとらわれず幅広く活動中。
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