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美容と睡眠
コラム

美容コンサルタント美羽Miu

vol. 46昼寝と夜の睡眠はどう違う?「分割睡眠」の特徴とリスクを解説

「昼寝をしたら、夜に眠れなくなってしまった」そんな経験はありませんか? 近年、仕事の合間に短時間の睡眠をとる「パワーナップ」が注目されています。短い昼寝はリフレッシュに役立ちますが、長すぎたりタイミングを誤ったりするとかえって睡眠のリズムに悪影響をおよぼしてしまうこともあるのです。 今回は、1日の睡眠を分けてとる「分割睡眠」の特徴とリスクについて、基本的な知識から気をつけたいポイントまで、分かりやすく解説します。

歴史から見る「分割睡眠」の文化

昼寝 分割睡眠とは、1日の睡眠時間を2回以上に分けてとる睡眠スタイルのことです。たとえば、「夕食後に一度眠り、深夜に目を覚まして入浴するなどしばらく過ごしたあと再び眠る」といった二段階睡眠や、夜の睡眠に加えて昼寝をとるスタイルなどが、分割睡眠にあたります。

歴史をたどると、中世ヨーロッパでは「二相睡眠」という習慣があったとする研究報告があります。当時の人々は夜中に一度目を覚まし、静かに読書をしたり祈りを捧げたりした後、再び眠るという生活リズムを送っていたそうです。

現在でも、スペインの“シエスタ”など、昼間に休息をとる習慣が知られています。これは、日差しの強い午後の時間帯にいったん活動を中断して休憩(昼寝)をとるスタイルで、暑さの厳しい地域で体力を温存するために根づいた文化です。

夏の日中は気温が40度近くまで上がることもあり、無理に活動を続けると身体に大きな負担がかかります。そのため、涼しくなる夕方から夜にかけて活動するほうが合理的とされ、このような考え方がシエスタの背景になったと言われています。

ただし、近年は都市化や国際的な働き方の影響で労働環境や勤務形態が変化し、自宅に戻って昼寝をすることが難しくなったため、伝統的な長い昼休憩を取る人は減少傾向にあります。

動物たちに見られる「分割睡眠」と、人間とのちがい

動物たちの睡眠 動物たちの睡眠スタイルは、人間とは大きく異なることも多く、その中には分割睡眠も見られます。 たとえば、ナマケモノやコアラは栄養の乏しい葉を主食としており、エネルギー節約のため1日の大半を眠って過ごします。一方で、キリンやウマなどサバンナに生きる草食動物の中には、1日2〜4時間ほどしか眠らない種も少なくありません。彼らは外敵である肉食獣に狙われやすいため、警戒のため短い睡眠を1日の中で何度もとるスタイルをとっています。また、イルカや渡り鳥のように、脳の片側ずつを交互に休ませることで、移動や外敵への警戒を続けながら眠る動物もいます。

動物たちの睡眠は、その種が生き延びるために最適化されており、「分割睡眠」もその一つに含まれます。

ただし、人間はこのような動物たちとは、睡眠の仕組みが異なります。 人間の脳は高度に発達したため、しっかり休ませるためにはまとまった睡眠が大切になりました。睡眠中には、脳と身体を回復させるさまざまな働きが行なわれます。たとえば、日中の疲労の回復に加え、脳内の老廃物の除去や記憶の整理などが進み、心身がメンテナンスされるのです。このため、人間が心身の健康を保つためには、「しっかり眠る」ことがとても重要です。

自然界に分割睡眠が存在するからといって、人間にとっても最適とは限りません。睡眠は、やはりまとめてとることが、心身にとって最も良いのです。

夜にしっかり眠ることが、心と身体を整える基本

人間にとって睡眠は「夜」にまとめてとることが自然です。その理由は、生まれつき備わった約24時間周期の「概日リズム」(体内時計の働き)にあります。概日リズムは、眠気や目覚め、体温やホルモン分泌のリズムを調整し、昼と夜の切り替えをコントロールしています。

人間は昼間に効率よく活動できるよう、昼行性の動物として進化してきました。夜になると体温や血圧が下がり、眠気を促すホルモンであるメラトニンが分泌され、脳も身体も休息に適した状態に切り替わります。そのため、深い睡眠が得やすいのは夜です。一方で昼間は光や活動の刺激が多く、脳が覚醒しやすいため、長時間のまとまった睡眠をとるのは難しいのです。

高度に発達した人間の脳をしっかり休ませるには深い睡眠が欠かせず、それを効率よく得られるのが夜なのです。

昼寝を取り入れるなら「時間」と「タイミング」に注意

それでも、どうしても日中に眠気が強いときは、短時間の仮眠パワーナップ」を取り入れましょう。その際、「短時間」「早めの時刻」といったルールを守ることで、睡眠のリズムを守りつつ、集中力やパフォーマンスをある程度回復させることが可能です。


パワーナップのルール

パワーナップ ・時間は15〜30分程度(長く寝すぎるとかえって不調を招く)
・15時までに済ませる(夕方以降は夜の睡眠に影響しやすい)
・座ったまま寝る(横になると脳が深い睡眠に入ろうとする)
・寝る直前にカフェインをとるのも効果的(スッキリと目覚めやすい)


このように、昼寝はあくまで「補助的な休息」として取り入れることが大切です。もし、「最近よく眠れない」「朝の目覚めがスッキリしない」と感じているなら、まずは夜の睡眠を見直し、睡眠時間と睡眠の質をしっかり確保しましょう。




【監修】東京ベイ・浦安市川医療センター CEO / 医師 神山 潤 先生

睡眠、特にレム睡眠を脳機能評価手段の一つとして捉える臨床的な試みに長年取り組む。
旭川医科大学、UCLAでは睡眠の基礎研究に従事。米国から帰国後、日本の子どもたちの睡眠事情の実態(遅寝遅起き)に衝撃を受け、社会的啓発活動を開始している。


【主な著書】
・朝起きられない人のねむり学 一日24時間の賢い使い方
・眠りは脳と心の栄養! 睡眠がよくわかる事典 早起き・早寝で元気になれる
・睡眠で人生が劇的に変わる生体時計活性法 (講談社+α新書)
他多数