深い呼吸を意識し、体全体を使って行うボイストレーニングは、インナーマッスルの強化、代謝のアップ、美容や健康維持につながる、と最近注目を集めています。トレーニングを続ければ、高い声、大きな声が楽に出せるようになりますし、美しい姿勢も身につき、話す時、歌う時に自信が持てるようになります。
今回は、普段の生活の中で、簡単にできるトレーニングを教えて頂きました。
「歌うこと」は有酸素運動! 大きな声や高い声を出すには、筋肉を鍛え、深い呼吸を意識することが重要となります。
全身を使って行うボイストレーニングでは、横隔膜、骨盤底筋、輪状甲状筋など、普段の生活ではあまり使うことのないインナーマッスルを鍛えることができます。また、深い呼吸を意識して行うので有酸素運動にもなり、全身の代謝のアップにもつながります。脳にも酸素が行き渡るので、気分もスッキリしますよ。
楽しく歌えばストレス発散にも
正しい姿勢や発声方法を身につけると、喉に負担をかけることも少なくなります。大きい声、高い声も楽に出せるようになるので、歌ったり、話したりするのが楽しくなります。自信が持てるようになれば、人前でも堂々と、気持ちよく歌えるようになるので、楽しくストレス発散ができますね。
余計なところの力を抜くのがポイント
声は、喉の声帯を振動させることで発せられます。声の高さや大きさなどは、喉周辺の筋肉を使い、声門を閉じたり開いたりして調整するのですが、普段、頑張って声を出そうと意識すると、どうしても体に余計な力が入ってしまいます。体が緊張して筋肉が委縮してしまうと、その一連の動作がスムーズに行えなくなってしまうのです。
まずはリラックスすることが大事!
アクセルとブレーキをイメージしてください。上手に声が出せない状態というのは、余計なところに力が入り、声を出そうとする体にブレーキをかけてしまっている状態です。
“声を出そう”と意識すると、どうしても「アクセルを踏む」ことばかり考えてしまいますが、実は「ブレーキを外す」ことが大切なのです。
ボイストレーニングでは、そのブレーキを外し、効率よく声を出す練習をします。まずは、一度全身の力を抜いて、ゆったりと楽な気持ちではじめてみましょう。
トレーニングを始める際は、ウォーミングアップを行いましょう。いきなり大きい声や高い声から出そうとしないで、ムリせず、できるところから徐々にはじめましょう。普段の生活で「喉を使い過ぎたな」と思ったら、できるだけ声を出さないようにして、喉を休ませてあげましょう。その際は、常温の水など、できるだけ喉に負担をかけないものを口にすると良いでしょう。
右手を頭に添えて頭を右側に倒す。お腹でゆっくりと呼吸。
※肘は体の真横にくるようにしましょう。
※息を吐く事に注意を向けながら呼吸をしましょう。左も同じように
両手を頭の後に添えて頭を前に倒す。そのままゆっくりと呼吸。
※頭の重さで自然に首の後が伸びていきます。
頭を後ろに倒す。 そのままゆっくりと呼吸。
※無理をせず自然な呼吸を心がけましょう。
息を吸いながら両肩を耳に付けるようなイメージで上げる。
息を吸い続け、胸に一杯まで空気が入ったら、一気に力を抜いて吐き出す。息を吸いながら肩甲骨を寄せるようにして両肩を後ろに伸す。
息を吸い続け、胸に一杯まで空気が入ったら、一気に力を抜いて吐き出す。両手を体の前で組みそのまま前に伸ばし、息を吸いながら頭を腕の間に入れるように下げる。
息を吸い続け、胸に一杯まで空気が入ったら、一気に力を抜いて吐き出す。
足を肩幅に広げ、両腕を体に巻きつけるようにして呼吸をしながら全身を捻じる。 呼吸は止めないように。
※腕の重さで自然に体を捻じりましょう。体を捻じっていくごとに体の中心軸が定まって行きます。
中心軸をキープしたままゆっくりと止まる。
● 足は腰幅に開く
● 重心は足の親指と人差し指の付け根に置く
● 膝は自由に動くように緩める
● 背骨は一つ一つ積み重なっているイメージ
● 体に一本の軸が通っている状態
● 肩が内側に入らないように
● 上半身は自由に
● 顎を引く
- 1足を腰幅に開き、両腕を前後に揺らす。
- 2腕が後ろに振れるタイミングで、膝を曲げる。
- 3膝を曲げると同時に、息を吐く。
※体の動きに合わせて、自然に息が出ていく感覚です。腕が内側に入らないよう、腕は平行に動かします。
● 息を吐く代わりに「ハ」と声を出す。
※アゴの力を抜いて、口は開け気味にしましょう。
● 「ハ」を長い「ハーーー」に変えていく。
※喉に力が入らないよう、全身で声を出すように意識してみましょう。
話声に応用する
● 基本動作を行いながら「ハ」の代わりに短いセリフを言ってみましょう。
口の周りの筋肉を動かします。
● 指をくわえた状態でセリフを言ってみる。
※しっかり聞こえるように、口輪筋を意識して話します。
● 口輪筋を意識してもう一度基本動作を行いながらセリフを言ってみましょう。
● 「イ」の母音を、頭の前後を両手で引張るような動作を付けて声を出す。
※体全体を使うと出しやすくなります。
※息が漏れないよう、針に糸を通すような感覚で。
なるべく声を「遠くに集める」という感覚を意識しましょう。
● 声を届ける方向に手を投げ出しながら「ア」の母音で声を出す。
※届ける方向を意識して、さらに遠くへ声を出します。
※歌だけでなく、会話をするときにも意識してみましょう。
以下のような話し方、歌い方は、せっかくの力(呼吸)を上手く活かせていない状況です。このように”クセ”を付けたまま声を出そうとすると、喉を痛めてしまう場合があります。
喉を絞めつけるように歌ってしまう
喉だけで声を出そうと、喉周辺の筋肉に力が入ってしまい、喉が締まっています。
⇒余計な力を抜いて、口と喉を大きく開け、体全体で声を出すイメージを。
声がこもってしまう
口が十分に開いておらず、声を吸いこむ感じになってしまっています。
⇒口を大きく開けて、息と一緒に声を吐く感じで、声を相手に届ける意識を持ちましょう。
かすかすした声になってしまう
息が漏れてしまっています。呼吸が続かなかったり、小さい声になってしまいます。
⇒深い呼吸を意識して、声帯をピンと張るイメージで、しっかりと出したい”音”を狙って声を出しましょう。
声が鼻に掛ってしまう
声を出す方向が鼻に向いてしまっています。声が鼻から抜けてしまっています。
⇒鼻からではなく、正面に声を出す、口から遠くへ声を届ける意識をしましょう。
正しい発声で「小さい力でも大きな声が出せる」ように 正しい発声ができると、力(呼吸)を効率よく声にできるため、高い声も、大きな声も、楽に出せるようになります。ポイントは、吸い込んだ空気を漏らさず声にすることです。それには、「吐く息を意識するトレーニング」がおすすめです。
吐く息を意識するトレーニング
ゆっくりと息を吸い、口から吐く。
このとき、口を閉じぎみにし、歯の隙間から息を出すように「スーーー」と、息の音を鳴らしながら吐いてみましょう。
横隔膜を意識しながら、だんだんと長くできるようにします。慣れてきたら、「スーーー」と吐いていた息を、「ズーーー」と声に変えていきます。
息を吐く時と同じように声が出せましたか?
ボイストレーニングは筋トレと同じ ボイストレーニングは、一度やっただけで身に付くものではありません。しかし、長く続けることで正しい発声が習慣となり、今まで身に付いていたクセが矯正されていきます。うまく声が出せるようになると、だんだん自信もついてきますので、表情も明るくなってきます。喉を痛めることも少なくなるので、いつまでも若々しい声を保てるようになりますね。みなさんもぜひ、いい習慣として身につくよう続けてみてください。
- 寺沢 智子さん プロフィール
- シンガーソングライター、作曲家、ボイストレーナー、VoiceCoach 代表。 4歳からピアノを習い、作曲をはじめる。高校時代はコーラス部にて、全日本合唱コンクール全国大会3年連続金賞受賞。2年連続文部大臣賞受賞。卒業後、アメリカテキサス州の大学に留学し、作曲を中心に、音楽に関するあらゆることを学ぶ。在学中に、大学の作曲コンテストで優勝。帰国後、シンガーソングライター・作曲家として活動を開始。TVドラマやCM音楽の作曲やボーカルワーク、音楽提供などを行う。その頃、音楽制作会社にてボイストレーナーとして抜擢される。同時に、カウンセリング・コーチング技術を習得。2005年、VoiceCoachを設立。[VoiceCoach] ホームページ:http://www.voicecoach.jp