世界的に見ても最先端で超高齢社会を迎えている日本。『アンチエイジング』という言葉もよく聞かれる中、書籍やTV、講演会などで『アクティブ・エイジング』という考え方を発信し、自らも実践されるエイジング・スペシャリストの朝倉匠子さん。
雑誌で憧れの50代にも選ばれる朝倉さんが提唱される”素敵な年齢の重ね方”とは?今すぐ始められるその第一歩も教えていただきました。(取材:2010.8)
朝倉さんが提唱される『アクティブ・エイジング』とは、どんな年齢の重ね方ですか?
私が、『加齢学』に出合ったのは90年代の始め、当時住んでいた米国だったのですが、学び始めてすぐに感じました。これはまさしく急激な高齢化が進むこれからの日本にこそ必要なものだ!と。
ただ、『アンチエイジング』という言葉に象徴されるアンチ(抵抗)という西洋的な考え方は、自然をありのまま受け入れる東洋的な価値観とは馴染みにくい。もっと、日本人らしいエイジングはないか?と模索する中で生まれてきたのが『アクティブ・エイジング』という言葉でした。
歳をとることを、否定的にとらえるのでも、ただ受け入れるのでもなく、知識や経験を豊かに蓄えながら、自ら掴み取っていくものとしてとらえようという考え方です。
「自分はこんなふうになりたい!」と、各個人が自分らしく歳を重ねることを楽しめる。そんな前向きな加齢が広まっていけば、日本中にいいエネルギーが満ちてくるのではないでしょうか。
そのためには、まず、必要な情報を得て、その中から自分に合うものを選び取っていく知性と感性を磨くことが大切です。健康や外見的な若さだけではなく、もっと広い意味で、自分をイキイキと豊かにしてくれるものに関心を持つことが必要ではないかと思います。
『アクティブ・エイジング』を実践するためには、何から始めればよいのでしょう?
できれば「10年後はこの人のように」という身近な先輩を見つけるといいですね。
一人で完璧なモデルというのは難しくても、「この人は生き方が魅力的」「この人はファッションが素敵」と、何人かお手本を見つける。そんな方を近くで見ていると自分も勇気が湧いてきます。
私がお手本とする先輩たちは、みなさん積極的に人生を楽しんでいらっしゃいます。10年前に亡くなった母もその一人でした。晩年になって料理を教えていましたが、自分も楽しみながら、いつも周囲の人を気遣っている。そんな母の姿が大好きでした。何歳になっても、人に何かを与える素晴らしさを教えてくれた気がします。
この”人生を楽しむ”というのは、ひとつのキーワードではないでしょうか。男女を問わず、自分が興味を感じるものを大切にして、そこで出会う仲間と、年齢や立場を超えたフラットな人間的つながりを持つ。新しいことにも臆せず挑戦してみる。そういうことが、自分の幅を広げ、人生を豊かにしてくれるのだと思います。
男性の方も、50歳を過ぎてから、オヤジバンドを組んだり、サーフィンを始めたり、積極的に楽しむ方が増えていますよね。日本の男性も確実に変わり始めているなと感じます。
外見の若々しさを保つ秘訣は何でしょう?今すぐ始められることを教えていただけますか?
真っ先におススメしたいのは、姿勢を正すこと。立ち姿が美しいと、人は若く見えます。
まずチェックしたいのは、肩と頭の位置です。肩が前にせり出し、頭を突き出した姿勢になっていませんか?年齢を重ねるほど、そういう姿勢になりやすいので要注意です。
肩は後ろに引いてそのまま下へ落とす。頭も引いて体の中心線の上に持ってきます。頭の中心を上から吊られているような感じで意識するといいですね。こうすると胸が開き、顎が引けて、お腹も引っ込んで見えます。背骨が伸びるので健康にもいいですね。
もうひとつ、すぐに変えられるのはファッション。どうしても体型を隠したい、あるいは楽だからとワンサイズ上の服を選びがちですが、これはNG。老けて見えてしまいます。あくまでジャストサイズのものを選びましょう。合うサイズが見つからない時は、”お直し”で調整を。最近はデパートなどでもリーズナブルにやってくれるので上手に利用しましょう。
ファッションは、ミドルエイジの私たちこそリーダーになるべきもの。若い頃はGパンにTシャツで充分キレイだけど、年齢を重ねるとそうはいきません。私も『ミドレ』というブランドをプロデュースしていますが、やはりボディラインを美しく見せてくれるフォルムを重視しています。
ご自身の体験記をブログでも公開されていますが、”更年期”との付き合い方で大切なことは何でしょう?
更年期は男女共に訪れるもの。
ただ、男性は症状が出る人出ない人の個人差が大きいのに対して、女性は”閉経”という形で必ずやってきます。精神的にも、肉体的にも、美的にも、女性のほとんど全ての面と深く関わる女性ホルモンが激減するのですから、たとえ自覚症状がなくても自分の体内でどんな変化が起きているかは知っておくべきだと思います。
大切なのは、正確な情報を持つこと。
まずは、自分自身の身体について。ホルモンの状態や遺伝的な体質など、できれば40代に入る頃一度チェックしておくといいですね。もちろん、実際に更年期を迎えてからも科学的なデータを数字として把握しておくと自分を客観的に捉えるのに役立ちます。
次は、対処法について。更年期の症状は、個々人で本当にさまざまですが、その対処法もいろいろあります。きちんと情報を得て、その中から自分に合ったものを選び取っていくことが大事だと思います。
私も、充分な睡眠や栄養バランスなど日常生活に気をつけながら、症状がある場合はホルモン管理などドクターと相談しながら自分に合った方法を見つけています。この時期は「パーフェクトでなくてもいい」と気楽に構えて、自分を楽にしてあげることも大切ですね。
『アクティブ・エイジング』の視点から見て、睡眠について気をつけることはありますか?
健康面からはもちろん、美容の面からも、しっかり睡眠をとることは何よりのエイジングケアですね。
ある化粧品会社のデータによると、8時間睡眠と5時間半睡眠をそれぞれ8日間続けて比較したところ、短い睡眠時間では肌の水分量が約半分になったという結果が出ています。
自分の生活リズムに合った形でいいので、決った時間に床につき、充分な睡眠時間を確保することが大切です。
また、年齢を重ねると「眠れない」「眠りが浅い」など、いろんな睡眠障害も出てきがちです。音楽や照明、香りなど睡眠環境を整えたり、自分に合った寝具を探すなど、質のいい睡眠をとるための工夫も大切ですね。
適度に身体を動かすのもよく眠るのに効果的。私は、寝る前と目覚めた直後、ベッドの中で3分ほど呼吸法と簡単なストレッチをしています。短い時間を毎日無理せず…というのが続けられるコツではないでしょうか。
キラキラと輝く目、豊かな表情、エレガントな立ち居振る舞い…元来の美しいお顔立ちだけではない女性らしい魅力に満ちた朝倉さん。プライベートでは、50歳を過ぎて再婚。新しいご家族で過す時間、パートナーとお二人の時間、そして自分だけの時間、それぞれに大切にされているという素敵なお話も聞かせてくださいました。
- 【プロフィール】 エイジング・スペシャリスト/朝倉匠子さん
- 広島県生まれ。青山学院大学在学中よりCMモデルとして活躍。その後、テレビ司会、経済インタビュアを経て渡米。結婚、出産のため10年間メディア活動を中止。カリフォルニア大学で「NPOマネジメント」及び「ジェロントロジー(加齢学)」を学ぶ。米国と日本を往復する生活の中から考案した「アクティブ・エイジング」=能動的、精力的、美的加齢法を提唱し、医療や心理学、社会学など多方面の情報と合わせて発信する。2002年には「社会に貢献した女性」として、相馬雪香、緒方貞子、吉永小百合各氏とともにスイスのオメガ社より「オメガ賞」を受賞。NPO法人アンチエイジングネットワーク理事、(財)シニアルネサンス財団理事、AACクリニック銀座エグゼクティブプロデューサー、日本抗加齢医学会正会員。『できる男の活力マネジメント』(ディスカバー21)、『愛され美肌』(講談社)、『エイジング革命』(ソーテック社)ほか著書多数。
朝倉匠子オフィシャルサイト http://www.shoko-asakura.com/