今回は、メタボの予防と改善に効果的な「血糖値を下げるエクササイズ」をご紹介します。血糖値を下げるには、筋肉量を増やして・維持する筋力トレーニングが効果的です。また運動は、継続が何より重要です。週に2、3回を目安に、ご自身の続けやすいタイミングで行ってみてください。
※ 周囲に障害物がなく、足元が安定した場所で行ってください。
血糖とは血液中に含まれるブドウ糖のことで、その濃度を表すのが血糖値です。血糖は、細胞を働かせるエネルギーを作り出す時に必要となるものです。血糖値は基本的には一定に保たれていますが、食後は一時的に上がります。この時、体の中で血糖の上昇を感知して、インスリンという血糖を下げるホルモンがすい臓から分泌されるので、健康な人であれば食後なだらかに正常な値に戻っていきます。
すい臓自体が機能破綻して、インスリンが出なくなってしまうのが糖尿病1型。一方、インスリンは出ていてもその効果が下がっている、あるいは効果が下がってすい臓からインスリンが出ない状態となり慢性的な高血糖となっているのが糖尿病2型です。日本人の糖尿病患者の9割は、2型と言われています。
インスリンの働きの低下や分泌の減少を引き起こす一番の要因は、内臓脂肪型肥満いわゆるメタボです。肥満が続くことで食後の高血糖状態が最初に出てきて、それが続くと最終的にはインスリンの分泌が低下し慢性的な高血糖状態をきたし、糖尿病という診断になります。
糖尿病=肥満というイメージがあると思います。日本人と欧米人を比較した時、肥満となる確率は欧米人の方が高いのですが、糖尿病になる確率は日本人の方が高いと言われています。理由は、日本人は欧米人に比べて、すい臓がインスリンを出す力がもともと弱いからです。それと欧米的な食生活に変わったことも影響していると考えられています。
また睡眠不足になるとインスリン自体の効きが悪くなってメタボや糖尿病になりやすく、逆に糖尿病の人は睡眠の質が悪くなりやすいと言われています。なので睡眠不足で血糖が上がりやすくなって、血糖が上がり過ぎると睡眠の質が悪くなるという負の連鎖になってしまいます。やはり運動・食事・睡眠という健康習慣の基本は非常に重要だと感じます。
血糖を下げるための運動として大事なのが、有酸素運動と筋トレです。インスリンは主に、肝臓や筋肉、脂肪細胞で働きます。中でも筋肉は30~40歳をピークに加齢とともに落ちていきます。つまりインスリン自体は出ていても、筋肉が減っていくことでインスリンの行き場所がなくなってしまうんです。なので筋肉量を維持していくことは重要です。
運動は何よりも継続が大切です。ご紹介しているエクササイズも、10回行ってくださいなどと言っていますが、最初は1回でもいいです(笑)。とにかく始めることが大事です。ただし、すでに糖尿病の方は、合併症によって運動をやってはいけない場合があるので、取り組む前に必ず主治医にご相談ください。
あとはやはり食事面も大切です。運動を頑張ったからといって、たくさん食べてしまうと元も子もないので(笑)バランスが大切です。毎日暴飲暴食はよくないですが、週に一度だけ好きなものを食べる「チートデイ」というご褒美の時間をつくるのもおすすめです。やはり食事って楽しみだと思うので、そういったメリハリをつくるのはいいかなと思います。
退職後の男性は、女性と比べて引きこもりがちになるとよく言われます。働いている時はある程度動いていたのでエネルギーが必要だった人が、食生活は現役時代のまま動く量が減ってしまうと、急に血糖が上がってしまうことがあります。
もともと男性は内臓脂肪がたまりやすく、内臓脂肪はインスリンの抵抗性を上げる(利きが悪くなる)ようなホルモンを出していると言われます。他にも喫煙や飲酒などの影響もあって、女性より男性の方が糖尿病になりやすい傾向があります。
コロナ禍になって糖尿病の方たちは、外出を控えて不活動になってしまい、血糖をコントロールできなくなって入院される方が多かった気がします。その一方で、生活習慣病にならないようにしようという健康意識は、広まりつつあるとも感じています。最近はスマートウォッチなどで、体調を知ることができるようになってきました。ゆくゆくは血糖値も見られるようになると言われています。そういったものがもっと増えると、健康意識ももっと高まっていくのかなと思っています。
1.クォータースクワット
お尻と太ももの筋肉を鍛える運動です。
足を肩幅に開き、両手を胸の前で組みます。
息を吐きながら、お尻を後方に引いて、少しずつひざを曲げ重心を下ろし、ひざを45度まで曲げます。
この時、ひざがつま先より前に出ないように注意して、視線は下げずに、胸をできるだけ張るように意識しましょう。
息を吸いながら、ゆっくりと最初の姿勢に戻りましょう。
この動きを10回繰り返します。
お尻や太ももなどの大きな筋肉を鍛えることで効率的に筋肉量を増やします。
運動することで血中の糖を筋肉に取り込みやすくなり、食後に運動すると血糖値を緩やかに低下させる効果が期待できます。
2.カーフレイズ
ふくらはぎの筋肉を鍛える運動です。
足を肩幅に開きます。
かかとをゆっくり持ち上げて、3秒キープします。
重心をできるだけ真上に持ち上げることがポイントです。バランスが取りづらい方は、壁や椅子の背もたれに軽く手を添えて行うと良いでしょう。
ゆっくりとかかとを下ろします。
この動きを10回繰り返します。
ふくらはぎの筋肉を大きく使って筋肉量を増やしましょう。
筋力トレーニングは、2~3日に1回の頻度で継続して行うと、筋肉量の維持に有効です。
また、継続することで血中の糖を筋肉に取り込む効果が高まり、血糖値が上がりにくい体質をつくります。
3.腹横筋エクササイズ
腹筋の深層にある腹横筋を鍛える運動です。
足を肩幅に開いて立ち、胸の前で手の平を合わせます。
息を吸いながら、手を頭上に向かってゆっくり伸ばします。出来るだけ耳の横を通るように行いましょう。
息を吐きながら、最初の位置までゆっくり戻します。
運動中は、頭が天井から引っ張られているイメージで行いましょう。
この動きを10回繰り返します。
腹横筋は内臓を覆っている筋肉なので、鍛えることで体幹が安定し、ポッコリお腹の改善にも効果的です。
4.プッシュアップ
上半身全体の筋肉を鍛える運動です。
手を肩幅に広げ、ひじを伸ばした状態で床につき、足を伸ばし、足の指は立てた状態で床につきます。
肩・背中・腰・ひざ・足首が一直線となるように注意しましょう。
※負荷が強い方は、ひざをついた状態から始めてください。
息を吸いながら、ひじを曲げて胸が床に接地するぎりぎりまで下ろします。しっかりと胸を張って体を下ろしましょう。
息を吐きながら、ゆっくり体を持ち上げます。
この動きを10回繰り返します。
この運動は、大胸筋と二の腕の後ろ側の上腕三頭筋、肩の三角筋、そして腹筋群と、上半身の大きな筋肉を同時に鍛えることができるのでおすすめです。筋肉を意識しながら行うことで効率よく効果的に鍛えることができます。
バストアップや二の腕の引き締め、猫背の改善など姿勢を整える効果も期待できます。
5.プランクレッグレイズ
体幹と下半身全体を鍛える運動です。
うつ伏せになり、腕を肩幅に広げ、ひじを床について、上体を起こします。ひじは肩の真下について、足は肩幅に開き、つま先を立て下半身を持ち上げます。
肩、お尻、ひざ、かかとが一直線になるように注意しましょう。
目線は正面で、息を吐きながら、かかとで蹴るように片足を上げます。
吸いながら、ゆっくり下ろして床につく手前で止めます。
この動きを片足連続10回行います。
反対の足も同様に10回行います。
意識する筋肉は、お腹の前側の腹直筋、背骨の両脇にある脊柱起立筋、お尻の 大臀筋と中臀筋、内ももの内転筋、もも裏のハムストリングスです。
体幹と下半身の大きな筋肉を鍛えることで、糖や脂肪をエネルギーとして効率良く消費できるようになり、血糖値の低下につながります。
この動きは、効果的に体幹が鍛えられ基礎代謝が上り、痩せやすい体をつくります。
ヒップアップやお尻の引き締め効果も期待できます。
6.ヒップリフト
お尻と腰周りの筋肉を鍛える運動です。
仰向けに寝た状態で両ひざを曲げ、手は体の横に置きます。
床からお尻を持ち上げ、ひざとお腹が一直線になるように意識して3秒キープします。この時、お尻を持ち上げすぎないように注意しましょう。
呼吸は止めずに、自然な呼吸を繰り返しましょう。
元の姿勢に戻ります。
この動きを10回繰り返します。
この動きは、お尻の大きな筋肉である大臀筋と腰周りの脊柱起立筋を鍛えることができるので、姿勢の矯正に効果的です。
- 理学療法士 阿部誠也さん プロフィール
理学療法士。湘南藤沢徳洲会病院勤務。
東北文化学園大学医療福祉学部卒業。勤務する病院にて、急性期リハビリから在宅リハビリまで多面的に臨床業務へ従事。糖尿病患者の運動指導や装着型サイボーグであるHAL®︎を用いた診療にも深く携わっている。病気の予防を目的としたライティングや、自分らしい生き方を含めたキャリア支援など、幅広く活動中。
‐免責事項‐
ご紹介しているメニューにつきましては、効果を保証するものではありません。
また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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