今回は、祝儀袋や香典袋といったのし袋や芳名帳に、筆ペンで自分の名前をきれいに書くための練習方法をご紹介します。筆ペンの持ち方から文字の書き方まで学んで、いざという時に慌てず、筆ペンで美しく書けるようになりましょう。
日常生活において、筆ペンを使う機会は非常に少なくなっていますが、それでも教室に通われる方は、急を要している方が一番多いですね。結婚式やお葬式で恥ずかしい思いをしたとか、または恥ずかしい思いをしたくないとか(笑)。
私は「のし袋レッスン」という単発のレッスンもやっているのですが、生徒さんに伺うと、来月結婚式が控えているといったお話はよく聞きます。
20~30代くらいの会社員の方だと、社内でのし袋に書くのをいつも頼まれるという方もいらっしゃいますね。もう少し年齢を重ねてくると、今度はご主人の顔を立てたくて、きれいに書きたいという方も出てきます。
また本当に書くことがお好きで、書くと落ち着くという方や、筆ペンを練習して写経がしたいというさらに先の夢をお持ちの方もいらっしゃいます。そうした方たちは、筆で書くということに対する憧れが根底にあるように感じますね。
レッスンで感じるのは、筆ペンをギュッと握ってしまう方がとても多いです。すると、力で押して書いてしまうんですね。力を抜くことができないと、例えば縦画を書く時、書くというより押し付ける感じになって、線もぼてっとしてしまいます。
またはらいは、筆ペンを浮かせて穂を集めていくのですが、力が入っているとそうした穂先のコントールが難しくなります。書くために必要な力は入れつつ、首や肩はリラックスする。余分な力を入れないということですが、普段、筆ペンを持たない方にとって、これは本当に大変です。
あとは、速く書くイメージをお持ちなのか、慌てて書いてしまう方も多いです。ただ、ゆっくり書くのはコントールが難しく、手が震えてしまったりしますよね。これは緊張もありますが、筆ペンに慣れていないことが大きいです。まずは、筆ペンに慣れることが大切です。ご紹介しているウォーミングアップを、ぜひ行っていただきたいですね。
ご葬儀などは突然やってきますよね。だからこそ、のし袋や芳名帳に名前を書く、「いざ」というシチュエーションを、特別に感じないようにすることもポイントです。
ご自宅や会社に筆ペンを置いておいて、気づいた時にちょっと書いてみる習慣をつける。そうすれば、筆ペンで書くことが特別ではなくなります。また、のし袋は縦書きですから、縦書きに慣れておくことも大事です。ご自分の名前だけでも、縦書きで練習しておくといいですね。
画数の少ない字やひらがなは、小さめに書くこともポイントです。特に、お名前の一文字目が「日」など画数が少ない字の方は、後に続く字とのバランスを考えて、大きく書きすぎないように気をつけましょう。そのためにも、ご自分のお名前の字形を把握しておくことも大切です。中心に対して、どこから書き始めれば良いかも分かっていると、バランスが整いやすいですね。
レッスンにいらした生徒さんたちは、一様に「筆ペンは難しい!」とおっしゃいます(笑)。でも冠婚葬祭がきっかけで来られて、そのままレッスンを続けてくださる方もいらっしゃいます。難しいからこそ、頑張ってマスターしたいと思われるようです。
筆文字は、硬筆では表現できない、かすれやにじみ、筆圧の変化がすごく出やすいので、いろいろな表情を線に出せることが大きな魅力です。のし袋も、硬筆で書いたものと筆ペンで書いたものでは、字の迫力がぜんぜん違います。そういった部分も筆ペンの良さですね。
また筆ペンの書き方を知ることで、それを硬筆にも生かせるんです。例えば、先ほどお話した、はらいで穂が集まっていく感覚を、硬筆でも意識することで、ペン字のはらいも美しく整っていきます。
筆ペンで書けることは、希少価値が高いと思いますし(笑)、日本の伝統文化に触れるという意味でも、ぜひ取り組んでいただければなと思います。
基本の握り方は筆ペンも硬筆ペンも同じです。親指と人差し指でペンの軸を持ち、中指で下から軽く添えます。ただし筆ペンは、硬筆ペンよりも軸を立て気味にして持つのがポイントです。軸を寝かせると、穂先のコントロールが難しくなり、線も太くなりやすいので注意が必要です。
1.筆ペンの持ち方
筆ペンの持ち方と基本的な使い方を覚えましょう。
筆ペンは、持ち手を「軸」。先の部分を「穂」。先端を「穂先」と言います。文字を書くときは、穂の半分以内を使うことを心がけましょう。
親指と人差し指で筆の軸を持ち、中指で下から軽く添えます。手の平の中に空間をつくり、強く握りすぎないことが重要です。筆ペンは弾力があるため、ペンよりも少し立て気味にすると、穂先がコントロールしやすくなります。
難しい方は、反対の手を下に置いて書く方法もあります。
筆ペンには、いろいろな種類がありますが、今回は、もっとも毛筆に近く、とめ・はね・はらいが美しく表現できる「毛筆タイプ」を使用します。
2.ウォーミングアップ
筆ペンに慣れるために、さまざまな線でウォーミングアップをしましょう。
使用する紙は、ノートやコピー用紙がおすすめです。和紙はにじみやすく、慣れないうちは難しいので、まずは書きやすい紙で練習しましょう。
①横線と縦線
横線と縦線を書いてみます。
筆を沈める(力を加える)と穂が開いて線が太くなり、浮かす(力を抜く)と穂が閉じて細くなります。書き始めを軽く、真ん中で筆を沈めるイメージで書いてみましょう。
②横線・縦線以外の線
横線・縦線以外のさまざまな線の練習もしてみましょう。
手首に力を入れずに、前後左右に大きく動かし、筆圧や速度に変化をつけて書くと、線に表情が出てきます。
まずは横方向です。
次は縦方向です。
最後は円を描いていきます。
中心の〇の部分に力を入れて書きます。
ひらがなは、おもに曲線で構成されているので、このトレーニングはひらがなの練習にもなります。
3.基本の運筆トレーニング
基本的な筆の運び方を覚えましょう。
始筆は斜め45度の角度に筆を置きます。
送筆は穂先の通る位置に気をつけます。
終筆は軽く止めます。
漢字をかたちづくる上で重要な基本点画を練習していきましょう。
①横画
横画はやや右上がりに、親指で押す意識を持って書きましょう。穂先は線の上側を通るように書きます。
②縦画
斜め45度に筆を置き、人差し指で押す意識を持って書きましょう。穂先は線の左側を通るように書きます。
③折れ
横画を書いたら、一度止まって、軸を回さずにそのまま折れます。角は押さえすぎないようにしましょう。常に穂先の通る道を意識して書くことがポイントです。
④はね
縦画からはねを書いていきましょう。一度止めて、穂先の向きが左から上になるように、中指を意識してはねます。
⑤左はらい
ゆっくり筆ペンを動かして、穂が集まっていくことを意識しましょう。
⑥右はらい
書き始めは細く、徐々に力を加えたら、穂先を浮かせるようにして、右に水平にはらいます。
4.バランスのトレーニング
実際の漢字を使って、より実践的な練習をしていきましょう。
①横・縦・はらいを組み合わせた文字
「木」という字を使って、横・縦・はらいを組み合わせた文字を練習してみましょう。先ほどの運筆のトレーニングを思い出しながら、横画、縦画を書いていきます。
左右のはらいは、横画と縦画が交わった点から書き始めましょう。左はらいから、右はらいへ、気持ちを繋げて書くことも大切です。右はらいは横に流れていきやすいので、一度下に下がってから、右へはらいましょう。
次に「美」で練習してみましょう。
一画目の点は短く、二画目は右上がりの位置からゆっくりとはらいます。一画目の点が、三画目の横画に接しないように気をつけましょう。
横画が何本もある場合は、一本だけ長くすると、文字に安定感が生まれます。
左右のはらいは、書き始めの位置に気をつけましょう。
右はらいが苦手な方は、はらわずに止めて書く書き方もあります。その場合は、線に接しないように空間を空けて止めましょう。
②そり・はねを組み合わせた文字
「子」という字を使って、そり・はねを組み合わせた文字を練習しましょう。
一画目は、横画から中心に向かってゆっくりとはらいます。
二画目は、一度斜め右下に肩をつくり、そりながら(矢印)中心で止めてはねます。
最後の横画は、肩を通るように書きましょう。
③画数の多い文字
「藤」という字を使って、画数の多い漢字をバランスよく書く練習をしましょう。
草かんむりは、一画目の横画は長く、二画目はまっすぐ、三画目はやや右上がりの位置からゆっくりはらいます。
画数が多くなるほど、空間が大切です。筆を立て気味にして、穂先を使い、線の太さや長さに気をつけて書きましょう。
「月」は太くなりやすいので、はらいの方向に気をつけます。縦画が互いに背を向く「背勢」を意識してすっきり書きましょう。
5.のし袋や芳名帳に名前を書く練習
のし袋に名前を書く練習です。
今回練習した漢字を組み合わせた「藤木美子」という名前で練習してみましょう。
のし袋に直接名前を書くのが不安な方は、写真のような短冊が付いているのし袋を使うのがおすすめです。
一般的なのし袋の名前を書くスペースは、約8㎝です。
まずはノートやコピー用紙で練習しましょう。鉛筆で8㎝の中心線を書き、その中に名前を収める練習をします。
薄く名前の下書きをしてもいいでしょう。
後から消しやすいように、芯のやわらかい鉛筆を使うことがポイントです。
では、短冊に書いてみましょう。
短冊にも8㎝の中心線を書いておきます。
1枚は練習用として、インクのにじみ具合などを確認しながら、書いてみましょう。にじみやすい紙質が多いので、ある程度、運筆を速めることで、にじみを抑えることができます。
書き終えて十分に乾いてから、消しゴムで軽くたたくように、下書きの線を消したら完成です。
ワンポイントアドバイス
披露宴などで芳名帳に名前を書く際、立ったまま書くケースが多いと思います。立って字を書くのは思った以上に不安定なものです。立って字を書く練習も、ぜひ取り入れてみてください。
また芳名帳に書く際も、名前全体をイメージすることと、一文字目を枠の中心に書くことがポイントです。
- 智伊さん プロフィール
- ペン字講師。大人のためのペン字・筆ペン教室「the BASIC」主宰。
大学卒業後ピアノ講師として大手音楽教室に入社。5年間勤務後オーストラリアへ留学のため退社。帰国後は一般企業に勤めながら、長年続けていた書歴を生かし、2006年に東京品川区で書道教室をスタート。その後、ピアノ指導も再開する。2016年11月、横浜みなとみらいに大人向けの少人数制ペン字教室「the BASIC」を開業。現在ピアノ講師・ペン字講師の2足のわらじで活動中。
大人のペン字・筆ペン教室「the BASIC」ホームページ:http://www.thebasic-mm.com
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