今回はマタニティヨガをご紹介します。妊娠期の体の不調を和らげて、お産の時に必要な筋力や体力づくりができるメニューになっています。妊娠していない方や男性も、骨盤底筋や足腰の筋力強化ができ、尿漏れ、腰痛、むくみや便秘の改善が期待できますので、ぜひ続けてみてくださいね。
※ 周囲に障害物がなく、足元が安定した場所で行ってください。
妊婦さんは細すぎても太りすぎでも良くないですが、本当に細い人は最後赤ちゃんを産み出す馬力が弱く、産んだ後は余力がないため体へのダメージが強いんです。細くてもいいですが、ある程度筋肉をつけておかないと、産後回復に時間がかかるんです。
メンタルのトラブルを抱えている妊婦さんも、筋肉が大切です!程よい筋トレをすると、体だけでなく気分もスッキリしませんか?それは脳内からセロトニンという幸せホルモンが出るからです。体が整うことで、心も元気になっていきます。程よい筋トレという部分で、ヨガは妊婦さんにおすすめです。
呼吸を意識的にやるだけでも変わってくると思います。無意識に行っている自然呼吸はあまり筋肉を使わないですが、意識的な深い呼吸をすると、肋間筋や横隔膜などのインナーマッスルをじわじわと鍛えられます。また背中側にも意識を向けて深い呼吸を入れると、脊柱起立筋群もほぐれて柔軟性も期待できます。
お産の時も呼吸はとても大事です。人は痛みがくると防御反応で体が緊張して呼吸を止めてしまうので、息を吐くことで体が緩みます。痛かったら息を吐くことを覚えておくといいと思います。実際、マタニティヨガに通っていた方から、お産の時「痛かったら吐きましょう」と言われていたけど、自然とそうなっていた、陣痛が来た時の対処法などもヨガを通じて身についていたので、呼吸だけでなく自分でいろいろな姿勢が自然とできた、といった声を聞きます。出産に向けて妊娠中からヨガなどを取り入れて準備しておくといいですね。
動画をご覧になりながらヨガ行う時は、ご自分の呼吸の音に意識を向けて、お腹の赤ちゃんと楽しんでください。ヨガをすると赤ちゃんがすごく動くんですよ。ママが深く呼吸をできれば、赤ちゃんにも新鮮な空気、酸素が伝わってよろこんで動くみたいです。やっぱりママが心地いいと、赤ちゃんも心地いいので、完成形を求めるのではなく、ご自身の気持ちいい場所、呼吸が深く入る場所を探して行ってほしいと思います。
ご紹介しているメニューの中には、陣痛の最中に取り入れていただけるものもあります。陣痛の最中も動いていいのですが、動いちゃいけないと思っている方が多いんですね。でもベッドでじっとしていると、痛みにばかり集中してしまい、余計に痛く感じてしまいます。陣痛=怖いと思うのではなく、陣痛=赤ちゃんが産まれてくる波と思って欲しいです。陣痛がないと赤ちゃんは産まれてこないので、うまく陣痛を乗り越えることが大切です!必ず痛くない時があるのでそこで休んで、痛い時はまず息を吐いて深呼吸を繰り返しその波を乗り越える。その一つひとつが、赤ちゃんと会うための波なんだよっていうことを、お伝えしたいですね。
ご紹介しているヨガは、妊婦さん向けではありますが、もちろん妊娠していない方や男性も行っていただけます。背骨がほぐれることで腰痛改善になったり、腕のだるさが和らいだり。肩甲骨を広げて肩周りをほぐす動きもありますので、デスクワークの方にいいですね。
それと、日本人は一生懸命な方が多いですよね。一生懸命だと気持ちが前に前に向いているので姿勢も前傾姿勢になります。そうすると背中も凝り固まってしまいます。日本人は休むことが苦手な人が多いです。休むことをしないで、限界までがんばって電池が切れたようにパタンってなってしまうことが多いので、1日3分だけでも横になって何も考えずに、ただただ体の力を抜いてみてほしいですね。案外、体の力って抜けないんですよ。力を抜く練習は、出産時も役に立つのでおすすめです。
動画ではご紹介していませんが、ヨガの片鼻呼吸(ナディーショーダナ)は、妊婦さんだけでなく、ぜひ万人に(笑)していただきたいです。
ヨガでは吸う息で酸素を取り入れるだけでなく、生命エネルギー(プラーナ)を体の隅々まで届けありがたさを感じ、吐く息で老廃物や炭酸ガスを出すという考え方があります。また体内にあるエネルギーの通り道をナディーと言い、特に主要な道が、スシュムナー、ピンガラ、イダーの3本です。かなり奥深い話なので、詳細は割愛しますね(笑)。
スシュムナー・ナディーは、体の中心・脊柱を貫くように上昇していくとされています。猫背だとスシュムナー・ナディーが曲がりエネルギーの流れが滞ってしまうので、背筋を伸ばすことが大切です!
ピンガラ・ナディー(右鼻)は、陽のエネルギーを司り、交感神経、左脳を活発にすると言われていて、体を温め活気を与えます。
イダー・ナディー(左鼻)は、陰のエネルギーを司り、副交感神経、右脳を活発にすると言われていて、リラックスを促し体温を下げる機能があるとされています。
片鼻ずつ呼吸することで自律神経が整っていくので、季節の変わり目や体調がイマイチだなという時などに行うとより効果的ですよ。朝起きて行うと1日の活力が増し、仕事の効率アップが期待できますし、夜寝る前なら精神が落ち着き睡眠の質もアップします。ぜひ行ってみてください。
頭痛や不眠、高血圧の方にもおすすめ!片鼻呼吸のやり方
あぐらで座ります。どちらの足が前でも構いません。
左右のかかとと、おへその中心軸を合わせて、背筋を伸ばします。
- 右手の人差し指と中指を曲げます。
- 左手は親指と人差し指で輪をつくり、他の指3本は揃えて伸ばし、ひざに置きます。
- 右手の親指で右の小鼻を押さえ、左の鼻から息を吐きます。
- 左鼻から息を吸って、薬指で左鼻を押さえ息を止めます。
- 親指を離して右鼻から息を吐きます。
- 今度は右鼻から吸って、親指で右鼻を押さえ息を止めます。
- 薬指を離して左鼻から息を吐きます。
これを1セットとして7セット繰り返します。時間がなければ3セットや5セットでもOK。
快適な妊娠期を過ごすために、医師の許可を得たうえで、安定期に入る妊娠16週以降であれば、いつ始めていただいても大丈夫です。
マタニティヨガの原則は、腹部を
① 圧迫しない ② 負荷をかけない ③ 伸ばしすぎない。
食後や入浴後すぐは避けて、途中でお腹が張ってきたり、気分が悪くなったら、すぐに中止して安静に横になってください。呼吸を止めないように意識して、無理をせずご自分のペースで楽しみながら行いましょう。
1. ウォーミングアップ
まずはウォーミングアップで、背中と腕、手首をほぐしていきます。
四つ這いになり、手の平はパーで肩の下に手首をつきます。
足は腰幅に開き、足のつけ根の下にひざがくるようにします。お腹が大きい方は足幅をマット幅ぐらいまで広げて赤ちゃんのスペースをつくっていきます。
つま先を立てます。手首を返して、指先をひざの方に向けます。
腕の伸びがきつい方は、手をつく位置をひざに近づけると負荷が弱まります。ひざが痛い時は、ひざの下に畳んだバスタオルを敷きましょう。
息を吸いながら顔をあげて、背筋を伸ばしながら胸を開きます。
この時、腰を反りすぎると腰痛の原因になるので、腰が反りすぎないように注意しましょう。
息を吐きながら、お尻をかかとの方へ近づけて、おへそをのぞき込むように頭を下げます。
肩甲骨を左右に広げ、頭は腕の間にしまうように。
腕の前側を伸ばし、脊柱の動きが良くなり背中がほぐれます。
この動きを5回程度繰り返します。
赤ちゃんをあやすように、ゆっくり呼吸をして繰り返しましょう。
背中と腕・手首を同時にほぐして、背中や腕のだるさを和らげます。背中のコリや腰痛の軽減にも効果的です。また手首は、腸の反射区でもあり、便秘の改善も期待できます。
2. 四つ這いのヒップサークル
次は、四つ這いのヒップサークルで、背骨と骨盤を調整し、腰痛を改善していきましょう。
四つ這いで、手の平はパーで指先は前、肩の下に手首、足は腰幅で足のつけ根の下にひざがくるように。お腹が大きい人は足幅をマット幅ぐらいまで広げて赤ちゃんのスペースをつくります。つま先は寝かせておきます。
手首に痛みがある方は、四つ這いで手をグーにしてつくか、マットにひじをついた体勢で、ひじの下にクッションやバスタオルなどを敷いて行っても構いません。
呼吸に合わせてお尻で大きな円を描きます。
一度息を吸って、吐く息で右後ろに、吸う息で左から前へ。
5回程度、回します。
左回しも同様に行います。
終わったら、お尻をかかとに置きチャイルドポーズでリラックスしましょう。
目を閉じながら呼吸に意識を向けて繰り返します。赤ちゃんとのつながりを感じて、一体感を味わいましょう。赤ちゃんをゆらゆら揺らしてあやしているようなイメージです。
腰から背中の緊張がゆるむことで、背骨と骨盤のバランスが整い、背中の疲労回復や腰痛改善につながります。この動きは、陣痛の時に行うと少し痛みが和らぐ効果が期待できます。四つ這いになることで、重力で赤ちゃんがママの背中側を向くので、赤ちゃんが正しい回旋へとつながります。
3.立位のヒップサークル
続けて、立った姿勢でのヒップサークルで、さらに骨盤と大腿骨の動きをなめらかにして、足のむくみや腰痛を改善していきましょう。
足を肩幅くらいに開き、安定する位置で立ちます。 両手を赤ちゃんのいるお腹にやさしく当てます。
呼吸に合わせて、腰で円を描きます。
一度息を吸って、吐く息で右後ろに、吸う息で左から前へ。
ひざは突っ張らずに軽く曲げ、足の付け根がほぐれるように回していきましょう。
ゆっくり5回程度、回します。
呼吸に合わせて腰をゆっくりと回します。
はじめは小さく、徐々に大きく回します。
左回しも同様に行います。
赤ちゃんとの一体感を味わいながら、赤ちゃんをあやすように行っていきましょう。
骨盤の動きがスムーズになり、姿勢の調整や腰痛予防に効果的です。
この動きは、陣痛時の痛みのがしの練習としてもおすすめです。場所を取らずいつでも気軽に行え、赤ちゃんとの結びつきもアップさせてくれます。
4.椅子を使ったワシのポーズ(ガルダーサナ)
次は、椅子に座って行うワシのポーズで、骨盤底筋を強化してスムーズな出産に導きます。
椅子に浅く座り、右足を上にして足を組みます。
右足の甲を左足のふくらはぎにからめます。
難しい方は、からめなくてもOKです。
左手で右肩、右手で左肩をつかみます。
腕を交差させたまま肘を伸ばし深くクロスさせてから肘を曲げ、腕を絡めて両手の平を顔の前で合わせます。手の平同士が難しい方は、手の甲同士を合わせましょう。
胸が大きくなって手を交差するのが難しい方は、両肩をつかんだ状態のままでもOKです。
ひじを胸の高さまで上げます。手は顔から離し、肩と耳を遠ざけます。手首がひじの真上にくるように。息を吸って背筋を伸ばします。
次の吸う息で肩と耳を遠ざけ、内もも同士をキュッと寄せ膣を締めます。
吐いて緩めましょう。
これを5回程度繰り返します。
反対側も同様に行います。
全身を中央に集めて骨盤底筋を強化していきます。骨盤底筋を鍛えることで、スムーズな出産に導くとともに、産後の尿もれ対策にも役立ちます。
背中周りの血流がよくなり、肩や背中のこりをほぐします。腕や足のむくみの改善にもおすすめです。
5.椅子を使った戦士のポーズ(ウォリアー2)
次は、椅子に座って行う戦士のポーズで、出産に必要な足と腕の筋力を養いましょう。
体を右に向けて椅子に座ります。
右足はそのまま、左足は左側にまっすぐ伸ばします。左のつま先は少し内側に向け、足裏全体が床につくようにします。
右ひざはつま先の方向に向けて、ひざがかかとより前に出ないように。左足をしっかり踏み込むことで左足のつけ根が伸びます。
お腹には力を入れないように、両足をしっかり踏み込み、息を吸って両手を横に開き、肩の高さまで上げます。
吐いて目線を右の指先に向け肩の力を抜いて、指先同士を遠ざけます。
そのままの姿勢で、呼吸を5回程度繰り返します。
反対側も同様に行います。
吸う息で背筋を伸ばし赤ちゃんのスペースを広げ、吐く息ごとに腕が長くなるイメージです。
全身を活性化させ、腕力と脚力がUPします。肋骨が骨盤から持ち上がることで子宮のスペースが広がります。股関節を柔軟にしておくことで、お産の時の体位で産道が広がりやすくなりスムーズなお産へと導きます。この動きは、足を踏み込み土台をどっしりすることで、出産への決意が強まります。
6.花輪のポーズ(マラーサナ)
次は、花輪のポーズで、足のむくみやだるさを改善しましょう。
ただし、妊娠32週以降で逆子の方は行わないでください。
お腹が大きくなるとバランスを崩しやすいので、後ろに転ばないよう壁を背にして行ってください。畳んだタオルケットやバスタオルを何枚か足元の後ろに置いておきます。
足を肩幅くらいに開きます。
両手を赤ちゃんのいるお腹に添えます。
一度息を吸って、吐きながら、ゆっくり腰を下げていき、お尻を下まで下ろします。
この時、ひざとつま先の方向は揃えます。
辛い方は、タオルケットやバスタオルにお尻を下ろしても構いませんが、足裏全体はしっかり床を踏み込みましょう。
胸の前で合掌し、両ひじと両ひざで押し合いをします。両足を踏み込み、股関節から内ももが伸びるのを感じましょう。
目を閉じ、呼吸を5回程度繰り返します。
下半身の血行が促され、足のむくみやだるさを軽減します。股関節を柔軟にして、お産のイメージをつくっていきましょう。この動きは、骨盤底筋のストレッチと足首の強化にも効果的です。
7.シャバーサナ
最後は、シャバーサナで、心を静めましょう。
マットの上に仰向けで寝ます。
妊娠後期に入ってきて仰向けが辛い方は横向きになりましょう。
左向きでも右向きでもOKです。
横になった時にお腹の重みで皮膚が痛む方は、お腹の下にバスタオルをかませましょう。
楽な姿勢で、数分間休みます。
- 柴田真希さん プロフィール
助産師、ヨガインストラクター、看護師、保健師、均整動術師(整体師)。
聖隷クリストファー大学卒業。臨床経験を経て看護教育に携わる。その後、ヨガの世界に魅了され3年間タイ王国チェンマイへと何回も渡り学びを深める。臨床現場、大学教育、マタニティヨガ、マタニティ以外のヨガなど多岐に渡り活躍中。障がい児支援施設、高齢者通所介護施設の通信「健康たより」執筆や、クックパッドベビー「マタニティヨガ」の動画出演・監修も担当。現在はフリーの助産師兼ヨガインストラクターとして活動し、出張整体(フェムケアも含む)も行っている。女性のヘルスケアや妊活カップルへの専門家として精力を注いでいる。
Instagram:@MAKY_MYMW_HEALTH
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また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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