今回のゲストは、ファッションデザイナーとして国際的な活躍を続けるいっぽう、テレビや雑誌で辛口の”ファッションチェック”を披露し、お茶の間でも大人気のファッションデザイナー、ドン小西さん。
鮮やかな色づかいが特徴的な彼のブランドは、芸能界の大御所、北野武さんやGacktさんをはじめ、海外ではエルトン・ジョンさんやスティングさんなどにも愛用されているのだとか。
「ファッションは人間の”包装紙”」といい切るドン小西さんに、人を輝かせるファッションの極意を語っていただきました。
(取材:2009.12)
ポイントとしていることは何ですか?
洋服の色とか形とか、そんなディテールよりも、「この人はどういう人間か」ということを、僕はファッションから見抜くね。
その人の生い立ちから、生き方、今置かれている環境まで、すべてのコンディションがファッションに出るんです。僕はそこを見る。そのうえで、その人に合ったファッションを提案するんです。
だって、いくら大胆で派手なモチーフが世の中で流行っていたとしても、大人しくて控えめな人がそれを着たって似合わないからね。
よく、女性ファッション誌に載っているような『1週間着回しコーデ』なんかをそっくりマネして着ている人を見かけるけど、その人の個性に合ってなければ、ぜんぜんカッコよく見えない。結局、自分自身を分かっていない人が多いんだよね。だから僕はファッションからその人の内面を見抜いて、「あなたはそうじゃないでしょ、こっちでしょ」と、本来のその人に合ったファンションを提案するようにしてるんです。
自分に似合うファッションを見つけるには、どうしたらいいんでしょうか?
自分に似合うファッションを見つけるためには、まず自分自身を知らなきゃダメ。ファッションはその人を包む”包装紙”みたいなものだから、小手先だけのハウツーを学んだって、その人が持っている本物の味は出せないよ。
たとえば、産地直送の新鮮な有機野菜をラッピングするんだったら、いかにもみずみずしくて透明感のある包装紙を使うでしょ?逆に、老舗名店の和菓子なら、落ち着いてしっとりとした趣のある包装紙を使う。つまり、中身を引き立たせるような包装紙を選ぶんですよ。冷凍物の商品なのに、いかにも「新鮮!採れたて!」を強調するような包装紙を使っていたら詐欺になっちゃうから。(笑)
ファッションもそれと同じで、自分に似合うファッションを見つけたいなら、まずは「自分はどういう人間なのか」、「どう生きていきたいのか」をしっかり見極めること。まず、そこからだと僕は思うよ。そのうえで、自分の個性を引き立たせてくれるようなアイテムを選ぶ。
だから極端な話、「私はファッションなんてまったく興味ありません」という人がいたっていいし、「化粧する時間がもったいないから、ずっとスッピンでいる」という人がいたっていいわけ。それがその人自身なら、魅力を感じるはずだから。
どうやったら、自分を知ることができ、センスアップにつなげられるんでしょうか?
たしかに30~40代になっても、自分のことを分かっていない人は多いよね。自分を知るために、ひとつ良い方法があるよ。まず、スケッチブックを一冊用意する。ページを開いて、左側には「自分に対して腹が立ったこと」いわゆる”短所”を挙げる。そして右側には、「私ってここがすごいわ!」という”長所”を挙げる。
どんな小さいことでも構わないから、いくつでも思いつくままに書き出すの。その作業が終わったら、しばらく左と右の項目をじっくり見比べてみる。すると、自分がどういう個性を持った人間なのかよく分かってくるよ。
大切なのは、左側に挙がった短所をけっして直そうとしないことだな。若いうちならまだしも、人間30歳を過ぎたら、短所なんて直りっこないんだから。(笑)
スケッチブックを見ながら、短所をいかに魅力に転換するか、そして長所をいかに引き立たせていくか、を考えるわけ。
たとえば、「太っている」ってことを短所に挙げたとするよね。そしたら、「太っている」ことをいかにチャーミングに見せるかを考える。僕はよく、太っている人には「ボーダーのTシャツを着てごらん」ってアドバイスする。だって、コロコロしてかわいいじゃん。(笑)
痩せる努力をする気もないのに、洋服だけでカバーしようするのは甘いよ。だったら、「私は太っているけどチャーミングでしょ」って堂々としている方が素敵。自分を偽っちゃダメ。男性でも女性でもそれは同じです。
一見、短所に思われるところを、どう魅力に変えていくか。それがその人の個性だからね。みんな同じじゃつまんないでしょ! その点を考えて、自分を見つめ直してほしいね。
- 【プロフィール】 ファッションデザイナー/ドン小西さん
- 1950年三重県津市生まれ。1981年フィッチェ・ウォーモ設立後、「FICCE」「YOSHIYUKI KONISHI」「d.k.f」などのブランドを主宰。北野武さんやGacktさんはじめ多くの芸能人からも支持を受け、ファッション業界で独自の地位を確立する。NYやミラノなどでもコレクションを発表し、国際的にも高い評価を受けている。現在は、テレビ・雑誌などでタレントとしても活躍中。さらには、名古屋学芸大学客員教授として後進の育成にもあたっている。
主な著書:『ドン小西のなんでもチェック!』(アップオン出版)『部長!ワイシャツからランニングがすけてます』(朝日新書)