第3回 後編 遠藤 拓郎 さん (医学博士 スリープクリニック院長)
今回のゲストは、世界一の「睡眠の専門医」として、テレビに雑誌にと引っ張りだこの遠藤拓郎先生。
近著の「4時間半熟睡法」は、発売から間もなく7万部を超えるベストセラーとなるなど、不眠や睡眠不足に悩む方々から絶大な信頼を集めています。
後半では、忙しくて睡眠時間が短くても「美と健康」を保つための睡眠のコツや、寝具の選び方についてお聞きしました。
(取材:2009.7)
―働き盛りのお父さんはもちろんのこと、育児や家事に忙しい主婦の方々は、なかなか睡眠時間が確保できません。そんな忙しい方でも、良質の睡眠を確保するコツはありますか?
- 本来は、もっともホルモンが分泌されやすい0時~6時をコアタイムとして、毎日6時間半~7時間の睡眠をとることが理想です。 とはいえ、忙しい毎日の中で、これだけの睡眠時間を確保することは難しいですよね。とくに女性の場合は、身支度を調える時間や、家事・育児にかかる時間が多いため、同年代の男性と比べると睡眠時間が短くなりがちです。
そこで私がオススメしているのが、”4時間半熟睡法”です。人間は、睡眠時間が3時間にまで減ってしまうと、車の運転やキーボードの入力といった視覚関連の動作でミスを犯しやすくなるため危険です。”4時間半”は、無理なく日常業務を遂行するために必要最低限の睡眠時間というわけなのです。
―女性が「美と健康」を保つために心がけておくべき睡眠の極意があれば教えてください。
- 残念ながら、女性も男性も、年齢を重ねれば重ねるほど”睡眠の質”は低下していきます。
若いころは、いくらでも眠れたのに、「最近すぐ目が覚める……」と感じていらっしゃる方は多いでしょう。しかし、赤ちゃんの肌質を大人になってからも維持できないのと同じように、睡眠の質も若いころのまま維持し続けるというのは難しいことなのです。
睡眠の質が落ちると、美と健康を保持してくれる”成長ホルモン”や、脂肪をエネルギーに変えてくれる”コルチゾール”が分泌されにくくなるため、肌の衰えが目立ってしまったり、太りやすくなったりします。
こうした悪循環を断ち切り、いつまでも「美と健康」を保ち続けるためには、”睡眠の質”を上げていくことが大事なのです。
―年齢を重ねても、睡眠の質を上げていくには、何が必要なのでしょうか?
- まずは、上質な睡眠をとるために欠かせない”寝具”を見直すことが先決です。
たとえば、敷きふとんは疲れた体をやさしく支えるものですから、吸湿性があって、しっかりとしたクッション性のあるものが良いでしょう。
また、掛けふとんは、軽くて吸湿性のある”羽毛ふとん”がオススメです。温度調節しやすいので、冬でも夏でも快適な床温度を保ってくれるからです。
次に大切なのが、寝具以外の寝室環境。とくに大切なのは、”照明”です。眠りを誘うメラトニンという物質は、明るい場所では分泌されないので、午後9時を過ぎたら室内全体を薄暗くし、オレンジ系の間接照明にするのが好ましいでしょう。
眠るときの室内温度は、夏場は27度~29度、冬場は18度~20度を目安にしてください。
「エアコンは苦手……」という方も多いと思いますが、夏場はドライモードにして湿度を50%くらいにまで下げてあげましょう。湿度が高いままでは、汗が蒸発せず体温が下がらないため、なかなか眠りにつくことができません。
最後に、寝室の”音”です。本来は、無音が好ましいのですが、中には無音にすると不安になる方もいらっしゃいます。その場合は、わざと音の大きな時計を設置したり、単調なリズムの音楽を小さく流しておいたりすると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか? 年齢とともに”睡眠の質”は低下してしまいますが、ちょっとした工夫を重ねることで、快眠をキープすることができます。これであなたも、「美と健康」を手に入れることができますよ!
- 【プロフィール】 医学博士。睡眠医療認定医師、精神保健指定医/遠藤拓郎さん
- 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院医学研究科修了、スタンフォード大学、チューリッヒ大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。東京慈恵会医科大学助手、北海道大学医学部講師を経て、「スリープクリニック調布」および「スリープクリニック銀座」を開設、院長を務める。
主な著書:『4時間半熟睡法』(フォレスト出版)、『6分半で眠れる!快眠セラピーCDブック』(フォレスト出版)
スリープクリニック調布・銀座 http://www.sleepmedicine-tokyo.com/index