羽毛ふとん研究室
羽毛博士翔Kakeru
vol. 2羽毛のメカニズム
羽毛ふとんは、なぜ温かいのでしょうか?
ダウンとフェザーには、どのような違いや役割があるのでしょうか?
今回は羽毛のメカニズムや、その特性が羽毛ふとんにもたらすメリットについてお話しいたします。
ダウンが生えている鳥は〇〇だけ
羽毛ふとんの品質表示を見ると、「ダウン〇%、フェザー〇%」などと書かれていますね。これは鳥の羽には、ダウン(綿羽)とフェザー(羽根)の2種類があるからです。
と、ここまではみなさんよくご存じだと思います。では、どんな鳥にもダウンとフェザー、両方の羽が生えていると思いますか?正解はNO。実は、ダウンは水鳥にしか生えていません。他の鳥の羽根にも、根元にふわふわとしたダウンのような毛がついてはいますが、羽根とは別に単体でダウンを持っているのは水鳥だけなんですね。
ガン科やカモ科の水鳥は、基本的に渡り鳥ですから、遥かかなたの越冬地に向かって、気温マイナス40℃とも言われる極寒の上空を飛んでいきます。その飛行時の寒さから身を守るために、ダウンが必要になったと考えられています。
ダウンで保温し、フェザーで風を遮断
ダウンは、水鳥の体の大部分に生えていますが、風の抵抗を受けやすい胸の周りに、もっとも多く生えており、その表面を羽根が覆うことで、風を遮断して熱が逃げるのを防いでいます。いわば、ダウンが肌着で、フェザーがセーターやコートのような役割を果たしています。ダウンの大きさは、体の大きさに比例して、大きかったり小さかったり、個体差があります。また体のどの部位に生えているかによっても、少しずつ大きさが異なります。
一方、野生の鳥は風雨にさらされることもありますし、特に水鳥は水上で生活していますので、羽根には水をはじく効果があります。蓮の葉を思い浮かべてみてください。葉の表面をコロコロと水滴が転がっていきますよね。あのような感じです。尻尾の近くから油を出し、それを羽づくろいしながら体に塗ることで、撥水させているのです。
空気という断熱材で保温する
羽というと、「赤い羽根共同募金」で使われるような形状のものを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、羽は羽でもダウンは、ダウンボールとも呼ばれるように球状です。タンポポの綿毛をイメージしていただくといいでしょう。
中心軸(羽軸)から羽枝(うし)という細い毛が何本も生えていて、羽枝の表面にはさらに細かい小羽枝が生えているので、羽枝同士が絡み合わない構造になっているため、ふんわりと空気を抱えたボール状を保っています。
この抱え込んだ空気によって、ダウンは保温性を発揮します。空気は非常に優秀な断熱材ですから、外気と体の間に、ダウンによって体温で温められた空気の層ができることで、水鳥は寒さから身を守っているのです。
吸湿放湿性が良いのはナゼ?
羽毛ふとんは、吸湿放湿性に優れている点も特長です。その理由は、もちろんダウンにあります。上でお話ししたように、ダウンは何本もの羽枝が束になってできており、それぞれの羽枝はさらに細かい小羽枝が多数発生しています。そのため表面積が大きく、たくさんの水分を吸着することができます。
また、羽枝と小羽枝はとても細くて無数に存在しますから、表面につく水分の粒も非常に小さくなります。水の粒が小さくなれば、その分、気化も早まり、発散性が増すというわけです。羽毛がたくさんの水分を吸いつけ、すばやく蒸発させる。これが羽毛ふとんの吸湿放湿性の良さの秘密です。
フェザー(羽根)の意外な役割
ダウンには、おふとんに欠かせない保温性や吸湿放湿性がありますが、羽根にはどのような役割があるのでしょうか? ダウンほどではありませんが、もちろん羽根にも保温性があります。しかし、もうひとつ大切な役割があります。弾力性の保持です。
水鳥のフェザーは、ダウンに比べて丈夫で、またカールしているので弾力性があります。おふとんにダウンとフェザーを混ぜて入れることで、フェザーの弾力性によって、ダウンがつぶれることを防ぐとともに、ふんわりとした掛け心地を生み出しているのです。
フェザーは、掛けふとんだけでなく、敷きふとんや枕にも多く使われています。体の圧力がかかる商品では、丈夫さとクッション性というフェザーの特性がより一層、活かされています。
「綿羽(ダウン)」と「羽根(フェザー)」。呼び名は似ていますが、それぞれには異なる特長があり、寝具作りにおいて欠かせない役割があることが、お分かりいただけましたでしょうか? 次回は、良いおふとんを見極めるポイントなど、羽毛ふとんの価値や品質についてお話ししたいと思います。お楽しみに!