今回は、寝た姿勢から気軽に始められる全身痩せピラティスをご紹介します。体幹のインナーマッスルを鍛えることで全身を引き締め、美しい姿勢を目指します。また自律神経の働きを整え、インナーマッスルや褐色脂肪細胞を活性化することで、痩せやすく太りにくい体がつくられますので、ぜひ続けてみてください。
※ 周囲に障害物がなく、足元が安定した場所で行ってください。
ピラティスでは、骨盤底筋群を床、腹横筋を壁、横隔膜を天井、多裂筋を柱と「家」に例えて、「パワーハウス」と呼んでいます。この4つの筋肉は、姿勢保持や内臓活動、代謝を整えるために大事なコアとなる、腹腔(肋骨から下のおなかの部屋)の圧力を保つために必要で、また協働性があるとされています。
腹腔の圧力が保たれているとは、背骨が適度なS字カーブをしていて、4つの筋肉に弾力があり、お腹がコルセットを巻いたようにスポンと筒になっている状態です。猫背姿勢や長時間の座り仕事による反り腰などで腹空がつぶれて狭くなっていると、内臓の働きが低下したり、血流などが滞ってむくんだりといったことが起きてしまいます。
普段使いすぎている筋肉をOFFするためには、使っていない筋肉を目覚めさせる必要があります。今回は、普段弱くなりやすいところを目覚めさせる動きをご紹介しています。不活性なところが少ないほうが、活動による代謝が上がり、全身の流れが整います。パワーハウスのどのエリアも使う“厳選メニュー”なので(笑)、ぜひ全部の動きをまんべんなく行ってほしいです。
食べ過ぎているわけでもないのに痩せないといった場合、代謝が落ちているかもしれません。同時に、自律神経の乱れや、睡眠の質の低下による脂質・糖の代謝の低下、ストレスがうまくコントロールできないことによる脂肪の蓄積が進んでいることなども考えられます。
ピラティスの呼吸や動きを続けていただくと、パワーハウスの働きが整い、中でも呼吸は自律神経の調和がとれた状態に導いてくれます。交感神経と副交感神経、どちらか一方に傾き過ぎるのはよくありません。体を丸める動きはリラックスして副交感神経を優位にし、体を反らす動きは交感神経を優位にするとされています。丸めたり反ったりして弛緩と緊張を繰り返すことで、交感神経と副交感神経の切り替えを改善していくことができます。
ダラダラしがちな副交感神経優位型の方には、ご紹介している体を反らす動きの「スワン」がおすすめです。イライラしがちな交感神経優位型の方には、体を丸める「チャイルドポーズ」や「スモールロッキング」がおすすめです。安眠効果も期待できるので、寝る前に行っていただくのもいいですね。
人間は食事などを食べすぎてカロリーを余分に摂取することなどによって、体に脂肪をためこんで肥満になります。このぜい肉となる脂肪を「白色脂肪細胞」と言います。一方「褐色脂肪細胞」は、筋肉のような働きをして白色脂肪細胞を燃焼して熱に変換し、消費カロリーを増加させるのです。ダイエットの味方である褐色脂肪細胞は、体に存在する数が少なく増えることはありません。そのため、刺激を与えて活動を活発にする必要があります。
褐色脂肪細胞は、背中の肩甲骨の周辺や脇の下などにあります。腕をしっかり使うトレーニングで痩せたという話がありますが、肩甲骨周辺をよく使って褐色脂肪細胞が刺激されたから、という説があるほどです。褐色脂肪細胞を味方につけて、働きを活性化させることがおすすめです。
ピラティスは自分と仲良くなる道具です。30回で人生が変わると言われています。気長に「気持ちいいな、好きだなこの動き」と思うものから行ってみてください。ガシガシ筋トレのように動くよりも、さび付いた体をメンテナンスするように、丁寧に動きを行ってください。「丁寧に行う」ということは「体に感謝をする」ということです。「丁寧に行う」時間を積極的に持つと、自律神経が整います。体と自分が仲良くなれます。
情報が外にありすぎるので、多くの方は自分の体の声を聴けていないのではないかなと感じます。太りやすくなってきた、疲れやすくなってきた、なんだかずっとモヤモヤするなど、「なぜだかわからない不調」は、体からの「SOS」かもしれません。私は、自分の体を大事にすることができる人が増えれば、世の中は今よりもっと素晴らしいものになると考えています。深い呼吸とともに、自分に優しく、みなさまの毎日が少しでも心地いいものとなりますように!
1.チェストオープナー
まずは、痩せやすい体づくりに重要な呼吸を整えます。
胸を開いて、呼吸できるスペースをつくっていきましょう。
バスタオルをご用意ください。
仰向けになり、肩甲骨の下に丸めたバスタオルを置きます。
ひざを立て、つま先はまっすぐ前に。足の幅はこぶし1個分開けます。お尻とかかとの距離は、足のサイズの1.5倍ほど開けておきます。
両手を頭の後ろに添え、息を吸って、一度胸を開きます。猫背などで固まった胸椎をしっかり開くことで、深い呼吸ができるようになります。 首や肩の余分な緊張もほぐれて肩こりや首こりの改善も期待できます。
口から吐きながら、おへそを覗き込むように上体を起こします。
首を曲げるのではなく、頭は遠くに残すイメージで、背骨を伸ばしながら丸めていきましょう。
首や背中の上部、肩は力み過ぎないように注意しましょう。
息を吸いながら、ゆっくり元の姿勢に戻ります。
この動きを5回程度行いましょう。
呼吸を整えることで自律神経が整い、痩せ体質につながります。
この動きは、血流が改善され、全身に酸素や栄養が行き渡るので、ターンオーバーを促して美肌効果も期待できます。また、背骨を調整して、美しい姿勢づくりにも役立ちます。
2.スモールロッキング
次は、インナーマッスルを鍛えて、ポッコリお腹を改善していきます。
仰向けになり、ひざと股関節を90度に曲げて、つま先は伸ばします。
両手をももの後ろに添えて、ももと手を押し合うように力を入れます。
息を吸って、吐きながら背中を丸めます。
背筋の深層にある多裂筋を意識して、内側から背骨と背骨の間を広げていくイメージです。
ももと手を押し合う力を使って、体を小さく小さく揺らします。
肩と耳の間は長く保ち、首が前にいきすぎないように注意します。
腰まわりでマットを押す感覚を感じて、横隔膜も活性化していきましょう。
骨盤を後傾にして引き上げ、丸くした背中を床面でほぐすように揺らしましょう。
腹筋運動のようにお腹のアウターマッスルを使うのではなく、インナーの腹横筋を使ってお腹は薄く保ちます。
呼吸はしっかり骨盤の中から吐き切ることを意識しましょう。
1~2分程度行いましょう。
股関節の機能が低下すると、内臓が下がり、ポッコリお腹の原因になってしまいます。手と足を押し合うことで、股関節周りが使われ、ポッコリお腹の改善につながります。
反り腰の改善にもおすすめです。
3.腸腰筋バウンス&ツイスト
次は、脂肪の代謝を上げる褐色脂肪細胞を刺激して、全身を引き締め、痩せ体質をつくりましょう。
四つ這いの姿勢から、片足を手の横に置き、反対の足はつま先を折り曲げて後ろに伸ばします。
この状態で体を上下に揺らします。
呼吸はスッスッ・ハッハッと2回吸って2回吐きます。
息をお腹の中から吐き切るように行うと、横隔膜からほかの筋肉にも働きの連鎖が伝わり、インナーマッスルが活性化していきます。
※背中が丸まってしまう方は、ひざをついた姿勢で行っていただいてもOKです。
背骨と前ももが伸びる姿勢で行いましょう。
10セット程度行いましょう。
上半身と下半身をつなぐ腸腰筋を動かすことで、下半身の血流を促して、代謝もアップしますので、痩せやすく太りにくい体づくりに効果的です。むくみのケアにもおすすめです。
続けて、前に出した足と反対側の手を天井に持ち上げて上体を捻ります。
息を吸いながら腕を頭の方に上げ、吐きながらお尻の方に下げます。
吸ってアップ。吐いてダウン。
腕や背中を動かすことで、背中や肩甲骨周辺にある脂肪の代謝を上げる褐色脂肪細胞が刺激されるので、しっかり動かしていきましょう。
この動きを10回程度行いましょう。
今度は、逆の手をゆっくりと天井の方にツイストしながら持ち上げ、小さく扇ぐようにパタパタと振ります。
スッスッ、ハッハッの呼吸です。
背骨のしなやかさを取り戻して、肩甲骨あたりのこりをほぐしていきましょう。
呼吸とともに動くことでインナーマッスルも活性化していきます。
10回程度行いましょう。
この動きは、歩く時に必要な背骨をツイストさせる動きが向上して、美しい歩行にもつながります。歩く時にツイストできていないと、体が横に振られて、太ももの横が張り出したり、腰周りに浮き輪肉がついたりする原因になりますのでしっかりツイストしましょう。
一連の動きを反対側も同様に行います。
4.スワン
次は、二の腕や背中の引き締めに効果的なエクササイズです。
うつ伏せになり、両手は軽くひじを曲げて前に伸ばします。
足は骨盤幅に開き、親指は平行に揃えます。
骨盤は少し後傾になるように、おへそを床から少し持ち上げて、お腹を引き締めておきます。
一度息を吐いて、吸いながら、手を手前に引き寄せるように床を押して、起き上がっていきます。
マットを横から手前へと引き裂くように力を入れるのがポイントです。
背面と二の腕の筋肉を意識して背骨をしっかり反らします。
息を吐きながら、背骨を伸ばし続けることを意識して、おへそ・胸・顔と順番にうつぶせに戻ります。
骨盤は少し後傾で、おへそを床から少し持ち上げお腹を引き締めた状態を保ったまま繰り返します。
※腰の反りがつらい方は、正座の姿勢で、ひじを少し曲げた状態から体を持ち上げて行う、ハーフスワンでも効果があります。
5回程度行いましょう。
この動きは、二の腕の引き締めやバストアップに効果的です。また、姿勢を保つ筋肉を使うので、美しい姿勢づくりにも役立ちます。
5.チャイルドポーズ
最後は、リラックスのチャイルドポーズです。深い呼吸で副交感神経を優位にしていきます。
股関節・ひざを折り曲げて、ひじは軽くマットに置いて前に伸ばします。鼻から吸って、背中に空気をたっぷり入れて、ゆっくり吐いてリラックスしましょう。
背面に呼吸を入れることで、横隔膜が刺激され、副交感神経が優位になり、リラックス効果があります。
1分程度行いましょう。
最後に、息を吸って、吐きながら、背骨を下から積み上げるようにロールアップし、頭が最後になるように起き上がります。
- 才原洋子さん プロフィール
StudioBMP代表・(一社)BMP代表理事・BESJマットリフォーマーマスター講師・ボディメイクトレーナー。
運動指導歴は15年以上約1万件のパーソナルセッションを経験。 バレエを4歳から18歳まで京都にて学ぶ。のちに重度の腰痛に苦しむ。ボディメイクを深める中で劇的に改善。【StudioBMP赤坂店・虎ノ門店】を運営。モデル、女優、タレント、バレリーナ、アスリートにもご愛顧いただき予約は1年待ち。 指導者育成にも尽力。養成コースより輩出した、指導者は100名を超える。ピラティスを軸に初めて聞くような指導が定評。主催する解剖学的根拠に基づいたオンラインサロンも全国の受講生より好評。感覚に残る誘導が人気。
ボディメイクピラティス Studio BMP HP
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ご紹介しているメニューにつきましては、効果を保証するものではありません。
また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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