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あったか
羽毛ふとん研究室

羽毛博士Kakeru

vol. 5東洋羽毛は羽毛ふとんのどんな研究をしているのか

東洋羽毛では、羽毛そのものやがわ生地、構造など、羽毛ふとんに関わる様々な研究を続けてきました。今回は、どんな視点で、どんな取り組みを行っているのか、またその成果はどのような形で表れているのか羽毛ふとんの研究についてお話したいと思います。

まだまだ歴史が浅い羽毛の研究

まだまだ歴史が浅い羽毛の研究東洋羽毛が創立した1954年から30年ほどの頃は、羽毛を研究しているところが少ない状況でした。ですからかさ高があればあたたかいとか、ダウンの含有率が高ければ触り心地が柔らかく感じるとか、その程度の情報しかありませんでした。

その後、羽毛の保温性を計測できるようになったことで、本格的な羽毛の研究が始まりました。何グラムのダウンを入れたら保温性がどの程度になるのかといったことが分かるようになり、計測結果を活かした幅広い製品作りが可能になったのです。

ちぎれたダウンでは保温性を維持できない

ちぎれたダウンでは保温性を維持できない保温性に関するデータを見ると、当然ながらダウンパワー(※) のある物が、保温効果も高くなります。しかしファイバー化したダウンは、最初はダウンパワーを上げる助けになるものの、一定時間を過ぎると効果が落ちていくという結果が出たのです。ファイバー化とは、本来はタンポポの綿毛のように丸くなっているダウン(ダウンボール)が、ちぎれて細かい繊維状になることです。

おふとんが新しいうちは、ファイバーが重なり合ってその間に空気が含まれるので保温効果がありますが、時間が経つにつれてファイバーはがわ生地にくっついていきます。するとおふとん内部がスカスカになり保温性が下がっていくわけです。一口に羽毛ふとんと言っても、質の良いダウンボールを使っているか、ファイバーを使っているかによって、その機能には大きな違いが表れることが分かりました。

※ダウンパワー:「羽毛のふくらみを数値化したもので、数値が大きいほど大きくふくらむことを表し、高品質な羽毛となります」(日本羽毛製品協同組合ホームページより)

かさ高研究で気付いた“天然の力”の素晴らしさ

かさ高研究で気付いた“天然の力”の素晴らしさ 「羽毛をパワーアップする」、「臭いをなくす」といったことも研究しています。

パワーアップと言っても、薬品などで羽毛の質を変えるわけではありません。かつて、薬品でかさ高を上げる研究をしたのですが、その努力を上質な羽毛の仕入れに充てた方が効果的だと結論付けました。つまり羽毛本来の保温力には勝てなかったのです。そこから、羽毛は天然の状態のまま使用することが最良だと考え、いかに自然の状態に近づけ、それを保持するかが、羽毛研究の軸になりました。

臭いに関しては、羽毛特有の臭いを人が気にならない程度にまで落とし、なおかつ羽毛を壊さないという2つを両立させる洗浄技術が必要です。また羽毛に菌が付着することで、菌の排せつ物が臭いを発するケースも少なくありません。企業秘密なので残念ながら詳細はお話しできませんが、精製(羽毛の洗浄工程)には東洋羽毛の知恵と経験が結集されているのです。

がわ生地を大きく変えたゴア®メンブレン

羽毛にはある弱点がありました。それは、がわ生地から飛び出しやすいために、目の詰まった生地を使わないといけなかったことです。がわ生地開発は、いかに軽く、いかに水分を処理するかが課題です。しかし目が詰まった生地は、水分が飛びにくく、生地自体も重くなってしまいます。
側生地を大きく変えたゴア®メンブレン
そこで採用したのがゴア®メンブレンでした。極めて薄いフィルム状のゴア®メンブレンをがわ生地に貼ると、羽毛の飛び出しを防げることから、目が詰まっていない軽い生地を使えるようになったのです。またゴア®メンブレンは、ホコリは通さないのですが汗の水蒸気は通すので、人が汗をかいた際のムレも軽減してくれます。ゴア®メンブレンの採用は、がわ生地開発のエポックメイキングと言える大きな出来事でした。

GORE®、ゴア®はW.L.Gore&Associatesの商標です。

敷きふとんは防カビ研究が最重要課題

敷きふとんは防カビ研究が最重要課題敷きふとんは、やはりカビ対策が最重要課題です。お客様からのご相談でも、カビが生えてしまったという内容は非常に多いです。

敷きふとんの質を左右するのは、おもに素材と構造です。一方、カビ予防の面では、水分(湿度)とエサがあるとカビが生えやすいというお家の環境によるところが大きいので、それらをいかに除去していくかがポイントになります。これまでにいくつもの試作品が作られ、何年にもわたって“敷きふとんを敷きっぱなしにする”という実験を続けました。結果は、目に見えるカビは生えなかったのですが、その試作品は硬くて、特に女性はとても寝ていられなかったのです。カビは生えにくいけれども、寝心地が伴わないという具合です。今も寝心地と防カビを両立させるための試行錯誤が続いています。

羽毛の再利用の研究から生まれたハンドクリーム

羽毛の再利用の研究から生まれたハンドクリーム最後にちょっと変わった研究をご紹介します。東洋羽毛では2004年頃から、羽毛に多く含まれるケラチン(たんぱく質の一種)の研究に取り組んでいます。「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の観点から、廃棄物をなるべく出さないために、使えなくなった羽毛の再利用を考えたことが研究の発端でした。

以前は、使えなくなった羽毛は焼却処分するしかありませんでしたが、羽毛が壊れていてもケラチンの抽出は可能だったのです。また、ケラチンは人間の表皮や爪、髪にも含まれる成分であることから、液体化してスキンケアなどに応用する研究が進められました。今では化粧品などへの原材料になる加水分解ケラチンや、繊維の改質剤としての開発に成功しているほか、今後も多方面への活用が期待されています。

研究をしているのは研究室の人間だけではありません。例えば、おふとんの構造は工場の縫製担当者の発案が多いのです。本当に縫うことができるのかという実現性も踏まえ、とことんまで追求したアイデアには驚かされます。東洋羽毛は、すべての社員が研究者であるという考えのもと、それぞれの部署が専門知識や技術を活かしたアイデアを出し、製品作りに臨んでいます。