いつも同じ側の手で鞄を持っている。ついつい足を組んで座ってしまう。そんな毎日の積み重ねから、気づかないうちに身体にゆがみが生じ、そこに滞りが起こってしまうことに。それが体調不良や体型の崩れをひきおこす原因になります。そこでゆがみチェックと、全身のゆがみをケアする体操をご紹介します。自分はどんな姿勢なのか。どうすれば美しい姿勢になり体調を整えることができるのか。しっかり学んで冷えや肩こり、腰痛といった悩みにサヨナラしましょう!
「整体」と聞くと、骨をバキボキッとやるものをイメージされるかもしれませんが、私が考える整体とは、滞りのない使い勝手のいい身体をつくっていくことです。
肩が凝れば腕が使いづらくなりますし、腰が痛ければ動きづらいですよね。そうした使いにくさがない。あるいは痛みなどが出ても元に戻せる身体づくりです。
「整体した身体」になると、まず排泄がしやすくなります。症状が出やすいとも言えます。例えば腰痛は、腰を使い過ぎているというサインです。そうした不調のサインが出やすく、また不要なものを取り入れた時に、排泄できる身体に整えていくことです。
誰しも間違った身体の使い方をすれば疲れて体調も悪くなるし、年を取らない人もいないですよね。その身体の変化に、いかに対応して養生し、かつ養生するポイントをいち早くキャッチできる感受性の高い身体にしていくか。ゆがみを整えることは、そうした養生のひとつなのです。
女性は男性に比べて女性ホルモンが多い分、筋肉がつきにくいんです。筋肉は血流を促したり、体温を上げたりすることに深く関わっていますから、冷えに関しては、やはり女性の方が起きやすいと言えます。
実際、私のレッスンに来る女性たちも、冷えている人が圧倒的に多いですね。それと筋肉が少ない。これは現代社会では男女ともに言えることですが、腹直筋や骨盤底筋などのインナーマッスルが鍛えられていないんですね。
また女性の骨盤は、生理の周期に合わせて開いたり閉じたりするようにできています。つまり、もともと動くように出来ている分、ゆがみやすくもあるんです。ですから女性は腰回りを中心に、男性は肩や首といった上胸部から、症状が出はじめやすいと言われています。
今回の体操は、どなたでも気軽に行っていただけるものです。朝お仕事に行く前に、5分だけ「足踏み体操」をするといった取り入れ方でもいいと思います。何のために行っているのかという、目的をしっかり意識しながら行ってみてください。
現代人は過剰摂取の傾向がありますから、食べ過ぎないことも重要です。動物性たんぱく質、乳製品、カフェイン類、砂糖、白米・小麦粉などの精製食品などを減らしていくと、今回ご紹介する体操もしやすい、柔らかい身体になっていくと思います。
一方、水はたっぷり補給してください。コーヒーやアルコールではなく、「水」そのものを1日1.5~2リットルは飲んでほしいですね。
私は整体を始めるまで、熱が出たら解熱剤を飲んで、肩こりには湿布を貼ってといった具合に、症状を消す方法しかとっていませんでした。でも今では、熱や痛みが出ると、それがどこからきているのかという根本原因を考えるようになりました。そして生活習慣を見直すことにたどり着いたんです。
また身体が整うと、自分の軸が整うため、揺らぐことはあっても迷わなくなるようです。例えば、レッスンに通い始めたころは、上司との関係にものすごいストレスを感じていた生徒さんが、しなやかに対応できる 心の余裕を身につけていく、というように変化していくこともあります。そうした姿を見ていると、「整体」とは「整心」でもあるんだなと思います。
- 正しい姿勢とは、下腹に重心があり、頭の重みを体の中心で支え、横から見た時に体全体が美しいS字カーブを描いていて、正面から見た時に左右の肩の高さが同じ状態です。
- 〇足は揃える
〇お尻の筋肉を中央に寄せるように
〇下腹からみぞおちまでを引き上げるように
〇頭の位置は腰に乗るように - S字カーブか崩れたり、左右のバランスが悪いと、骨格にゆがみが生じて、肩こりや腰痛を引き起こしたり、体型の崩れや体調不良を招いてしまいます。
- 猫背
腰が下に落ちることで、ひざが前に出て、かかとに重心がかかっています。猫背の悪影響正しい姿勢
■落ちたお尻を支えようと、お尻の下に肉がつく ■筋力不足の人に多く、筋力がないため内臓が下がりお腹がぽっこり出る
■肩が内に巻いてきて、バランスを取るためにアゴが前に出る
ひざ裏を伸ばし、ヒップアップするように骨盤を上げ、お腹も引き上げます。肩甲骨を寄せるように肩を後ろに引き、頭が腰に乗るようにあごを引きます。
- そり腰
重心がみぞおちのあたりにきていて、前のめりになっていて、ハト胸のような姿勢に見えます。そり腰の悪影響正しい姿勢
■前のめりの姿勢を支えようと、太ももの前と横に肉がつく
■バランスを取ろうとふくらはぎの筋肉が発達する
■いかり肩のようになって首が詰まる
■肩甲骨が開くのでそれを支えようと背中や腕の外側に肉がつく
重心をかかとの方に乗せます。足の親指が浮かないように、親指にも力を入れて地面を踏みしめるようにします。腰を少し落として下腹からおへそまでを引き上げます。肩の力を抜き、頭を腰に乗せていきます。
- 左右のバランス
肩の高さが違うなど体が左右どちらかに傾いています。
原因としては、同じ側で鞄を持つ、足を組んで座るといった習慣のほかに、食べ過ぎによって胃の重みで肋骨が下がり、肩が引っ張られることも挙げられます。左右アンバランスの悪影響ポイント
■左右のバランスが崩れることで全身のゆがみを招く
■背骨が圧迫されることで自律神経の働きに影響が出て、内臓の機能が低下することがある
■上半身が硬直すると、心臓の動きが鈍くなったり、肺に負担がかかって呼吸が浅くなったりすることもある
日頃から同じ方向で鞄を持たない、足を組まない、食べ過ぎないなど工夫してみてください。
まずは腹直筋と骨盤底筋を鍛えましょう。これらの筋肉は、内蔵器の下垂を防ぎ、正しい位置にキープすることで、内蔵器の働きをよくします。またコルセットのように体を支えて、頭の重みが腰に乗るので、肩や首のこりを緩和します。
[ 効果 ]
・肩や首のこりを和らげる ・内臓の冷えを予防する ・尿漏れを予防する ・便通をよくする
- 1正しい姿勢をキープ。
恥骨から指4本分上に手を当て反対の手は仙骨に当てます。
手を添えることで、骨盤を動かさないように意識しましょう。★体を挟んでいる手が疲れたら、肩に余分な力が入っている証拠。上半身はリラックスして行いましょう。
- 2腹直筋で足を引き上げるイメージで、片足をゆっくり上げます。
軸足のひざ裏をしっかり伸ばし、お尻は締めて、頭を上に引っ張られているようなイメージで背筋も伸ばします。
★足を持ち上げるのではなく、お腹の筋肉で足を引き上げるのが重要なポイントです。
- 3ゆっくり足を下ろし、反対の足も同様に行います。 最低5分程度、できれば15分以上ゆっくり繰り返します。
次に、ひざの裏を伸ばし、姿勢を整えることができる体操を行っていきます。キツイなと感じるくらいまで頑張って伸ばしていきましょう。
[ 効果 ]
・猫背・そり腰を整える ・ヒップアップや美脚 ・足の長さの左右差を整える
- 1長座になります。恥骨が真下に向くように腰を立てて、骨盤を平行にし、立っている時と同様に正しい姿勢を作ります。
- 2右足を曲げ、足の裏を左足の内ももにつけます。
この時、足につられて骨盤が回らないようにまっすぐ前に向けます。左足は腰からまっすぐ前に伸ばします。★骨盤が曲げた足の方向に回ってしまう場合は、曲げた足の裏を少し前に出し、ひざを上げて骨盤をまっすぐにします。
- 3左足のひざを両手で押さえます。
息を吸って腹直筋を引き上げ、息を吐きながらおへそを前に押し出します。この時、左足のつま先を上に向けてかかとを押し出し、ひざ裏をしっかり伸ばします。
★前屈をするのが目的ではなく、ひざ裏を伸ばすことが重要なポイントです。
これを4~5回繰り返します。
- 1続けて、同じ姿勢のまま、伸ばした足先の外側を右手で掴みます。ひざが浮かないように左手で押さえます。
- 体が硬い方は、足の裏にフェイスタオルを引っ掛けて右手で持ちます。ひざ裏が伸びるように、なるべく足先に近い位置を持ちましょう。
ひざが浮かないように左手で押さえます。
- 2息を吸って腹直筋を引き上げ、息を吐きながらおへそを前に押し出し、さらにひざ裏を伸ばします。
★ひざ裏を伸ばす際、体を軽く左右に揺らすと、息が吐きやすくなり、呼吸が浅くなるのを防ぎます。。
これを4~5回繰り返します。
- 1最後に、足の裏にフェイスタオルを引っ掛けて右手で持ち、ひざ裏が伸びるように、なるべく足先に近い位置を持ちます。ひざが浮かないように左手で押さえます。
- 2足首を大きく回してひざの両脇の筋を伸ばしていきます。この時に、バレリーナの足のように、足の甲をしっかり伸ばして回します。
余裕がある人は左手で足先を掴んで大きく回しましょう。
外回し・内回しともに4~5回行います。
- STEP1~3を反対の足でも行います。
最後に、美しいS字カーブをつくるために腸骨の隙間を作っていきましょう。腸骨の隙間とは、ウエストに手を置いた時に親指が当たっている辺りです。この部分には、指が入るぐらいの溝があることが理想的です。
[ 効果 ]
・骨盤の中の内臓機能を活発にする ・リンパの流れ・下半身の血流を促す
・冷えを予防する
・骨盤の左右の傾きを整える ・腰痛・ギックリ腰を予防する
- 1あぐらになり、足の裏を合わせます。恥骨が真下に向くように腰を立てて、立っている時と同様に正しい姿勢を作ります。ひざは浮いても構いません。
- 2一旦、足の裏が天井に向くように手で開き、開き方の左右差をチェックしてみましょう。
もし片方が開きにくかったら、それは片方の腸骨の隙間に詰りがあるということです。この足の開き方が、腸骨の隙間のバロメーターになります。
- 3 まず、左足を立て、左腕でしっかり抱えて胸に引き寄せます。右手は後ろに伸ばし、できるだけ遠くに置きます。
- 4右手をゆっくり後ろから天井に向けて引き上げていきます。腕や脇を伸ばすのではなく、腰を伸ばし腸骨の隙間が開くイメージが大切です。
- 5めいっぱい伸びたところで、
腕を4~5回小さく前後にバウンドさせます。
腰が伸びるのを感じましょう。
- 6一番伸びた体勢をキープしたまま、肘を曲げて手先を下ろします。
肘を天井に向かって引き上げたまま、反対の手で肘を持ち少しだけ前に引っ張りながら、腸骨の隙間がさらに開くのを感じましょう。
- 7一気に脱力して一呼吸おいたら、③~⑥を反対側も同様に行います。
- 最後に、足の裏を合わせてあぐらの体勢に戻り、足の裏を天井に向くように手で開いて左右の開き方の違いをチェックしましょう。
足が開きやすくなっていれば、腸骨の隙間が広がりS字カーブが整い始めている証拠です。
- 一井葉子さん プロフィール
- からだデザイン主宰。整体指導士、生活習慣病予防指導士、ホリスティックセルフケアコーディネーター、ヒーリングフード料理研究家。
大手化粧品メーカー勤務などを経て、結婚出産後、フラワーアレンジメント講師として活動中に、若年性の緑内障と診断される。以降、自分の健康を取り戻すことに専念しはじめる。さまざまな養生を学び、2009年に自らの体調・体質改善の経験をもとに、オリジナル・セルフメンテナンス法を発信する「からだデザイン」を設立。女性の美と健康、そして生き方指導に取り組んでいる。著書に『40代からの女をあげる整体学』(アスペクト)がある。
「からだデザイン」ホームページ:http://www.karadadesign.jp/
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また実施する際は、ご自身で体調管理のうえ、無理をせず行ってください。
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