羽毛ふとん研究室
羽毛博士翔Kakeru
vol. 3羽毛ふとんの価値と品質
羽毛ふとんの値段は“ピンキリ”ですね。では羽毛ふとんの価値は、何で決まるのでしょうか? 同じおふとんなのに、なぜ大きな価格差が生まれるのでしょうか? 中身の羽毛は見ることができないからこそ、選び手が品質を見極める目や知識を持つことが大切です。
品質の決め手は、飼育期間・エサ・飼育環境
羽毛ふとんに使われる羽毛は、食用のダックとグースの副産物で、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、フランス、アメリカ、イギリス、ロシア、中国といった国々がおもな産地です。水鳥の種類による羽毛の質の差はほとんどなく、重要なのは飼育期間やエサ、育った環境です。寒い地域で育った水鳥は、体温を逃がさないように羽毛が成長し、羽毛自体の質も良くなります。また定期的にきちんと良質なエサを食べていることや、羽毛が十分に育つまで飼育期間が設けられていることも、高品質の羽毛を育てる重要なポイントです。
その中でも中国は世界最大の羽毛の産出国です。国土は広大で南の温かい地域から北の極寒の地まで有しています。そのため羽毛の品質にも大きなばらつきがあることも事実です。北京ダックの料理に使われる飼育期間の短い品質の劣る羽毛はべつとして暖かい地方よりも北の寒い地域の羽毛は良質で、中でも親鳥の羽毛は最高の品質といえます。昨今、中国というだけで敬遠されがちですが、鳥の数が多いいという事は親鳥の数も多く高品質の羽毛もそれだけ存在することは確かです。
この質の高い羽毛を羽毛ふとん用の高品質な原料に仕上げるには洗浄技術が大きく関わってくることは言うまでもありません。
洗浄技術もダウンの質を左右する
羽毛の質を決める2つ目のカギが洗浄です。上質な羽毛を仕入れても、洗浄過程で壊れてしまっては元も子もありません。羽毛の特性を損なうことなく清潔に洗い上げるには、高度な技術と経験が必要です。大量の軟水を惜しまずたっぷり使う。繊細な羽毛を傷めないよう圧をかけずに洗い上げる。そして、汚れの成分を熟知した洗剤。これらが揃って初めて、最適な洗浄作業が可能になります。
東洋羽毛では、独自開発した洗浄機や洗剤を使って丁寧に洗い上げるだけでなく、環境に配慮して洗浄で使用した水は工場内で浄化して川に流しています。製造過程における環境負荷の軽減も、商品価値の一部と言えるのではないでしょうか。
上質な羽毛ふとんは、側生地にも工夫がある
側生地の質も、羽毛ふとんの価値を決める大きな要素です。側生地は、やわらかいことが基本。ゴワゴワした生地では体になじみませんし、せっかくの羽毛の風合いが台無しになってしまいます。
また、含まれるダウンとフェザーの割合によって、適切な側生地も変わってきます。フェザーが多い場合、羽根が飛び出しやすくなるので、生地を丈夫にする必要があり、糸を太めにして目の詰まった織り方をしていきます。反対にダウンが多い場合、そこまで生地の目を詰める必要がないので、やわらかい糸を使った、よりしなやかな生地を使うことができます。
いずれにしても、糸の太さや織り方を工夫して、やわらかと丈夫さのバランスに配慮しながら、羽毛に合った生地を作っていくことが大切です。上質な羽毛ふとんは、側生地1枚をとってみても、非常にち密に計算されているのです。
おふとんの構造とダウンの密接な関係
羽毛ふとんの構造は、寝ている間におふとんが外気を遮って熱を逃さない、なおかつ重くならないという、羽毛の機能を活かす設計が求められます。
東洋羽毛の場合は、おもにマウンテンキルトという山型のマチが入った特殊なキルティングを採用しています。マチが高い(厚い)ほど熱は逃げにくくなりますが、ダウンパワー※のある羽毛を入れないと、中身がへたって高さを維持できなくなることから、構造とダウンのクオリティは、密接に関係しているのです。
また羽毛がキルティングの升目を移動しない工夫も欠かせません。羽毛を充填するための穴をきちんと塞いでおかないと、升目と升目の間に隙間ができ、おふとんを使っているうちに羽毛が升目を移動し偏ってしまうのです。当然、保温性や掛け心地にも影響が出てきます。内部の構造とともに、構造を維持する縫製技術も不可欠です。
※ダウンパワー:「羽毛のふくらみを数値化したもので、数値が大きいほど大きくふくらむことを表し、高品質な羽毛となります」(日本羽毛製品協同組合ホームページより)
おふとん選びの3つのポイント
羽毛ふとんを購入される場合、まずはケースに入っていたら、ケースの中でおふとんが泳いでいないこと、ケースがおふとんの圧力で風船のようにパーンと張っているかどうかを見てください。
直接おふとんに触ることができるなら、四つ折りにして上から押してみます。商品なので乱暴に扱うことは控えていただいて、やさしく押してどれくらい跳ね返ってくるか復元率をチェックしましょう。
最後に羽毛量です。量が多い方が良い気がしますが、そうとも言えません。同じサイズ、同じ構造のおふとんで比較した場合、羽毛量が多い方は、個々の羽毛のボリュームがないために量で補っていると考えられるからです。ちなみに、東洋羽毛の掛けふとんは、一般的なおふとんよりタテが少し長いので羽毛量も若干多めで、シングルサイズで1.3kg前後です。羽毛量は品質表示のタグに記載されていますので、ご購入の際はぜひ参考にしてみてください。
羽毛そのものの質、洗浄技術、側生地のクオリティ、構造、縫製と、羽毛ふとんの価値はいろいろな要素によって決まることがお分かりいただけたでしょうか?良質な羽毛ふとんは、クリーニングやリフォームを適切に行うことで、20年、30年、いやもっと長く快適にご利用いただけます。また、保温性が高いので夜間の暖房費の節約も期待できます。ぜひ、上質なおふとんを選んで、長くご愛用いただきたいと思います。