眠りなサイエンス
睡眠博士ねねNene
vol. 7寝つきと寝起きのひと工夫
今回は、少し趣向を変えまして、読者のみなさまから眠りに関するご質問を受けましたので、お答えしたいと思います。
まずはこちらのご質問からご紹介しましょう。
香りの力を侮ってはいけません!
五感の中で味覚や視覚などは、まず知覚を司る脳の大脳皮質に届いてから、感情を引き起こす大脳辺縁系に伝わります。ところが嗅覚だけは逆で、まず大脳辺縁系に伝わってから大脳皮質に届きます。つまり匂いは、ダイレクトに感情や本能を刺激するのです。
ラベンダーの香りが睡眠にいいと言われるのは、含まれている鎮静効果のある成分が、ダイレクトに脳に作用して心を鎮めてくれるからなのです。
【眠りにおすすめのアロマオイル】
・ラベンダー:心を落ち着かせ、身体・感情両面のリラックス。鎮静効果の後の安眠。
・ゼラニウム:神経の高ぶりからストレスを軽減。感情のバランスがとれる。リラックス。
・シダーウッド:緊張感、心配、はやる心を落ちつかせる。
・オレンジ(スイート):気持ちの高揚、うつ状態や緊張、ストレスを払い去る。
・カモミール:緊張や神経の高ぶりを鎮め、心を穏やかにする。
出典:日本アロマセラピー学会編『アロマセラピーのための精油ハンドブック』丸善出版、2016
家の中の音にも目を向けましょう!
睡眠を妨げるもののひとつに騒音が挙げられます。睡眠時は40デシベル以下に抑えるのが適切とされ、これは図書館ぐらいの静けさです。エアコンは約50デシベル、洗濯機は約70デシベルと言われていますので、家の中の音にも気を配りたいところです。
室内の音が気になる場合は、そこからベッドを離してみましょう。外からの騒音を防ぐ工夫には、カーテンを厚手のものに替える、ベッドを窓から離す。さらに、ご自宅をフォームしたり新築したりする機会があれば、窓を二重サッシすることも検討してみてください。
淡い色調のインテリアでリラックス
色彩心理学によると、赤・青・緑といったはっきりした色は緊張感を与え、淡い色合いはリラックスするそうです。最近、医療機関などでは、カーテンや壁にパステル系の色を用いるケースが多いですが、これは患者の緊張感を和らげるためなのです。
寝室のインテリアも同じで、赤や黄色といった刺激の強い色が多いと、神経が高ぶってしまいます。淡い緑や青がおすすめですが、冬場はちょっと寒々しい印象もありますね。寒い季節はベージュ系、暑い季節は寒色系など、季節ごとに衣替えするのもいいでしょう。
【眠りにおすすめの色彩と期待される効果】
・緑:筋肉のリラックス、心拍数の安定、気分を和らげる。
・青:神経の興奮を鎮める、体感温度を下げる。
・紫:癒し、身体の疲れを回復させる。
出典:宮田久美子『人生が豊かになる色彩心理学』ナツメ社、2015
朝日を取り入れて眠りも寝起きも気持ちよく
室内で大きな面積を取るカーテンは、インテリアのカギとなるアイテムですね。前述の色彩を取り入れて色柄を選んでみてはいかがでしょうか。屋外の音が気になる方は、少し厚手のものや遮光カーテンを使うのもおすすめですが、使い方に一工夫しましょう。
朝になっても部屋が真っ暗だと、身体が目覚めにくくなってしまいます。人は光を見ることで、身体が覚醒していきます。カーテンだけでなく雨戸にも言えるのですが、少し隙間を開けて朝日が部屋に入るようにすることをおすすめします。
また朝の光は、目覚めだけでなく寝つきにも影響します。光を浴びたおよそ14時間後に再びメラトニンが分泌され、今度は夜の眠気を誘うのです。心地よい目覚めと寝つき、どちらにとっても朝日に当たることは大切なのです。
呼吸と手足のグーパーで身体を目覚めさせる
朝おふとんからなかなか起き上がれない原因のひとつに、自律神経の切り替えができていないことが挙げられます。睡眠時には自律神経の副交感神経が働き身体を休ませますが、それが交感神経に切り替わることで活発に動けるようになります。
そこで目覚めたら深呼吸をしてみましょう。このとき、息を「吸う」ことを意識して行います。すると交感神経が優位になり頭がすっきりしてきます。反対に「吐く」ことを意識するとリラックスしてきますので、寝る前には吐くことを意識した深呼吸がおすすめです。また、おふとんの中で手足をグーパーしてみるのもいいでしょう。血行が促され身体が目覚めてきます。
もう少し余裕のある方は、全身のストレッチも取り入れてみましょう。やり方を動画でご紹介していますで、呼吸法とともにぜひ参考にしてみてください。
【目覚めにおすすめの呼吸法&ストレッチ】
・ストレスにさよなら!呼吸法をマスターして心身リフレッシュ!
・目覚めすっきり!おふとんの上でできる簡単ストレッチ
いかがでしたでしょうか。香りや色、光など、眠りや身体の調子を左右する要素は実にさまざま。しかしご紹介したアイデアは、あくまで「プラスα」の工夫です。気持ちよく眠り、すっきり目覚めるための基本は、十分な睡眠時間の確保や規則正しい生活、適度な運動習慣であることを忘れないでください。
- vol. 1寝つきの悪さの原因と対策
- vol. 2食生活と眠りの関係
- vol. 3短期的な睡眠不足を乗り切る裏ワザ
- vol. 4睡眠不足が脳と体の成長に与える影響について
- vol. 5睡眠で分かるカラダ不調のサイン
- vol. 6欧米と日本の睡眠習慣の違い
- vol. 7寝つきと寝起きのひと工夫
- vol. 8いびきが起きる原因と解消法
- vol. 9寝坊の原因と解消法
- vol. 10赤ちゃんとお子さんのより良い睡眠のために
- vol. 11目覚めに体がイタイのはこんな理由かも?
- vol. 12良い目覚めと悪い目覚めの違い
- vol. 13仮眠や昼寝を効率よく取るコツ
- vol. 14睡眠不足のリスク
- vol. 15健康習慣をおさらいしよう!
- vol. 16睡眠障害とは?