眠りなサイエンス
睡眠博士ねねNene
vol. 5睡眠で分かるカラダ不調のサイン
生活環境の変化や育児、仕事、受験などなど。日々の緊張や疲れが知らず知らずのうちに蓄積され、寝つきの悪さなどに表れることも。睡眠に変化を感じたら、カラダ不調のサインかもしれません。また、睡眠中の様子は自覚しにくいものですから、家族や周囲が気づいてあげることも大切です。
緊張状態が続くと、眠りに影響が
自律神経は、交感神経と副交感神経のふたつの神経からなります。昼間は交感神経が働いて活発に行動し、夜は副交感神経が優位になることで、リラックスして眠りにつけるわけです。ところが緊張状態が続いていると、夜になっても交感神経が優位なままになり、眠気が起きにくくなってしまいます。
また人は、ストレスを受けると、体内でストレスホルモンが分泌されます。ストレスホルモンには睡眠を抑制する働きがあるので、ストレスを抱え過ぎると不眠を起こしやすいのです。寝つきの悪さを感じている方は、ストレスを解消できる趣味を持つのも、ひとつの手かもしれませんね。春先などは、進学や就職で新生活が始まり、慣れない環境で毎日を過ごす人が増える季節です。五月病の予防のためにも、自分なりのリフレッシュ法をつくっておくといいと思います。
突然、寝言を言うようになったら…
旅行先で友人のおかしな寝言を聞いてしまった!なんて経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。ですが寝言によっては、「レム睡眠行動障害」のサインの可能性があります。
おもに子どもにみられる「夢中遊行症」、いわゆる夢遊病は、ほとんどの場合、成人すると出なくなることから、特に治療はせずに様子を見るケースが多いと言います。
対してレム睡眠行動障害は、中高年を中心に発症します。攻撃的な寝言を言ったり、暴れて隣に眠るパートナーを殴ってしまったりといった行動がみられる障害で、自然に改善することは難しく、治療の対象になります。また「レビー小体型認知症」との関連も指摘されていることから、それまでほとんど寝言を言わなかったのに、突然、寝言を言うようになった場合は、しばらく注意をしましょう。ひどくなるようであれば、専門医に相談することをおすすめします。
たかが「いびき」と侮るなかれ!
大きないびきをかく。十分に寝たはずなのに、朝スッキリ起きられない、また日中も強い眠気に襲われる。これらが当てはまる方は、「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)」に注意です。
睡眠中に呼吸が止まり、一瞬目覚めて呼吸を再開し、また眠るという状態を繰り返すSAS。肥満の男性がなるイメージが強いと思いますが、扁桃腺が肥大している人やあごの小さい人も、気道が塞がれやすいため発症しやすいと言います。女性は、女性ホルモンの影響で発生率は低くなっています。ただ、閉経後はその女性ホルモンの分泌量が減ることから、男性と同等に発症するようになるそうです。
SAS患者は、交通事故を起こすリスクが、健康な人よりも高いという調査報告があります。2012年には、高速バスの運転手が居眠り運転をして多数の死者を出した事故が、報道されたこともありました。乗り物や機械を操作する仕事では、強い眠気は重大な事故を引き起こしかねません。もちろんオフィスワークの方も、商談中に眠ってしまっては大問題ですよね。たかがいびき、たかが眠気と油断せずに、本人だけでなく周囲も、気にかけてみてください。
疲れているのに眠れない
人の体内時計は、1日の24時間よりも長いと言われています。ですが午前中に太陽光を浴びると、光が信号となって脳に伝達され、ズレをリセットできるのです。私たちの体には、こうした1日周期のリズム「概日リズム(サーカディアン・リズム)」が備わっています。
時差ボケなどで、疲れているのに眠れないことがあると思います。これは一時的に体内時計が狂っているから。健康な人であれば、前述したように朝の決まった時間に日光を浴びることで、数日で狂いは改善され、適切な時間に眠気が起きるようになります。
ところが夜更かしを続けていると、次第に睡眠と覚醒のリズムが後ろにずれ込む「睡眠相後退型」の「概日リズム睡眠障害」になってしまうことがあります。
「不眠症」のサインかも?
心配事があって眠れないというような不眠の状態と、「不眠症」の違いはどこにあるのでしょうか?
日本睡眠学会が定義した睡眠障害には、次の3つが挙げられます。
・入眠障害:夜間なかなか入眠できず、寝つくのに普段より時間がかかる
・中途覚醒:一旦寝ついても夜中にしばしば目が覚める
・早朝覚醒:まだまだ眠いのに目が覚めてしまい、再入眠できない
これらの症状が何日続いたら不眠症なのかは、少々判断が難しいところではあります。ですがポイントとして覚えておいてほしいのが「3か月」。なぜなら、症状が出始めてから3か月以内であれば、薬の処方などによって改善しやすいからです。反対に3か月を超えてしまうと、治療も長期化するなど負担が大きくなるそうです。眠りや寝つきがいつもと違う、そしてその状態が続いているなと感じたら、放っておかずに、早めに専門医に診てもらいましょう。
vol. 1寝つきの悪さの原因と対策
vol. 2食生活と眠りの関係
vol. 3短期的な睡眠不足を乗り切る裏ワザ
vol. 4睡眠不足が脳と体の成長に与える影響について
vol. 5睡眠で分かるカラダ不調のサイン
vol. 6欧米と日本の睡眠習慣の違い
vol. 7寝つきと寝起きのひと工夫
vol. 8いびきが起きる原因と解消法
vol. 9寝坊の原因と解消法
vol. 10赤ちゃんとお子さんのより良い睡眠のために
vol. 11目覚めに体がイタイのはこんな理由かも?
vol. 12良い目覚めと悪い目覚めの違い
vol. 13仮眠や昼寝を効率よく取るコツ
vol. 14睡眠不足のリスク
vol. 15健康習慣をおさらいしよう!
vol. 16睡眠障害とは?