眠りなサイエンス
睡眠博士ねねNene
vol. 3短期的な睡眠不足を乗り切る裏ワザ
みなさんは、毎日何時間くらい睡眠を取っていますか? 睡眠の重要性をわかっていても、ついつい夜更かしをしてしまうことは誰にでもあると思います。そこで今回は、短期的な睡眠不足を乗り切るコツをご紹介したいと思います。ですがあくまでも「応急処置」です。基本は毎日きちんと眠ることをお忘れなく!
そもそも必要な睡眠時間とは?
カリフォルニア大学サンディエゴ校のダニエル・クリプキ教授が、110万人超の男女を対象とした大規模な調査を行いました。その結果、なんと睡眠時間が6.5~7.4時間の人の死亡率が最も低かったのです。ですが7時間程度寝ていれば健康!というものでもありません。認知症や生活習慣病になるリスクなどさまざまな面を踏まえると、必ずしも7時間睡眠がベスト!とは言い切れないのです。
米国国立睡眠財団が推奨している、年齢別の睡眠時間をご紹介しましょう。下記の通り、いずれも2時間程度の幅があります。これは体質や生活習慣などによって適切な睡眠時間に個人差があるからです。 「〇時間寝なきゃいけない」「〇時間しか寝ていないから寝不足だ」と自分で決めつけてしまうことで、不必要に不眠だと悩んでしまうケースもあります。まずは、年齢とともに推奨される睡眠時間が異なること、そして個人差もあるということを知っておいてください。
6~13歳:9~11時間
14~17歳:8~10時間
18~64歳:7~ 9 時間
65歳以上:7~ 8 時間
「パワーナップ」でパフォーマンスをUP。
昼食を食べ終えた後、眠気に襲われることがあると思います。これは食事の影響に加えて、もうひとつ。私たちの体に、睡眠と覚醒を1日周期で繰り返す「慨日リズム(サーカディアンリズム)」と、12時間周期の「半慨日リズム(サーカセミディアンリズム)」が備わっているから。つまり半日ごとに眠気が起き、そのタイミングがちょうど14時~16時頃。睡眠不足でなくても、そもそもこの時間帯は眠気が起きやすいのです。
そこで思い切って仮眠を取ってみましょう。昼休みなどを利用した昼寝を、アメリカではパワーアップを文字って「Power Nap(パワーナップ/Nap=昼寝)」と呼んでいます。NASAが行ってきた仮眠研究をきっかけに、パワーナップによってパフォーマンスが向上することが実証され、大手企業でも積極的に取り入れるようになりました。
ただし寝すぎは禁物。15時頃までに20分以内にとどめましょう。それ以上長くなると眠りが深くなり、目覚めた時にかえって頭がぼーっとしたり、体が重くなったりします。また横になると深い眠りに入りやすいので、デスクでのうつ伏せ寝やソファに座って眠るのがおすすめです。また、仮眠の前にカフェインを摂るのもおすすめです。カフェインの覚醒作用が、カフェインを摂ってから20~30分後に効きはじめますので、スッキリ目覚めやすくなります。
不足を補おうと寝すぎない。
大きな仕事が舞い込んで連日残業…。そんな生活が終わった時、心おきなく眠ろうと10時間も寝てしまうのは、実は逆効果です。寝すぎることで睡眠のリズムが狂ってしまうことがあります。大切なのは、いつもの生活リズムを取り戻すこと。例えば、通常は12時に寝て7時に起きる生活をしていたなら、それに合わせることがポイントです。
また日常生活においても、休日に一日中ゴロゴロと過ごしていると、夜の睡眠に影響を及ぼし、休み明けの寝起きがかえって辛くなってしまいます。休日も平日と同じ時間に起きることが理想ですが、少なくとも平日との起床時間の差を1時間以内に抑えるように心がけてみてください。
徹夜や時差ボケの前後はどう過ごす?
深夜にサッカーの試合中継を見るから今日は徹夜だ!そんな時、あらかじめ眠っておこうと思うかもしれませんが、残念ながら睡眠は「貯金=寝だめ」ができません。一晩だけであれば、徹夜明けでもすぐには眠らず、なるべく日中は起きているようにして、夜の睡眠をしっかりととる。そして翌日はいつもと同じ時間に起きる。生活リズムを変えないことで、より早く睡眠不足を取り戻せ、体への負担も軽減することができます。
海外旅行の際の時差ボケも、徹夜明けと同じように対処します。例えば欧米への渡航は、時差が大きく負担も大きく感じますね。まずは飛行機に乗った時点から、目的地の時間を基準にして睡眠のタイミングを調整することです。また現地に日中に到着する便であれば、そのまま観光に出かけるなどして日光を浴びて、体内時計を現地の時刻に合わせていきます。帰国後も同様で、日本の時間軸に合わせて行動することが、時差ボケ解消のコツです。
医療従事者こそ“夜に眠る”ことを大切に!
最後に、医療や介護など、週に1~2回程度夜勤がある方の睡眠についてお話ししたいと思います。
夜勤の日は、当然夜間も働かないといけないですから、まずはそれ以外の日の睡眠リズムを整えること。準夜勤明けも含めて、朝は一定の時間に起きることを心がけましょう。
一方夜勤明けは、午前中に帰宅することになります。午後に向けてどんどん日が高くなり、本来は体も活動的になる時間帯ですから、できるだけそのまま起きていることがポイントです。前段で述べたように、徹夜明けでもすぐには眠らず、日中は起きている方が、体内時計が乱れにくく体調も崩しにくくなります。どうしても昼間眠くなってしまった場合は、20分以内の仮眠を取りましょう。
寝不足だからといって、むやみに長時間眠るのは得策ではありません。生活が変則的な人ほど、「昼は起きて、夜は眠る」というリズムを大切にしてください。
- vol. 1寝つきの悪さの原因と対策
- vol. 2食生活と眠りの関係
- vol. 3短期的な睡眠不足を乗り切る裏ワザ
- vol. 4睡眠不足が脳と体の成長に与える影響について
- vol. 5睡眠で分かるカラダ不調のサイン
- vol. 6欧米と日本の睡眠習慣の違い
- vol. 7寝つきと寝起きのひと工夫
- vol. 8いびきが起きる原因と解消法
- vol. 9寝坊の原因と解消法
- vol. 10赤ちゃんとお子さんのより良い睡眠のために
- vol. 11目覚めに体がイタイのはこんな理由かも?
- vol. 12良い目覚めと悪い目覚めの違い
- vol. 13仮眠や昼寝を効率よく取るコツ
- vol. 14睡眠不足のリスク
- vol. 15健康習慣をおさらいしよう!
- vol. 16睡眠障害とは?