眠りなサイエンス
睡眠博士ねねNene
vol. 12良い目覚めと悪い目覚めの違い
朝、目覚まし時計に頼ることなくすっきり目覚めると、本当に気分がいいですよね。体の疲れも取れて、心身ともに爽快な状態で朝を迎えると、活力に満ちた1日を過ごすことができます。そこで今回は、良い目覚めを得るためのコツなどについてお話しましょう。
体内時計を乱さない生活がポイント!
体内時計は私たちの体に備わっている重要な機能です。その役割は、睡眠と覚醒のリズムの調整、自律神経を整える、血圧や体温の調整、ホルモンの分泌周期の調節など多岐にわたります。ですから体内時計を乱さないことは、健康の維持にとても大切であり、良い目覚めを得るポイントでもあります。
例えば、こんな経験はありませんか? 平日につい夜更かしをして、翌日は寝不足のまま勤務先や学校に行く。休日前には、明日は休みだからとまた夜更かしをする。さらに休日は、日ごろの睡眠不足を補おうと朝寝坊をする――。すると平日と休日で睡眠と覚醒のリズムがずれるばかりか、自律神経や体温調節、ホルモンの分泌周期ともリズムがバラバラになってしまうのです。その結果、体調不良や休み明けに仕事や学校に行きたくなくなる、といったことが起きてしまいます。日ごろから、平日も休日も同じリズムで生活することを心掛けましょう。
深部体温の上げ下げを利用しましょう
気持ち良い目覚めは、いわば熟睡できたことの証。眠り始めの2~3時間に現れる深い睡眠を、きちんと取れるかが熟睡感を左右するといいます。そこで体温に注目してみましょう。人の深部体温(体の中心部の温度)は1日の中で上下しており、その変動は睡眠と密接に関係しています。深部体温が下がることで眠気が起き、上昇に従って目覚めるのです。
手足から熱を放出することで深部体温が下がります。赤ちゃんの手足がポカポカしてきたら、お休みの合図と言われるのはそのためです。足先が冷えるからと靴下をはいたり、電気毛布をつけっぱなしにしたりすると、放熱がうまくできず眠りを妨げてしまいます。
そこで寝る1~2時間前に入浴などで少し体温を上げておくと、就寝する頃に下がってきて眠気も起きやすくなります。ポイントはぬるめのお湯に入ること。適度に上がった深部体温を下げようと体が働くとともに、血流が増して手足からの放熱がスムーズになります。反対に熱いお湯だと、体温が上がり過ぎ交感神経も優位になり、眠気が起きるまでに時間がかかってしまいます。体温の上げ下げをうまく利用して、睡眠の質を上げましょう。
光を活用して体内時計を整える
深部体温の変動の他に、睡眠に関わるリズムに冒頭でお話しした体内時計があります。体内時計は24時間よりも長い周期で動いていることから、1日の24時間とはずれがありますが、光に当たることでずれがリセットされ、新たな1日を刻み始めるのです。
また、体内時計に働きかけて眠りを誘うことから「睡眠ホルモン」とも呼ばれるメラトニンは、光を感知すると分泌が抑制され、暗くなると促進されます。夜遅くまでパソコン作業をしたり煌々と明かりのついた部屋にいたりすると、体は昼間と勘違いして体内時計が狂い、光によってメラトニンの分泌が抑えられて眠気も起こりにくくなってしまいます。眠るべき時刻に眠れない、起床時刻になっても体が目覚めないという状態になり、当然、目覚めも不快に…。
体内時計を整えるために、午前中に光を浴び、夜はブルーライトや明るい照明を避けるようにしてみてください。
頭の中には「目覚まし時計」がある!?
メラトニンが眠りを誘うのに対して、体の覚醒を促すのはコルチゾールです。起床する数時間前から分泌が増え、体温や血圧などを上昇させて目覚める準備をします。
コルチゾールを増加させる副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、寝る前に起床時刻を意識することで、その時刻に向かって徐々に増えることが分かっています。「明日は○時に起きる」と決めて眠ることで、脳がACTHを分泌させてその時刻に自己覚醒ができるようになり、さらに自己覚醒が習慣化されると、目覚まし時計に頼ることなく目覚められるようになるといいます。
いずれにしても、起床時刻を一定にして睡眠と覚醒のリズムを整えることが一番です。光や体温変化を活用して、心地よい目覚めを手に入れましょう。