「睡眠負債」という言葉を聞いたことがありますか?
日々の睡眠不足が積み重なることで身体や脳に大きなダメージを与えてしまう状態のことで、最近注目を浴びています。
睡眠負債の特徴は、30分〜1時間程度の睡眠不足でも油断できないこと。睡眠は毎日の積み重ねなので「自分は大丈夫」と思っているあなたも、日中眠くてたまらなかったり、布団に入るとすぐ気絶するように寝入ってしまったりすることがあるなら、知らないうちに睡眠負債予備軍になっているのかもしれません。
今回は、睡眠負債のチェック方法や解消法をご紹介します。
がん・認知症のリスクもUP、睡眠負債とは?
睡眠は、身体・脳・心という3つの領域すべてにおいて、疲労回復、ダメージ修復といった働きを担っています。
眠っている時間を寝台列車の旅に例えると、質の良い睡眠はゴージャスな寝台特急のようなもの。「就寝」駅から「目覚め」駅まで、フルスピードで身体のメンテナンスをしながら駆け抜けて、朝起きたときには疲労もダメージもスッキリと回復できています。
一方で睡眠不足や質の良くない睡眠は、まるで各駅停車の鈍行のようなもの。リクライニングシートもない狭い座席で、メンテナンスがノロノロと行われるところをイメージしてみてください。このような状態では目覚める時間になってもまだ疲労回復やダメージの修復が完了しておらず、疲れや不調が残ったまま身体を起こして活動しなければなりません。
このダメージも、一晩だけならそんなに問題ありません。翌日の夜にしっかり眠ることができれば、前夜の分まで回復できるでしょう。ですがよく眠れない日が何日も続いてしまうと、疲れや不調はみるみるうちに蓄積されて、「睡眠負債」と呼ばれる状態になってしまうのです。
睡眠負債は、恐ろしいリスクを秘めています。マウスを使った実験では、睡眠を邪魔され続けたマウスは免疫細胞に異常をきたし、体内のがん細胞が増加したという研究結果があります。また認知症の原因物質の一つであるアミノイドベータを脳からうまく排出することができず、認知症リスクがアップするという研究結果も出ています。
睡眠負債のサインはどんなもの?
「最近どうも疲れがとれない。年のせいかなぁ」なんて思っている方も、ひょっとしたら睡眠負債が溜まっているのかもしれません。
睡眠負債によく見られる兆候は、次の3つのサイン。あなたは心当たりありませんか?
(1)朝ごはんが食べられない
食欲がなくて朝ごはんが食べられなかったり、朝ごはんを食べる時間がないほどギリギリまで寝てしまったり。そんな日が続いているなら、日々の睡眠時間が足りていないのかもしれません。
(2)寝落ちしてしまう
布団に入った瞬間、意識が途切れるように寝落ちてしまう。また布団の中でスマホを見ながら、いつのまにか寝落ちてしまう。これは睡眠負債の危険信号の1つです。とくにスマホを見ながら寝落ちする人は、要注意。スマホを見るというのは本来、脳を覚醒させて目が冴えた状態にする行為です。それにも関わらず寝落ちしてしまうのは、身体が睡眠に飢えている証拠と言えます。
(3)待合室や電車の中で寝てしまう
本来、人は安心できるリラックスした環境でなければ眠ることなどできません。役所や病院の待合室、電車の中やバスの中といった場所は、周囲に知らない人がたくさんいる、本能的には危険を感じる場所のはず。それなのに座ったとたんに寝てしまうとしたら、それは身体と脳が睡眠に飢えていることの証かもしれません。
休日の寝だめは逆効果。睡眠負債の解消法は?
睡眠負債を解消するためには、日々の睡眠習慣を変えていくことが大切です。
朝は毎日同じ時間に起きて、きちんと朝食を摂り、できるだけ太陽の光を浴びましょう。
昼間は活動的に過ごし、リズム運動、日光浴、そして家族やペットとのスキンシップなどで、睡眠に必要なホルモン「セロトニン」を活性化しましょう。
夜は15分でも良いのでゆっくり過ごす時間をつくり、身体を活動モードからリラックスモードに切り替えましょう。好きな香りや音楽を楽しんだり、お風呂で長めに温浴したり。ハーブティを淹れてゆっくり味わうのもおすすめです。
ちなみに最近の研究で、休日の寝だめでは睡眠不足をほとんど解消できないことが分かってきています。それどころか休日だけ長く寝るという不規則な生活は、睡眠のリズムを崩し、かえって眠りの質を下げてしまうので注意しましょう。とは言っても「休みの日ぐらいゆっくりと寝ていたい」という方は、休日と平日の起床時間のズレを2時間以内にすることをおススメします。睡眠のリズムの崩れを最小限に抑えることができるからです。
睡眠負債を解消するためには、毎日の習慣が大切です。充分な睡眠時間とぐっすり眠れる生活リズムを意識していきましょう。
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