寝ている最中ふと目が覚めて、「体が動かない」「息苦しい」と、いや〜な気分になった経験はありますか?
一般に「金縛り」と呼ばれているこの現象。幽霊の仕業のように思えて怖くなってしまいますが、じつはこれ、睡眠中の脳と体の感覚のズレが引き起こしている現象なのです。
今回は、金縛りが起きるメカニズムと、金縛りにならないための対策について解説します。
日々の生活の中で気をつけるとよい、簡単なポイントをご紹介します。
金縛りの正体は、睡眠中の「半覚醒」にあり
金縛りは、「目が覚めているのに、体が動かない」という状態です。
起き上がろうとしても全身に力が入らない、体が言うことを聞かない、といった感覚はとても不快なもの。場合によっては「部屋の中に何かいる」と感じたり、「何かが上に乗っている」という息苦しさを覚えたりもします。
どうしてこのような状態になるのでしょうか?
じつはこれは、睡眠中に脳だけが中途半端に目覚めてしまったため。この状態は、医学的には【睡眠麻痺】と呼ばれています。
人は一晩のうちに、脳を休めるノンレム睡眠と、体を休めるレム睡眠という、二種類の眠りを交互に繰り返しています。
レム睡眠の状態にあるときは、筋肉から力が抜けており、体を動かすことができません。ただし脳はいわゆる「浅い眠り」の状態にあり、眠りと覚醒のはざま(半覚醒状態)を漂っています。
そのときに何らかのきっかけで脳だけが覚醒してしまうと、「目は覚めているのに体は動かせない」という金縛りの状態が引き起こされてしまうわけです。
レム睡眠の最中は、呼吸や脈拍が不規則になりやすく、夢を見やすい状態でもあります。
中途半端に覚醒した脳は、呼吸の浅さを「何かが上に乗っている息苦しさ」、そして、恐怖心が「本物の幽霊」と思い込ませてしまうのです。
昔は、睡眠が科学的に解明されていない部分が大きかったため、「金縛りは心霊現象」というイメージが浸透してしまったのでしょう。
金縛りが起きやすいのは「夜明け前」と「二度寝の後」
レム睡眠の最中に脳が覚醒することで起きる、金縛り。
人間の睡眠サイクルでは起床時刻が近づくほどレム睡眠が長くなるため、夜明け前の時間帯には金縛りが起こりやすくなります。
レム睡眠・ノンレム睡眠のサイクルは、約90分周期で繰り返し訪れます。ですがその割合は、一晩のうちに大きく変化していきます。
寝付いてから数時間は、ぐっすりと眠って脳を休めるためにノンレム睡眠のほうが長くなります。
そしてだんだんと朝が近づくにつれ、脳は起床の準備を始めます。このタイミングでは、筋肉をゆるめて体を休めるレム睡眠が長くなっていきます。明け方に夢を見ることが多いのも、レム睡眠が増えるためです。
このため、夜明け前のレム睡眠が増える時間帯には、金縛りが起きる確率も上がってきます。
また、夜中に目が覚めて再度眠りにつく「二度寝」の状態のときにも、脳が半覚醒状態になりやすく、金縛りが起きやすくなります。
金縛りから解放されるコツと、予防のための対策
金縛りが起きると、「苦しいな、怖いな」という思いからパニックになってしまいがち。でも、パニックは脳を余計に興奮させてしまいます。
「動けない」と思ったら、まずは落ち着いて、「これは怖い現象じゃなく、脳と体の感覚のズレが原因なんだ」と意識しましょう。
また、「目を左右に動かす」「声を出そうとしてみる」といった行動をとると、筋肉が覚醒して動かせるようになることもあります。ゆっくりと深呼吸を繰り返すのもおすすめです。リラックスして脳が自然と眠りに戻りやすくなります。
とは言え、金縛りにはできるだけならずに済むのが一番ですよね。
金縛りを引き起こす一番大きな要因は、睡眠リズムの乱れです。過労やストレス、不規則な生活などを避け、良質な睡眠を充分な時間とるように心がけましょう。
金縛りは、疲労のサインとも言われています。予防のためには、心身をゆっくり休めてあげてくださいね。
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