コラム
美容コンサルタント美羽Miu
vol. 41放置は危険。「睡眠負債」が引き起こす5つのリスクと対策のポイント
日々、忙しく暮らす現代人。ときには、仕事や家事、育児などを優先して、つい睡眠時間を削ってしまうこともあるでしょう。しかし、睡眠不足が続けば、心身に大きな影響が現れます。私たちの身体は、適切な休息をとることで初めて正常に機能できるため、日々の活動を快適に行うためにも充分な睡眠が必要です。
今回は、長期的な睡眠不足が健康に及ぼすリスクと、睡眠不足を予防するための対策について、分かりやすく解説します。
「睡眠負債(睡眠不足の蓄積)」に要注意
睡眠負債とは
あなたは、「睡眠負債」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 借金を続けると負債がどんどん大きくなるように、日々の睡眠不足が続くと睡眠負債としてどんどん蓄積されてしまうのです。
睡眠中は、日中に受けた脳や身体のダメージを効率的に修復したり、疲労を回復して翌日元気に過ごす準備を整えたりしています。睡眠時間は心身にとって貴重な修復・回復の時間であり、その時間が足りないと、取り除ききれなかったダメージや疲労がどんどん蓄積されてしまいます。
近年の研究によれば、1日6時間程度の睡眠を毎日続けていたとしても、それが本人にとって適切な睡眠時間に達していなければ、睡眠負債の状態に陥ってしまうことが分かっています。
睡眠負債の解消に「寝溜め」は逆効果!?
睡眠負債を解消するための手段として、「週末に寝溜めをしよう」と考える人も少なくありません。確かに日々の睡眠時間が足りない場合は、週末に長く眠って補填することは大切です。ただし、週末の睡眠のとり方には注意が必要です。
それは、寝溜めをすると睡眠のリズムが乱れ、睡眠の質が悪化するおそれがあるためです。「次の日は休みだから」と夜更かしして、朝起きるのが数時間遅くなるような寝溜めは、身体のリズムが乱れて、さまざま不調をきたします。
普段の睡眠不足を補填するための寝だめをするのであれば、朝起きる時刻を遅らせるのだけではなく、就寝時刻をできるだけ早くしましょう。ただ、理想は普段の睡眠時間を長くして、平日も週末も同じ時刻に就寝、起床することです。
睡眠不足が引き起こす主な健康リスク
睡眠不足は、脳や身体に大きなリスクをもたらします。
ここでは、睡眠不足が引き起こす具体的なリスクについて見ていきましょう。
(1)血管や心臓に関連する疾患
睡眠不足が慢性的に続くと、血管や心臓にかかる負担が増えてしまい、これらに関連する病気のリスクが高まります。代表的な例として、脳出血や脳梗塞といった脳血管疾患、動脈硬化、不整脈などが挙げられます。
(2)糖尿病と肥満のリスク増加
睡眠不足が続くと、インスリンを分泌する能力が低下して、空腹時の血糖値上昇が促進され、糖尿病や肥満のリスクが増加します。また、睡眠不足の状態においては、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が増加して、食欲を抑えるホルモン「レプチン」が減少します。結果として過食を招き、糖尿病や肥満のリスクをさらに高めてしまうこともあるのです。
(3)免疫系の機能低下
正常な免疫システムの維持には、質の良い睡眠を充分な時間確保することが欠かせません。睡眠が不足すると免疫系の機能が低下し、風邪やインフルエンザといった感染症にかかりやすくなります。また、予防接種によるワクチンの効果も低下してしまいます。
(4)メンタルの状態悪化
睡眠不足は、うつ病や不安障害のリスクも高めます。まず、睡眠不足によって脳の働きが悪くなると、感情の起伏が激しくなり、気分の落ち込みやイライラが増える傾向があります。さらに睡眠不足が慢性化すると、ストレスに対する耐性が低下し、抑うつ状態などを引き起こしやすくなります。
(5)認知機能の低下
睡眠中、脳は日中に得た情報を整理し、記憶を定着させる作業を行っています。そのため、睡眠不足が続くと記憶力が低下し、学習能力や集中力に悪影響を与えます。認知機能の低下は、年齢を重ねるほど進みやすくなる上、睡眠不足による認知症発症リスクの上昇も懸念されるため、とくに中高年以上では注意が必要です。
睡眠負債のリスクを回避するための対策
長期的な睡眠不足には、さまざまなリスクがあります。リスクを回避して質の良い睡眠を充分な時間とるために、次のポイントを意識した対策をとっていきましょう。
規則正しい睡眠リズムを意識する
まずは、「毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる習慣」を身につけることが大切です。人間の体内にある「体内時計」は、睡眠のリズムもコントロールしています。体内時計を整えるためには、規則正しい習慣が不可欠です。前述のとおり、休日だからといって寝溜めしたりするのは注意が必要です。どうしても長めに寝たい場合は早めに就寝し、寝坊の時間をできるだけ短くし、睡眠リズムを崩さないよう心がけましょう。
寝室の環境を整える
時間は充分確保しているのに「寝付きが悪い」「よく眠れない」と感じている方は、寝室の環境を見直してみてください。寝るときに部屋が明るすぎたり、騒音が気になったりしていませんか?また、暑さや寒さ、湿度の高さなどが気になることはありませんか? こうした環境が、眠りを妨げる要因となってしまっているのかもしれません。
睡眠に最も適した寝室環境は、次のとおりです。
明るさ:0.3lx(晴れた日の月明りが入る程度)
静けさ:40㏈以下(図書館や、昼の静かな住宅街程度)
温度:夏は25℃前後、冬は19℃前後を朝まで一定に保つ
湿度:夏は50~60%、冬は40~50%を朝まで一定に保つ
これらを目安に、遮光カーテンや耳栓、エアコン、除湿機・加湿器などを使って、ぐっすり眠れる快適な環境を整えましょう。
就寝前のリラックス習慣
夜おふとんに入る前、心身をリラックスさせる時間を確保することも大切です。日中の疲れや緊張、ストレスなどを解消できるよう、軽いストレッチや瞑想を取り入れてみてはいかがでしょうか。ホットミルクやハーブティーなど、温かいものを飲むこともおすすめです(ただし、カフェインを含む飲み物やアルコール類は、逆に睡眠を妨げてしまうため避けましょう)。また、スマートフォンやタブレットなどのデバイスが発するブルーライトは、睡眠の質に悪影響を与えます。寝る前の1時間は、これらの機器の使用を避けるよう心がけましょう。
よい睡眠は、健康への第一歩です。睡眠負債を予防して、元気な日々を過ごしましょう。
【監修】東京ベイ・浦安市川医療センター CEO / 医師 神山 潤 先生
睡眠、特にレム睡眠を脳機能評価手段の一つとして捉える臨床的な試みに長年取り組む。
旭川医科大学、UCLAでは睡眠の基礎研究に従事。米国から帰国後、日本の子どもたちの睡眠事情の実態(遅寝遅起き)に衝撃を受け、社会的啓発活動を開始している。
【主な著書】
・朝起きられない人のねむり学 一日24時間の賢い使い方
・眠りは脳と心の栄養! 睡眠がよくわかる事典 早起き・早寝で元気になれる
・睡眠で人生が劇的に変わる生体時計活性法 (講談社+α新書)
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